
第20回ボキューズ・ドール国際料理コンクール フランス本選が、2025年1月26日と27日の2日間、フランス・リヨンのユーレクスポ(シラ国際外食産業見本市内の特設会場)で開催された。世界各国から24の代表チームが参加し、日本代表の貝沼竜弥シェフ(サンス・エ・サヴール)は総合11位となった。本選後の3月10日、東京都中央区銀座の「ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座」で報告会が開かれ、貝沼シェフをはじめとする関係者が登壇した。Text & Photo: Shinichi Higuchi(樋口真一)
ボキューズ・ドールは、1987年に「現代フランス料理の父」と称されるポール・ボキューズが創設した、世界最高峰の料理コンクール。「料理界のオリンピック」や「美食のワールドカップ」とも呼ばれている。
本選のプレート(皿盛り料理)のテーマは、セロリアックとセロリを主役とした一皿と、ストーンバスとロブスターを組み合わせた温製メインピース。プラッター(大皿料理)のテーマは、鹿肉、フォアグラ、お茶を使用したメイン料理。各国の代表が工夫を凝らした料理を披露した。
優勝は、フランス代表のポール・マルコンシェフが獲得。1995年に優勝したレジス・マルコンシェフの息子であり、親子2代でのボキューズ・ドール制覇となった。2位はデンマーク、3位はスウェーデンに決まった。
一方、日本代表は、本大会から新ルールとして、プレートテーマもプラッターに盛り付ける形式が導入され、料理の提供方法が変更されたことが影響した。貝沼シェフはプレートテーマで4位という高得点を記録したものの、パイ包み焼きのルール解釈の違いによる50点の減点に加え、キッチン審査での減点も影響し、プラッターテーマでは13位、キッチン審査では11位となり、総合11位という結果となった。

報告会で貝沼シェフは、「1年半の準備期間を経て挑んだ大会でしたが、望んだ成績には届きませんでした。それでも、多くのシェフや関係者の皆様のサポートのおかげで戦い抜くことができ、心から感謝しています。本番では緊張せず、普段通りの料理を作ることを心がけましたが、思うようにいかなかった部分もありました。魚料理では4位の評価を得ましたが、鹿肉のメイン料理では得点を伸ばせず、さらにルールの解釈ミスによるペナルティも響きました。悔しさは残りますが、31歳の自分にとって、この経験は貴重な財産となりました。今後、シェフとして成長し、多くの人を喜ばせる料理を作っていきたいと考えています」と語った。
コミ(アシスタント・シェフ)の藤田美波シェフ(サンス・エ・サヴール)は、「多くのシェフやサポートメンバーの皆様に助言をいただき、支えていただいたおかげで、無事に時間内に料理を完成させることができました。100%の力を出し切ることは難しかったですが、準備期間中の細かい調整や渡仏後の練習が、本番での冷静な対応につながったと感じています。さまざまなアクシデントがある中でも、多くの学びを得ることができました」と話した。

また、コーチの浅野哲也シェフ(HOTEL THE MITSUI KYOTO)は、「結果は望んでいたものではありませんでしたが、関わったサポートメンバーやスタッフが成長し、今後につながる経験となりました。ボキューズ・ドールはチーム戦であり、各国が準備段階から結束力を高め、大きな力で戦っていることを改めて実感しました。本番では、選手とアシスタントシェフの力が試され、プレッシャーを乗り越えて最大限の実力を発揮することが重要だと感じました。また、想定外の出来事が多く発生するため、事前準備の重要性を痛感しました」と振り返った。
その上で、「私は2027年大会に選手として出場することが決まっています。今回の経験を生かし、日本が常連国として世界で戦えるように、一つひとつの課題をクリアしていかなければなりません。日本国内でも、そして世界でも、日本代表がフランス料理のコンクールで活躍していることを広められるよう、全力で取り組んでいきます」と語った。

Team JAPANのテクニカルディレクター、米田肇シェフ(HAJIME)は、「日本チームは健闘しましたが、課題も多く見つかりました。魚料理は4位という好成績でしたが、肉料理では得点を伸ばせず、特にルールの解釈ミスによるペナルティが響きました。キッチン審査でも減点があり、最終順位に影響を与えました。今後は、レギュレーションの徹底理解と戦略的な準備が必要です。また、ボキューズ・ドールは特有の料理技術が求められる大会であり、単に優秀なシェフが参加するだけでは勝てないことを実感しました。デンマークのように、国として戦略的に大会に挑む体制を整え、料理人だけでなく、スポンサーや企業とも連携して支援を拡充する必要があります。2027年大会に向けて、より強固な組織づくりを進め、日本チームの競争力を高めていきたいと考えています」と指摘した。
次回の第21回ボキューズ・ドール国際料理コンクール(2027年1月開催)では、今大会でコーチを務めた浅野哲也シェフが日本代表として挑む。コーチとして得た知見と経験をどのように生かし、2年間の準備期間でどのように進化するのかが注目される。

