28回目を迎えたコットンの日記念イベント「コットンの日 2023(COTTON DAY2023」が5月10日、東京・目黒のホテル雅叙園で開催された。「コットンの日」は1995年に日本紡績協会が提唱し、日本記念日協会から正式認定されているもの。日本紡績協会がアメリカの国際綿花評議会と協力し、毎年「コットンの日」の5月10日に記念イベントを行っている。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)
会場参加とオンラインによるWEB参加を併用したハイブリッド形式となった今回。当日は講演をはじめ、コットン・アワード表彰式、Tシャツ・プリント・デザイン・コンテストなどが行われた。
冒頭、日本紡績協会会長を務めるユニチカの上埜修司社長は「国際綿の良さをアピールするためにジャパン・コットン・マークを、国産綿を使用した二次製品にマークを付ける活動を今年度も積極的に実施していきたい」とあいさつ。
講演 「アメリカ綿の最新情報」で、国際綿花評議会専務理事ブルース・アサリー(Bruce Atherley)さんは「現在の繊維製品で最も重要な3つの言葉は、サステナビリティ(持続可能性)、トレーサビリティ(追跡可能性)、サーキュラリティ(循環可能性)。投資を受けたいと思えば持続可能な企業である必要がある。カリフォルニアやニューヨークではすでにいろいろな規制が提案され、EUでもEPR(拡大生産者責任)など規制が徐々に施行されている。ポリエステルなどだけでなく、コットンでも規制が増え、綿市場全体の5~10パーセントまで増える可能性がある」とコメント。
講演 「米国及び世界の綿花需給の見通し」で綿花販売協会協同組合のカルコット(CALCOT)社、社長兼最高経営責任者ポール・ブッシュ(Paul Bush)さんは「楽観視している。世界の綿花消費量と世界のGDPの推移には相関関係がある。コロナで失われていた相関関係が、2023年には復活し、今後は更に通常に戻る。テキスタイルやアパレル事業も上向くだろう」などと語った。
特別講演 「アパレル・繊維業界に求められるサステナビリティ対応」で、ローランド・ベルガーのヘルス&コンシューマーチームリーダー福田稔さんも、1温室効果ガス排出による地球温暖化問題、2環境破壊、3資源の無駄遣い、4人権侵害、5動物愛護問題の5つを挙げ、「圧倒的に重要なのは気候変動。世界のGDPに与えるインパクトが大きい。欧米の規制強化の動向を踏まえると日本のアパレル業界も様々なサステナビリティ対応を迫られる可能性がある」と指摘。
「アパレル業界でもマテリアルイノベーション、サービスイノベーション、デジタルトランスフォーメーションという3つのイノベーションが必要。環境負荷の低い素材をいかに広めていくか。売って終わりではなく、モノが回転していく仕組みをいかに作っていくのか。いかに、デジタルをサプライチェーンに埋め込んで環境負荷を下げていくかなどが必要になっている。今、イデオロギーの端境期にある。大量消費を前提とした社会がステークホルダー資本主義に変わってきている中で、アパレル業界も地球環境と地球社会が持続可能な範囲で消費や生産をコントロールすることや、企業経営の在り方を変えることが求められている」などと話した。
また、講演 「サステナビリティおよびグローバル・サプライチェーンにおけるトレーサビリティ」で、チーシングベターコンサルタンツ(Chasing Better Consultants)代表ゲーリー・ベル(Garry Bell)さんは「我々の業界は環境の変化によって多くの課題に直面しているが、機会も多いと考えている。コットンのサステイナブルに対するベストのプログラムであるU.S.コットン・トラスト・プロトコルに参加し、使ってもらいたい」と強調した。
また、コットン・アワード表彰式には日向坂46の影山優佳さんが登場。25回目を迎えたTシャツ・プリント・デザイン・コンテストでは坪田到さんがグランプリに選ばれた。