オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)2025年春夏コレクションをピッティ・イマージネ・ウオモ108で発表

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オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)は2025年6月18日、イタリア・フィレンツェで開かれた「ピッティ・イマージネ・ウオモ108(Pitti Immagine Uomo 108)」で名誉招待ブランドとして、メディチ家ゆかりの「ヴィラ・メディチア・デッラ・ペトライア(Villa Medicea della Petraia)」にて2026年春夏コレクションを発表した。テーマは「Amid Impasto of Horizons ―積み重なる地平―」。イタリアの自然や文化にインスピレーションを受けたシリーズが披露された。画像© ISSEY MIYAKE INC.

イタリアの風土を思わせる今回のコレクションは、一本の筆による旅から着想を得て、ものづくりが始まった。豊かな自然や人々の暮らしが息づく町を巡り、そこで採集した色彩と発想が重なり合い、デザインが形づくられるというプロセスに導かれるままに、コレクションは発展した。日々の生活から着想を得ているからこそ、日常に自然となじみ、着る人一人ひとりにとっての特別な「日常着」。ブランドが思い描く新章の第一歩として、「ピッティ・イマージネ・ウオモ」という舞台で、新たな境地を切り開いた。

コレクションの演出は、アンドレア・ファラグナ(Andrea Faraguna)とミヒャエル・クライネ(Michael Kleine)が手がけた。何世紀にもわたり維持されてきたメディチ家ゆかりの庭園と、歴史あるトスカーナ建築の静かな美しさから着想を得ている。巧みに配置された複数のスプリンクラーによる演出は、時を超えた穏やかな庭園風景と調和しながら、古の庭園に新たな生命を吹き込むような光景を生み出した。

コレクションでは、色を採集するための道具を運ぶ発想から生まれた「PAINTER’S GEAR」、リネン調の質感を持つ「LINEN LIKE」、構築的なテーラリングを追求した「TAILORED PLEATS」など、多彩なシリーズが発表された。カラーパレットや筆のグラデーションを写し取ったプリントシリーズ「PALETTE」と「PAINT BRUSH CLOSE-UP」、ガーメントバッグが服としても機能する「CARRIER CARRIED」など、日常と創造の融合を体現している。

また、「OPEN STUDIO」と題した展示企画も実施された。世界各地を巡る発表活動の一環として、現地の文化や人々との交流を通じた創作活動を可視化した。コレクションを発表する「プレゼンテーション」と、制作の裏側やブランドのものづくりを紹介する「エキシビション」の二部構成で、制作の背景やフィールドリサーチ、プリーツ技術の可能性を探る展示が行われた。

エキシビションは、日本デザインセンター・三澤デザイン研究室がディレクションを担当。コレクションの素材開発や試作過程を、フィレンツェでのリサーチ成果とともに紹介した。会場には、風景を描くように並べられたプリーツ作品や彫刻的なオブジェ、偶然性を取り入れた習作が展示され、創作過程の厚みと地平の広がりが表現された。

PAINTER’S GEAR(ペインターズ ギア)

色を採集するための道具を収納するという発想から生まれたシリーズ。形や大きさの異なるポケットは、筆や絵の具などの描画道具だけでなく、日常の小物を持ち運ぶのにも適している。シャツやジャケットと合わせることで、機能性を備えた着こなしができる。

LINEN LIKE(リネン ライク)

リネンのような風合いと、肌離れのよいさらりとした質感が特徴のテーラードシリーズ。涼しげな光沢を持つ素材が、春夏シーズンらしい印象を与える。従来のジャージー素材よりもハリがあり、立体的なシルエットを引き立てる。

TAILORED PLEATS(テーラード プリーツ)

ブランドの定番として提案している二つボタンのジャケットに加え、新たにノーカラーのロングジャケットや、ロング丈のダブルブレストジャケットなど、幅広いセットアップがそろうシリーズ。これまでのジャケットの細部の作りから見直し、より構築的な要素を取り入れている。

PALETTE(パレット)

イタリアで色を採集する際に使用したカラーパレットそのものをモチーフにしたプリントシリーズ。調色の過程を思わせるような模様は、色鮮やかで手作業の質感があり、ものづくりのプロセスを体現している。

PAINT BRUSH CLOSE-UP(ペイント ブラシ クローズアップ)

色を採集する際に使った筆の先端に、絵の具が幾層にも重なっていく様子を写し取ったプリントシリーズ。調色の過程で生まれる、筆の毛先から根元にかけての自然なグラデーションを表現しており、立体的な色の重なりや奥行きが感じられる。

CARRIER CARRIED(キャリアー キャリード)

衣服を収納して持ち運ぶガーメントバッグを着用するという発想から生まれたシリーズ。着用しないときは折り畳んでガーメントバッグの形になるパッカブル仕様で、旅先などで衣服を持ち運ぶバッグそのものが服として機能する。着る人をどこかへ連れていくような遊び心と、実用性を兼ね備えたアイテム。

CIOCCOLATO(チョコレート)

つま先が親指から小指にかけて斜めになった「オブリークトゥ」と、角張った縁が際立つ「チゼルトゥ」を融合させたシューズ。板チョコレートのようにも見えるデザインは、マットな素材との組み合わせにより、フォーマルな印象の中に遊び心をのぞかせる一足。

「OPEN STUDIO(オープン ステュディオ)」について

オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)は、「ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo)」をはじめ、世界各地を巡り、これまで訪れたことのない場所で、ブランドのものづくりの成果を発表していく。この取り組みは「OPEN STUDIO(オープン ステュディオ)」と名付けられ、各地の人々との交流を通じて、より広い視野でクリエイティブ分野とのつながりを深めている。

この名称は、アーティストが制作現場を公開する慣習にちなんでおり、「OPEN STUDIO」という活動を通して創作の場を世界へと広げ、ものづくりに多元的な視点で取り組むとともに、発表形式においても多面的な体験を届けることを目指している。

今回の「ピッティ・イマージネ・ウオモ108」のために企画された「OPEN STUDIO」は、コレクションを発表する「プレゼンテーション」と、制作の裏側やブランドのものづくりを紹介する「エキシビション」で構成された。

エキシビションのディレクションおよび空間デザインは、日本デザインセンター三澤デザイン研究室が担当。展示構成は、オム プリッセ イッセイ ミヤケのデザインチームとの協働によって実現された。コレクションにおけるフィールドワークと研究開発の過程を展示し、プリーツという技法が持つ可能性を示唆する、本企画限定の内容となっている。

展覧会について

オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)のものづくりは、総合的な研究開発に基づいている。そのプロセスは、あるイメージやアイデア、現象などの対象を観察・調査することから始まり、そこから得られた発見を多角的に捉え直し、服づくりに通じる語彙へと転換することで、発見と実践のプロセスが繰り返される。

この過程では、探究的な性質ゆえに、予期せぬ、あるいは意図しない要素が立ち現れることがある。そうした偶然の発見は創作の種となり、いくつものスタディを経て発展し、やがて現代の生活様式に適したプロダクトとしてかたち作られていく。

今回の展覧会「Amid Impasto of Horizons ―積み重なる地平―」では、2026年春夏コレクションにおける研究開発の軌跡をたどるとともに、会場の一面に風景を描き出すように並べられたリーツ素材の作品群を通じて、その技法の新たな可能性を提示する。

会場内を巡る大きな円環には、フィレンツェを含むイタリア各地でのフィールドワークにおいて実際に使用されたアイテムが並ぶ。コレクションにおける色彩、素材、衣服の制作プロセスが順を追ってひもとかれる。

円環の外周には、コレクションの枠を超えた彫刻的なオブジェが点在し、プリーツ素材の形態的な特性を探る実験的な習作が展開されている。そこには、制作の過程で偶然に生まれた、はかなくも美しい瞬間が表れている。

本展のタイトルが示すように、このコレクションは、完成に至るまでに積み重ねられた研究開発の過程そのものを反映したものであり、創作の過程における予測不能な要素を受け入れ、それを活かすというものづくりの姿勢を体現している。層と層のあいだに描かれた広がりのある地平は、これまでの経験を、これからの実践へとつなげるものである。

展覧会ディレクターを務めた三澤遥さんは「今回のコレクションは、リサーチのプロセスが鍵になっています。エキシビションにおいても、オム プリッセ イッセイ ミヤケのデザインチームと三澤デザイン研究室が協働し、制作過程を共有しながら構築してきました。

私たちは普段、布地を主なマテリアルとして扱うことが少ないのですが、プリーツ生地は、かたちを自在に変化させる“魔法のような素材”であり、その自由な特性に夢中になりました。覆う、かぶせる、巻く、折る、重ねるなど、素材に無理のない自然な手法を通して、生地が自ら求めるかたちを探ろうとした展覧会です」とコメントしている。

オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)2025年春夏コレクションRunway / Details: Giovanni Giannoni

オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)2025年春夏コレクションAtmosphere: Ivan Marianelli / Ryunosuke Kanaya

オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)2025年春夏コレクションExhibition: Delfino Sisto Legnani, Melania Dalle Grave (DSL Studio) / Ryunosuke Kanaya

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