「DESIGN MUSEUM JAPAN(デザインミュージアムジャパン)展~2024集めてつなごう 日本のデザイン~」が開催

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「DESIGN MUSEUM JAPAN(デザインミュージアムジャパン)展~2024集めてつなごう 日本のデザイン~」が2024年5月16日からスタートした。5月26日まで、東京・六本木の国立新美術館で開催されている。入場料無料。「DESIGN MUSEUM JAPAN展」はNHKの番組「デザインミュージアムジャパン」を展示のかたちで再構成するもの。一般社団法人Design-DESIGN MUSEUMの協力のもと、野見山桜さんが展示監修。田根剛さんが会場デザイン、岡本健さんがグラフィックデザインを担当している。初日には開会式典と内覧会が行われ、今回参加したクリエーターの中から小池一子さん、永山祐子さんなど4人が出席した。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

「DESIGN MUSEUM JAPAN」は、日本にはまだないデザインミュージアムを作るとしたらどういう美術館になるのかを考えるひとつの提案として4年前からスタートしたプロジェクト。プロジェクト名は、日本には存在していないデザインミュージアムの実現を目指して名付けられた。その言葉や概念は、三宅一生さんが「日本にデザインミュージアムがあったらいいね」と話していたことも、背景や出発点につながっているという。

NHKは特集番組「デザインミュージアムジャパン」で、第一線で活躍するクリエーターと全国のNHK地方局のディレクターが日本各地の生活文化をリサーチし、見つけた優れたデザインを背景にある物語とともに紹介している。これまで19か所でリサーチを行ってきた。

2021年には東京・銀座のGinza Sony Parkで「DESIGN MUSEUM BOX 展」、2022年には今回と同じ国立新美術館で「DESIGN MUSEUM JAPAN 展」を開催した。また、海外ではジャパン・ハウスを昨年のサンパウロ(ブラジル)、今年1月から4月のロサンゼルス(アメリカ)と巡回。5月15日から9月8日まで、ロンドン(イギリス)でこれまで紹介したものの中から7つを展示している。

今回は、昨年12月に放送した「デザインミュージアムジャパン」に参加した6人のクリエーターの6つのリサーチを展示。それぞれ4つのボックスで紹介している。

各ボックスは、(1)リサーチや展示物の前段にあるルーツになるものや各地域の話、(2)メインとなるクリエーターの選んだデザインの実物や模型、(3)参加クリエーターが現地でリサーチしているをNHKが撮影したドキュメント映像、(4)リサーチしたデザインの未来や現状、今後の展開と、参加クリエーターのプロフィールや著書など4つのカテゴリーに分かれている。

会場のグラフィックについては「しつらえを変えたり、ガラッと印象を異なる見せ方をするのではなく、同じフォーマットで続けることで、クリエータのリサーチした情報が同じボリューム感で均質にアーカイブされていくということもこの展覧会の特徴になっている」(岡本さん)という。

また、こういう視点で見たらいいのでは、こんなデザインがあるなどクリエーターの言葉も散りばめられていて、多角的な視点からリサーチを理解することができるようになっている。

竹谷隆之さん (造形作家)の「漁船の化粧板」 船に刻まれた漁師の心意気 (留萌/北海道)では、留萌から借りた化粧板やそのスケッチ、資料を破いてコラージュしたスクラップブックなどを展示。

小池一子さん(クリエイティブディレクター)の「西馬音内盆踊り衣装」 時を超える衣装の記憶 (西馬音内/秋田県)では、盆踊りの衣装や顔を隠す頭巾などを紹介している。

名久井直子さん (ブックデザイナー)の「古代の糸 世界最先端の糸」 雪国・糸作りのデザイン (鶴岡・寒河江/山形県)では、シナノキやオオバポダイジュの木の皮の繊維から作られる伝統織物「しな織」と、佐藤繊維が創る世界最高水準の超極細モヘアとそれを作る古い機械など、古代の織物と最先端の糸とニットを紹介している。また、実際に触ることができるニットも用意されている。

永山祐子さん (建築家)の「野面積みの石垣」 戦国の石垣・自然石と向き合う (大津/滋賀県)では、永山さんの監修による石垣の模型などを展示している。

片岡真実さん (キュレーター/森美術館館長)の「すだれレンガ 電らん管」 時代が求める陶器を生む町 (常滑/愛知県)では、すだれレンガなどを展示した。

永積崇さん (音楽家)の「こて絵」 左官たちが伝えた遊び心(内子/愛媛県)をでは、左官職人たちが依頼主への感謝を込めて、建物の軒下に、こてを使い、漆喰で立体的に描いた浮刻「こて絵」の実物とこてなどを紹介している。

そのほか、来場者が日本各地に点在するデザインを会場にある日本地図に貼り、紹介、提案することができるワークショップなどを継続。また、これまで集まった19のデザインの宝物のリサーチをそれぞれのカードにまとめ、来場者が自分だけのカタログを作ることができるカードなども用意している。

式典で、竹谷さんは「僕は北海道の積丹町で生まれ育ち、うちが漁業だったので、化粧板が施された漁船が身近にありました。個人的なことで恐縮なんですけど、どうしても頭に焼き付いていて、心に残ったということで漁船の化粧板を選ばせていただきました。留萌には完全な状態の漁船が残されていて、精緻に作られた美術品の良さではなくザクザク作ったカッコよさに引き付けられました」とコメント。

小池さんは「まるで亡くなった方たちと魂の交換ができるような衣装。踊るための衣装を昔からあった布を使って作るというつながりが素敵だと思いました。それと、着物を1つの絵画ととらえると、額縁に当たる裾回りや袖のメインの部分などは地味なのですが、上半身は非常に派手な、昔からその家に伝わってきた着物の片りんを縫い合わせて美しい衣装にしている。ひとつの絵のように感じました。

今、時代、時間を経たものを継承するようなことが私たちの周りでも身についてきていますが、秋田の町で自然にそういうものが作られていて、今もそれがパフォーマンスとして盆踊りの中で使われている。着物の布だけでなく、踊る人たちの中に亡くなった人が戻ってくるような気がしました。独特の黒い布もシュールリアルに誘われると思いました」などと話した。

片岡さんは「しな織では、本当に気の遠くなるような長い時間をかけて生えている木から皮を取って、そこからいかに柔らかくして1本の繊維というか1本の糸にしていくかを段階を追って見せていただきました。ほぼ全部手で女性たちが作っていくので、作っていただいた年配の女性に、何でこんなに面倒なのに作るんですかと聞いたら考えたこともないと言われて。もうそれは一生の中のサイクルに入っちゃってるんですよね。何かを創作しているっていうよりも生活の一部を見せていただいたような感じでした。

佐藤繊維では、古くからの機械を使って最先端の糸を作っているところを見せていただきました。機械自体は本当に無骨な最先端感は全然ないコリッとした機械なんですが、それを今のものができるように調整して使うことによって、本当に細くて、触ったことはありませんが天女の羽衣のような、ふわっとも重さがないようなニットができてきて、すばらしかったです。とても自分の仕事に近しいものがあるというか、今あるものをどうやってよりよく使っていくかを考えるヒントのようなものを頂き、いい経験をさせていただきました」と語った。

永山さんは「今回改めてすごい技術だなと思いました。石を拾うときに既に頭の中にこれをこのように積もうというイメージがあって、設計図ではなく、職人さんたちにこれとこれと指示していくんです。1つの伝統技術としてずっと語り継いでいる。指示書もなく、口で伝えながら人が積んでいくというプロセスにはすごく驚きました。また、結構、いろいろな隙間があって、そこに小石が挟まってるんですけど、地震のときにその石がそのバッファを埋める役目をするという、本当に伝統的な、免震的な作りで大きな地震も何回も乗り越えてきている。地震の多い日本の中で培われてきた究極の技術が詰まっているということを感じました。

技術の他に結構面白かったのは、職人さんが変わっていくときに個性が見えてくること。この職人さんはちょっと大胆だとか、この職人さんはち密だとか。お父さんはこういう積み方で、おじいさんはこういうタイプだったじゃあ自分はどうするかということを表現者としても考えている。例えば、斜めの石を入れるのは実は合理的ではないですけど多分この職人さんはかっこいいと思って判断をしたのだと思います。今回はデザインの話ですが、表現者として、自分が亡くなった後、後世に自分がいたことを印として残すことは素敵なことだと思いました」とコメント。

その上で、「一方、残念だと思ったのが日本の建築法規の中で野面積みが許されていない、新しく作る野面積みはセメントで固める部分を作らなければいけないということです。ある高さ以上、ちゃんとセメントで固めなさいと指示をされてしまうと地震に強かったはずのバッファーの部分が埋められてしまうのでむしろ弱くなるんです。古い技術、伝統工芸のようなものが評価されていないというような問題が変わっていくきっかけにもなったらいいなと思っています」などと語った。

会期中にはイベントとしてギャラリーツアーも予定している。

「DESIGN MUSEUM JAPAN(デザインミュージアムジャパン)展~2024集めてつなごう 日本のデザイン~」内覧会から

「DESIGN MUSEUM JAPAN 展 2024~集めてつなごう 日本のデザイン~」

会期 : 2024年5月16日~5月26日※21日は休館
会場 : 国立新美術館 展示室 3B (〒106-8558 東京都港区六本木 7-22-2)
開館時間 : 10:00~18:00 (金曜日は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
観覧料 : 無料
主催 : NHK プロモーション、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
共催 : NHKエデュケーショナル
協力 : 一般社団法人 Design-DESIGN MUSEUM
問い合わせ : ハローダイヤル 050-5541-8600
同時開 催 : (ロンドン展)2024年5月15日~9月8日
ジャパン・ハウス ロンドン(イギリス)

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