コットンの日記念イベント「コットンの日2024(COTTON DAY2024)」が開催

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コットンの日記念イベント「コットンの日2024(COTTON DAY2024)」が5月10日、東京・目黒のホテル雅叙園東京で開催された。「コットンの日」は、1995年に日本紡績協会が提唱し、日本記念日協会から正式に認定を受けて制定をされたもの。 日本貿易協会とアメリカの国際綿花評議会が協力し、毎年5月に記念イベントを開催している。29回目を迎えた今回。講演とコットン・アワード表彰式などが行われた。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

冒頭、日本紡績協会の竹内郁夫会長(東洋紡社長)は「日本の繊維業界でも、持続可能な社会づくり、サステナビリティ実現に向けた取り組みが進められている。 具体的には、環境に配慮した原料綿の採用、環境負荷を減らす加工プロセスなどの商品設計、製品として使用された後に綿に戻して紡績し、改めて製品にするリサイクルの動きが始まっています。また、綿花から製品までのサプライチェーンにおける人権の尊重を多くの企業経営者が宣言しています。 このような動きに合わせて、日本紡績協会の関係団体である日本綿業振興会では、本日のセミナーやホームページなどでの情報発信を行っています」などとあいさつ。

特別講演「2040年アパレルの未来 ~業界が持続可能になるためにすべきこと~」で、A.T.カーニーのシニア パートナー福田稔さんは、アパレル市場の3つの変化、アパレル業界のサステナビリティに対する現状と対応状況を説明した。

講演で福田さんは、アパレル市場の変化について、1多く作り、新品を売る時代が終わりを迎えつつある、2中古市場の世界的な拡大、3ウェルネス関連市場の成長という3つの変化が起こっていると指摘。「インフレの影響を除いた実質ベースのデータでは2019年、コロナ前、世界のアパレルの市場規模は248兆円でしたが、まだ248兆円には戻っていません。2027年までの予測で見ても、ほぼ0.3パーセントで、横ばい。量としてはほぼ増えていないというような状況になってます。コロナ禍、サステナビリティなど、状況の変化で、新品市場では量を作るということがほぼ止まりつつあると言えます。国別で見ると、新品市場の約6割は中国とアメリカになるんですが、中国は0.5パーセント、アメリカは0.3パーセントとなっています。日本は完全にマイナス成長に入っています。新品市場と対象的に今非常に伸びているのが中古品市場です。世界のアパレル市場規模の推移予測では2023年は約30兆を超え、2027年には50兆を超えると予測されています。2027年の新品市場は約250兆と言われてるので、市場の6分の1が中古品になると予想されているということです。日本でも同じような状況で、日本の中古品市場は既に4000億を超え、年10パーセント以上の成長率で伸びています。そして、アパレル全体が横ばいの中で、ウェルネスに関連するスポーツやアウトドアなどは非常に伸びています。中国などを見ても4.5パーセント増、日本でもスポーツアパレルはフラット(前年並)であり、ウェルネス関連市場はまだまだ成長があると考えられます」などと話した。

また、アパレルのサステナビリティの現状と対策の状況については、「2022年3月に出されたEUの持続可能な循環型に向けたEUテキスタイル戦略という、アパレルにおける循環型に向けた大方針に基づき、様々な政策、規制の枠組みが具体化されています。昨年には、更に具体化するために、2030年の繊維製品の循環型に向けた政策文章が発表されました。 その中で約50の具体的なアクションが記載されていて、アクションごとに、誰がいつまでにアクションするかというのが定義されています。様々なEUの政策は、そのロードマップに基づいて、今実行段階に入っているという状況です」などと説明。

「フランスでは、衣料品の情報開示がマストになりました。昨年からリサイクル素材利用率、 リサイルの可能性、トレーサビリティ、マイクロプラスチックファイバーの含有量について、大手の事業者は開示してくださいというような法案が施行され、フランスで売られているユニクロの商品も、しっかり対応されてます。また、フランスでは消費者がリペアをして長く服やものを使うということを推奨しようという動きがあり、昨年10月から靴のかかとを直すなど、消費者がリペアをする際に補助金が出るというサービスが始まってます。 ポイントは補助金の原資が税金ではなく、アパレル企業から提出されたお金で賄われる仕組みになっていること。2023年から2028年までの5年間で240億円、約1億5000万ユーロを拠出しなければならないということが、フランスでビジネスをするようなアパレル業者には課せられています。同じく規制が進んでいるのがグリーンウォッシュ関連。EU全体でエコであることをマーケティングで使うことが禁止になりました。仮に出す場合、相当なエビデンスを求められ、エビデンスが不足していると指摘されて、罰金が課せらる事案も出ています。脱炭素という言葉を安易に言うこと自体がグリーンウォッシュの可能性があるということで、 脱炭素の取り組みの中身と質が求められるような状況にきています」など、海外の状況を紹介した。

日本については「日本も経済産業省を中心に今枠組みを検討していています。今年は既に環境配慮設計ガイドラインが出され、繊維、繊維製品の製造から販売において、環境に配慮するために、どういったところに注力をしなければいけないのかがまとめられています。これ以外にも、基本的にはEUで出されているような大きな方向性に沿って政府も動いていますので、 サスティナブルレポートの義務化、炭素税の導入も日本での導入が決まっています。商品廃棄の禁止やリユース、リサイクルの義務化なども議論としては始まっています」などと語った。

また、講演の最後に今後について「繊維・アパレルに限らず、我々生活者のライフスタイルに関わる企業は、大きく6つの観点を経営の中で重視していかなければならないと思ってます。1つ目は、大量生産型からの脱却、循環型再生型のビジネスモデルをいかに入れ、組み込んでいくかということ。カーボンニュートラルに対する継続的な取り組みということも不可欠になります。リペア、リユース、リサイクル、レンタルといったことを通じて、製品のライフサイクルを長くするということも必要だと思います。 これと併せて、企業のガバナンスを強化していく中で、昨対売上げだけでなく、幸福度やサステナビリティに関する企業経営ビジョンを導入していくことが必要になっています。これまでの企業経営の在り方というものを大きく変えていく、端境期にあると理解していただければ」と説明した。

講演「U.S. Cotton サステナビリティとトレーサビリティ」で、国際綿花評議会アジア地区担当上席理事のラズヴァン・ワンチャ(Razvan Oancea)さんは、「サスティナブルは単なる流行語、トレンドではありません。業界、産業そのものです。すべての業界、関係者に必要なものです」とした上で「米国の綿花業界ではエコシステム、サステナビリティに取り組んでいます。1985年データを取り始め、5つのエリアで水の使用量、温室効果ガスの排出量、土地利用、エネルギー使用量を削減しました。しかし、私たちはここにとどまっていません。アメリカの綿花業界がもっと向上し、改善していくために2025年に向けて新しいターゲットを作りました。土壌炭素の増加など6つのエリアでもっと向上させていきます。農家、サプライチェーン、ブランド、消費者にとって最も重要なのは情報を透明化、明確化すること。サプライチェーンの中で、繊維から最終製品まで、いかに透明化、明確化していくかということです」など、アメリカは世界の綿花市場で極めて重要な役割をになっていること、目標設定がプラスの効果をもたらすこと、重要なのは情報の透明化であることなどを説明。

また、「アメリカは過去40年にさかのぼってサスティナブルなデータを提供することができる唯一の国です。そして、そのデータは安全で、外部からの侵入が難しいシステムになっています。また、CCIでは生産を最適化するための技術的なソリューションを紡績企業、サプライチェーンに提供することができます」など、U.S.コットン・トラスト・プロトコルが最もサステナブルで責任ある技術を用いて、地球の保護と保全に貢献できるように、よりサステナブルに綿花を栽培するための新しい基準を策定していることや、サプライチェーン全体で製品を追跡し、完全な透明性を確保していることを改めて強調した。

また、講演後には「コットン アワード 2024(COTTON AWARD 2024)」の授与式が行われ、藤田ニコルさんが登場した。

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