東京ニットファッション工業組合(深澤隆夫理事長)は2月16日、東京・渋谷のTRUNK(HOTEL) CAT STREET MORIでファッションイベント「TOKYO LOVE KNIT(トーキョー ラブ ニット)」を開催した。当日は「TOKYO KNIT(トーキョー ニット)」と「超十代」のコラボレーションによるファッションショーが行われ、「超十代」のメンバーである植村颯太さん、内山優花さん、沢田京海(トメィトゥ)さん、本望あやかさん、実熊瑠琉さん、りゅうとさんの6人がモデルとして登場した。また、「TOKYO KNIT」と「障がい者アート」のコラボレーションによる「障がい者アートプロジェクトファッションショー」も行われた。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)
「TOKYO KNIT」は東京ニットファッション工業組合が東京都の支援を受け、7年前にスタートした新しいものづくりのプラットフォーム。東京にしか作れない未来のニットを世界に発信することや、都内でものづくりをしながら、ニット産業を活性化し、魅力的な産業として次世代に継承していくことを目的としている。
これまで、ブランディングの一環としてイタリア・フィレンツェで開催された第97回 ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo 97)に出展したほか、アンリアレイジ(ANREALAGE)やベッドフォード(BED j.w. FORD)など著名ブランドとのコラボレーションなどを行い、表現力の高さをアピールしてきたが、2023年度は未来を担うZ世代を発信起点に「TOKYO KNIT」の魅力を全世代へアピールする施策として、Z世代にTOKYO KNITの高品質な製品に触れ、感じ、自ら発信してもらうプロジェクトを展開してきた。
今回のファッションショーはその施策の集大成となるもの。「超十代」を代表するZ世代のタレントの植村さん、内山さん、沢田さん、本望さん、実熊さん、りゅうとさんの6人とTOKYO KNIT認証企業4社がコラボレーションし、オリジナルのニット製品を作成。自身でデザインした衣装を着用し、モデルとしてランウェイを歩いた。
今回デザインした服について、オーバーオールをデザインした実熊さんは「自分らしいをテーマに、好きなブラウンとオーバーオールを意識して作りました。ポイントはポケット。ボア素材を使い、かわいいオーバーオールにしてみました」と笑顔。フレアジャケットとシースルースカートにモックネックTシャツを組み合わせた内山さんは「大人っぽさをテーマにしましたが、ただ黒で大人っぽくするのではなく、ジャケットは袖のボタンを取り外して2wayで使えるとか、スカートも透け感があるとか、大人っぽく、デザイン性のあるものを作っていただきました」。オーバーオールとクルーネックスウェットでランウェイを歩いた植村さんは「オーバーオールのベルトをオレンジにすることで個性を出しました。オーバーサイズで動きやすいし、ポケットもカーゴパンツみたいな感じでかわいいです」と話した。
ジャケットとスカート、キャミソールをコーディネートした本望さんは「昔から好きで見ていたアニメのアイドルのキャラクターをイメージした服を作っていただきました。アイドルっぽくするため、何枚もフリルを重ねて色を変えたり、フリフリ感を出したり、難しかったですが、憧れの存在に近づけた感じがして、うれしいです」とコメント。ケープと長袖ハイネックを身に着けた、りゅうとさんは「スーパーマンのようなマントにしてみました。マントのスリット部分にボタンを付けたことや、中に着ているシースルーのトップスもポイントになっています」という。長袖シャツ、スカート、タイツ・マントで登場した沢田さんは「自由という言葉が好きなので、トップスのリボンで縛られていることを表現し、リボンを外すとシャツの背中に描かれた自由の花言葉を持つ花が見えるようにすることで縛られていることから自由になれるということを表現しました」と説明した。
商品開発の中で大変だったことについて聞かれると、内山さんは「金具や生地やボタンの種類がすごい多くて、優柔不断なところが出てしまい、大変でした」、本望さんは「ニットというと毛糸のイメージがあったのですが、私が使ったベロアやメッシュも実はニットということで、種類が多くてすごく悩みましたが、無限の可能性も感じました」などと語った。
今回、メンバーとコラボレーションし、ニット製品を作成した丸和繊維工業取締役の深澤信敬さんは「これまではブランドやデザイナーに向けて日本のものづくりのすばらしさや技術力をアピールしてきましたが、今後は消費者に近い、服を手に取って買ってもらえる人に知ってもらいたいと思い、Z世代の発信力がある方々と取り組みたいと思いました。服作りは夢のある仕事だと思っています。このイベントがきっかけになり、ファッション業界を目指す人が増えてくれたらと思っています」。沼尻テキスタイル研究所国際研究員の内海雅俊さんは「みなさんSNSでの発信を多くしていたので、個人的な性格や好みがツールを通して事前に見ることができたので結構作り込みが一緒にできたなと思いました。それぞれのみなさんの好みにあわせて、こういうの物が好きかなとイメージしながらできました。発信力も強く、素直に色々聞いてくれたので、ファッションがすごい楽しいんだよということを今後も発信してほしいですね」などと話した。
また、「障がい者アートプロジェクトファッションショー」では、今回のプロジェクトに参加した、2組のアーティスト、カミジョウミカさんと柴田鋭一さんが創作した二次元のアート作品をTKF認証企業6社が三次元のニット製品に落とし込んだ作品を披露した。ショーでは、Z世代のモデルである水野舞菜さん、りゅうとさん、吉田羽花さん、池内なな子さん、植村颯太さん、村山千夏さんの6人が「カミジョウさんの作品をできるだけ大きく見せたいと思い、ドルマンスリーブにし、指の穴も通るようにした」というデザインなどを着用し、ランウェイを歩いた。
カミジョウミカさんは「いつもは平面の作品ですが、今日は服としてデザインが立体的にになってとても嬉しかった。いつかこの商品が販売されたらいいなという夢ができました。」とコメントした。
ファッションショーやトークショー後には、「日本の人口は約1億2500万人ですが、毎年どのくらいの衣料品が廃棄されているでしょうか」など、ファッションにちなんだクイズ大会も行われた。