イッセイミヤケ（Issey Miyake）2024年春夏コレクション〇2024年春夏パリコレクション日本人デザイナー

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リリースに

「空にはためく旗に
形はあるだろうか。
そよ吹く風
流れる水
煌めく光
揺らめく炎
すべての自然と同じく
人の身体もまた一瞬ごとに変化し続け、留まることがない。
その心とともに。
それらが発する声に耳を澄ませたとき
定形がなく曖昧な、見えない形が立ち現れる。
動き続ける人間と呼応し、共鳴する形が。
それはいつも鮮やかで、いつも美しいだろう。」

と書いた今シーズン。

大自然の中にある風や光など、輪郭のないもの、形がはっきりしないものが作り出す偶発的な儚（はかな）い瞬間からインスパイアを受けたアイデアが、服作りに取り入れた。刻々と移ろう自然の一瞬一瞬の美しさを、形を固定しないまま、または変化し続けるままに表現するアプローチは、衣服に余白を与え、素材の特性を最大限に活（い）かす考えによるもの。こうして生み出された率直なデザインは、着る人の体に自然にフィットし、新しい美意識を生み出す。

今回のコレクション発表は、様々な視点からの総合的な演出によってテーマを表現している。会場を漂うインスタレーションは、和紙にひだを入れてできた「膜」のようなもので、出演者たちと周囲の環境に反応して動き続けることで、衣服と着る人の関係を示唆している。ショーはプロローグとして演奏とダンスを通じて語り合い、音と動きが行き交うパフォーマンスからスタート。パフォーマンスに続いて登場したコレクションは、身にまとうものの見えない要素が次第に明らかになるような流れで展開していく。和紙と音と動き続ける身体が相互作用する空間は、自然に感じ取れるゆとりと豊かさをもたらしていた。

AMBIGUOUS

コットンの強撚糸（ねんし）の特性を活かしたニットシリーズ。縫い目なく編み上げた筒状の形が素材のはたらきによって、着る人1人ひとりの身体にしなやかになじむ曖昧な形を表している。同一方向に撚った糸を使用した前身頃は、自然とねじれる緩やかなドレープが特徴だ。リブ編みを組み立てた後身頃は、程よく身体を包み込み、ねじれの表情を引き立てる。

TWINING

空にはためく旗のねじれた形態を表した布帛（ふはく）シリーズ。表の生地はさらりとしてハリ感があり、ねじれを際立たせる。タテ糸に隙間を開ける特殊な織り方によって、分量感がある一方で、軽やかさがある。

LIGHT LEAK

形の輪郭がぼやける様子を表現するプリントシリーズ。一度フィルムに写した写真に対して、カメラのふたを開けてわざと露光させる手法を用いて柄を制作した。柄を拡大して転写するため、元の写真にあるフィルムの粒子までも見ることができる。柄を活かすために、ドレープや縫い目を最小限にしたシンプルなシルエットに仕立てた。

ENVELOPING

一枚の布からなる筒状の構造をねじって留めることから生まれた布帛シリーズ。和紙とポリエステルで織り上げた素材の持つほのかな光沢感としなやかな風合いは、ドレープによる陰影の深みとなめらかさを引き立てる。身身体を包み込み、着る人一人一人のシルエットを生み出している。

FIXED IN TIME

動いている瞬間を止める発想から生まれた、プレス加工を施したシリーズ。大胆なシルエットに見える、肩の部分の折り込みや角張りは、ねじれをプレスしてできている。硬質な印象と分量感にもかかわらず、軽量でストレッチ性のある素材を用いることで、軽くしなやかな着用感を実現した。

TWISTED / SHAPED MEMBRANE

一枚の布をねじることで自然に生まれた布帛のシリーズと、おおらかでゆとりのあるシルエットが特徴の布帛のシリーズ。両方が使用している生地は、天然繊維の和紙・リネンの糸とストレッチ性のある糸を織り合わせたもので、さらりとしながらも皮膚のように身体になじむ独特な質感が特徴だ。分量感があり、柔らかく軽やかな印象を与えている。

ISSEY MIYAKE x New Balance MT10O

ニューバランス（New Balance）との共同制作によるフットウェアは、デザイナー近藤悟史が考える身体性から見出した、裸足に近い感覚を持っている。ニューバランスのトレイルランニングモデルの名作「MT10」に、イッセイミヤケならではのデザイン性と配色を取り入れたこのフットウェアは、本コレクションとの親和性を図り、軽やかで地に足が付いているような履き心地が特徴になっている。