「金子國義×コシノヒロコ EROS 2017」がKHギャラリーで開催された。昨年3月11日から4月3日まで行われた金子國義一周忌回顧展「金子國義×コシノヒロコ そこに在るスタイル 〜 ネコとヒロコ 〜」に続く2回目となるもの。EROSをテーマに、エロティシズムを追求した金子の油彩人物作品と、春画からインスパイアされたコシノヒロコの油彩画や人物画を展示した。Text & Photo:Shinichi Higuchi (樋口真一)
会場では、これまでほとんど公開されていない金子の作品なども紹介しているほか、金子の自宅の様子を再現したコーナーも設置。コシノヒロコの作品とのエネルギーがぶつかり合うように展示した。
また、階段を上がった上のスペースでは、ついたての裏に作られたジョルジュ・バタイユの小説「マダム・エドワルダ」の娼婦(しょうふ)の家をイメージしたフェティッシュな空間など、R指定と言えそうなムードの作品を紹介した。
猟奇と狂気、怪奇などと共存する金子の作品。フィギアやマネキン、人形のような無機質な表現で描かれた少年たちと少女、そして人のような獣たち。シュルレアリスムのようなオブラートやキュービズムで覆われていない具体的で直接的な形。ディープな世界。見てはいけないもの、怪しい力に引きつけられ、戻れなくなることを忘れ、禁断の扉を開けて金子の隠し部屋に入り込んだような気分にさせる。
一方、コシノヒロコの作品は春画の構図や形からスタートしながら、ファッショントレンドとして注目されているアフリカや岡本太郎が発見したとも言われる縄文などもミックスされている。コレクションで既に発表しているためかピカソ的なキュービズムなどはないものの、相反するムードを組み合わせ再構築することで新しいものを生み出す思考方法はファッションとも共通している。
最近は山本耀司も「画と機Painting and Weaving Opportunity 山本耀司 朝倉優佳」展で絵画に挑戦し、その後パリで発表したヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)2017/2018年秋冬コレクションではショー直前に山本自身でペイントしたドレスやタイツを発表した。だが、コシノヒロコのように2012年9月にギャラリーをオープンして以来定期的に展覧会を行い、様々な作家とコラボレーションしてきたデザイナーは他にはいないだろう。
金子が亡くなった3月16日に開かれたレセプションで「前回はザ・金子國義だったが、春画を見たときに今回はエロスに特化したものにしようと思いついた。私はファッションデザイナーだから毎回、これが同じ作家のものかと思うぐらい変わるし、ひらめきだけで書くタイプだが、ネコ(金子)の作品を見るとエロさを見習わなくてはと思うし、じっと見ているとこの絵の下に何を書いているのかと考えてしまう」とあいさつしたコシノヒロコ。
前回の展覧会では「東京オリンピックの翌年の2021年にこれまでのコレクション作品を集めた展覧会をしたい」と話していた彼女だが、ファッションやコレクションから猟奇的で怪しいまでの力を感じることが少なくなる中で、今後も東京のコレクションシーンをリードしていきそうだ。
金子國義を好きな人はもちろん知らない若い人にとっても刺激的な展覧会。
関連記事
NIKKO×コシノヒロコ 墨の瞬(すみのとき)-コシノヒロコのおもてなし6月25日まで開催
画像をクリックすると拡大写真を見ることができます。