
「大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション―」が、12月20日から2月22日まで、東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで開催されている。同展は、創業から約40年にわたるカプコンのゲーム制作の歩みを、原画や企画書、立体資料、体験型展示などを通じて、日本が世界に誇るゲーム文化の創造力と技術力を紹介するもの。
完成したゲーム作品を並べるのではなく、企画、デザイン、プログラム、サウンド、演出といった制作工程に焦点を当て、ゲームが形になるまでの過程を多角的に示す構成となっている。プレス内覧会で展示を案内したカプコンのプロデューサー、牧野泰之氏は、「ゲームを飾るアート作品を見てもらう展覧会で終わらせず、カプコン40年のゲーム開発の裏側を感じ取ってもらいたいというコンセプトで作った展覧会だ」と説明した。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)
「想像したことは、創造できる」──ゲーム制作の過程に焦点

展覧会のテーマは「想像したことは、創造できる。」。会場では、ゲームが生まれるまでの壮大なプロセスと、それを支えてきた開発者たちの想像力と実現力を多角的に紹介する。
単なる歴史展示ではなく、「どのように作られてきたのか」「なぜその表現にたどり着いたのか」を体感的に理解できる構成が特徴で、ゲームファンはもちろん、ものづくりに関心のある層にも訴求する内容となっている。
入口映像と年表・ロゴ・家系図で俯瞰する年表でたどる、カプコン40年の歩み

エントランスに入ってすぐの大きなスクリーンには、カプコンの人気キャラクター31体を新たにアニメーション化した映像が投影されている。このアニメーションは、来場者が「自分の好きなキャラクターと一緒に会場に入ってきたように感じてほしい」という意図で制作されたもので、導入演出として位置付けられている。


展示全体は「ラウンド」ごとに区切られた構成となっており、最初のエリアが「ラウンドワン」。1983年の創業から現在までの約40年の歩みを振り返る年表を展示している。ファミリーコンピュータ本体など、当時の開発環境を示す資料も並び、ゲーム黎明期の空気感や、ゲーム制作を取り巻く時代背景を伝えている。
ロゴと家系図で見る主要タイトルの広がり

年表展示の反対側の壁には、カプコンが手がけてきた多数のゲームタイトルのロゴを掲示した「ロゴウォール」を設置している。全タイトルを網羅することは難しいため、ロゴを通じて幅広い作品群を紹介している。牧野氏は、来場者が自身の思い出と重ねながら写真撮影を楽しめるスポットになっていると説明した。

さらに、『ストリートファイター』『モンスターハンター』『バイオハザード』の三シリーズを軸に、ヒット作から派生したタイトルの関係性を示す「家系図」展示も見どころの一つだ。『ディノクライシス』が『バイオハザード』に恐竜という要素を加えて生まれたことや、『鬼武者』が開発初期に「戦国バイオ」と呼ばれていたこと、『デビル メイ クライ』が『バイオハザード4』の開発過程から独立した経緯など、シリーズ間のつながりを具体例とともに紹介している。
原画・ポスター・パッケージに見る表現の変遷


会場中盤では、キャラクターの設定画や立体造形、過去に実際に使用されたポスター、パッケージイラストの原画などを展示している。ゲームの完成形だけでなく、企画段階や制作途中の資料を通じて、表現がどのように形づくられていったかを示す構成となっている。
特に注目されるのが、手描きによるアナログ原画の数々だ。これらは世界に一点しか存在しない貴重な資料で、ゲームがデジタルコンテンツである以前に、アートとして描かれていたことを実感させる。『ストリートファイターII』の原画について、プレス内覧会で展示を案内したカプコンのプロデューサー、牧野泰之氏は「今のカプコンがあるのは、この絵のおかげと言っても過言ではない」と強調した。
原画の下には、当時のゲームカートリッジやパッケージも展示しており、日本版と海外版のデザインの違いも比較できる。北米版では主人公の描かれ方が日本版と異なるものもあり、地域ごとの表現の違いを確認できる。

東京会場限定で展示される原画や企画書もある。創業期の手書き企画書のほか、『ブレス オブ ファイア』『ロックマンX』に関する資料なども展示されており、シリーズが立ち上がった初期段階の構想や、制作の過程をたどることができる。
体験展示で知るゲーム制作の工程

ラウンド1で40年の歩みを振り返り、ラウンド2からは「どう作ってきたか」を体験で見せる構成となっている。本展のポイントの一つとなるのが、「ゲーム開発の裏側」を体験的に学べる展示群だ。『ストリートファイターII』と最新作『ストリートファイター6』を題材に、必殺技「波動拳」がどのように作られてきたかを比較展示している。ドット絵時代には一人のデザイナーが担っていた工程が、現代ではモーション、エフェクト、3Dモデリングなど、専門分野ごとの分業体制へと進化している様子が分かる。
効果音制作のコーナーでは、『モンスターハンター』シリーズで魚を釣り上げた際の音など、身近な音がどのように作られているかを紹介している。日常的な素材や身体的な工夫から生まれる音づくりの現場を伝える。

来場者の表情や動きをカメラで捉え、リアルタイムでキャラクターに反映させるデジタルキャプチャー体験も設けている。
ドット絵から3Dへ 技術進化と表現の工夫

ドット絵時代の展示では、ファミリーコンピュータにおける色数制限と、その中で行われた工夫を解説している。当時、一画面で使用できる色は12色程度とされるなど、使用できる色数が極端に限られていた。そうした制約の中で、点滅や市松模様を用いた疑似的な表現や、背景と重なる部分の色を計算して置き換えるといった手法により、半透明表現を実現してきた技術的挑戦を紹介している。
3Dキャラクター造形と当たり判定の仕組み


一方、現代の3Dキャラクター造形では、『ストリートファイター6』の春麗を例に、ポリゴン構造や質感表現を解説している。また、アクションゲームに欠かせない「当たり判定」についても取り上げ、攻撃側と防御側に設定された単純化された判定が接触することでヒットが成立する仕組みを紹介する。見た目のリアリティと、ゲームとしての操作性を両立させるための設計思想が明らかにされる。
カメラ視点の変化で読み解く『バイオハザード』の演出

『バイオハザード』シリーズの展示では、カメラ視点の変遷に注目している。定点カメラによる緊張感、三人称視点による臨場感、一人称視点による没入感と、視点の違いが恐怖演出に与える影響を体験的に理解できる構成だ。
プロジェクションマッピングを用いた演出では、光を当てた場所にだけゾンビが現れる仕掛けも用意されており、シリーズならではの恐怖表現を体感できる。
モンスターと環境表現に見る『モンスターハンター』の設計

『モンスターハンター』シリーズでは、モンスターが環境に与える影響や、生態設定の作り込みに焦点を当てている。イヴェルカーナが出現すると周囲が凍りつき、去ると氷が溶けるといった環境変化を、模型や映像、ARを組み合わせて表現している。また、モンスターの鱗や素材設定など、モンスター一体に対して細部まで設定を練り込む、カプコンの世界観構築力を示す展示となっている。
最終ラウンドで語られる「カプコンらしさ」

展示の最終エリアでは、現役のカプコンクリエイターによるインタビュー映像を上映している。映像では、ゲーム制作に携わる立場から、「カプコンらしさ」や、ものづくりに対する姿勢について語られており、展覧会全体を締めくくる内容となっている。
牧野泰之氏はこのパートについて、「どの時代の作品を見ても、根底にあるのは『ユーザーを楽しませること』だ」と説明する。技術や表現手法が変化しても、遊ぶ側を意識した発想や試行錯誤が共通している点を示す構成とした。

会場には、『逆転裁判』の法廷を模したフォトスポットや、来場者がメッセージを書き込めるコーナーも設けている。展示を見終えた後に、来場者自身が展覧会の体験を振り返る場として位置付けられている。

会場には物販コーナーも用意されている。
開催概要
展覧会名:大カプコン展 ―世界を魅了するゲームクリエイション―
会期:2025年12月20日(土)~2026年2月22日(日)
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO(〒104-0031 東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 6階)
主催:読売新聞社、CREATIVE MUSEUM TOKYO
特別協力:カプコン
後援:TOKYO MX
本展公式サイト:https://daicapcomten.jp
公式Xアカウント:@DaiCapTen_TOKYO