第99回装苑賞谷口ひなのさんが装苑賞を受賞

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第99回装苑賞公開審査会が2025年6月17日、東京・渋谷の文化学園遠藤記念館大ホールで開かれ、谷口ひなのさんが装苑賞を受賞した。1956年、日本で初めてのファッション界の新人賞として創設された装苑賞。公開審査会では2次審査を経た候補者16人が、各3体のコレクションをショー形式で披露、森永邦彦さん、宮前義之さん、田中文江さんなど、日本を代表するデザイナーが審査を行った。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

装苑賞は谷口ひなのさん 〇△□とモノクロームの挑戦

谷口さんの作品は、モノクロームをテーマにしたデザイン。「マットな色で大胆なのに、品の良さが伝わってきました。〇△□という基本的なものをファッションにしたのは、新しい挑戦です」(コシノジュンコさん)、「“後ろ姿まで執着していないのか”というデザインが多い中で、後ろ姿まで作り込んでいた」(三原康裕さん)ことなどが評価された。

谷口さんは「モノクロームを基調にしました。服は構造やデザインが鮮明に見えるので、それを立体的に表現して作りました。立体を体のシルエットに沿って作るのがとても難しかったです。装苑賞のような賞を受賞できて、とてもうれしいです。制作に携わってくれた先生や、応援してくれた方たちに、このような形で恩返しができて、とてもうれしいです」と喜びを語った。

また、装苑賞佳作1位は、補聴器のチューブをオーガンジーで包み、縫い合わせることで立体感と有機的な動きに加え、収音機能にも優れた貝殻を表現したドレスを制作した鬼塚楓太さん。鬼塚さんは、ワンオーによって受賞作品がジャパン・ファッション・ウィーク期間中に展示される「PR01.特別賞」とのダブル受賞となった。

佳作2位は、「オン・ユア・マーク」をテーマに、国を背負って走ったジャンヌ・ダルクや大移動するヌーに着目し、疾走感を表現した三木芽乃さんが、それぞれ受賞した。

また、Blue Marbleが主催する「NEW ENERGY TOKYO」での作品展示と、受賞後3年以内のブース提供が贈られる「NEW ENERGY特別賞」には、村田光生さんが選ばれた。

審査員コメントから見る評価ポイントと課題

審査員を務めた廣川玉枝さんは「みなさんそれぞれの思いを形にしていて、甲乙つけがたかった。装苑賞の〇△□の作品はチャーミングでした」とコメント。

森永邦彦さんは「佳作2位の三木さんは、スポーツとはまったく違うファッションで、非常に戦っていた。佳作1位の鬼塚さんは、自分の育ってきた環境にあったものを新たに造形に変え、彼にしか作れない作品になっていた」と話した。

一方、三原康裕さんは「審査員を驚愕させるような作品はなかったと思います。ただ、驚かせるだけがファッションではないとも思う反面、大きなチャレンジができるのは、やはり若いときなので、みなさんにはチャレンジしていただきたいと思います」とアドバイスした。

熊切秀典さんも「受賞作品はアイデアとしては既視感があるが、完成度は高かったと思います。コンセプトやパーソナリティが先行していて、作品だけから感じたかった」と指摘した。

また、宮前義之さんは「クオリティは高かったと思いますが、ほとんどの作品が片手では持つのが難しかったという点が気になりました。ただ、個人的なストーリーや、社会に対する“服にしかできないメッセージ”の欠片は感じることができました」と話した。

田中文江さんは「アイデアは世の中にごまんとあるので、それを行動に落とし込み、自分のものとすること。今回、受賞できなかった人も、時間は平等なので、限界まで突っ走り、前へ進んでほしい」とエールを送った。

第99回装苑賞装苑賞谷口ひなのさん

第99回装苑賞佳作1位およびPR01.特別賞鬼塚楓太さん

第99回装苑賞佳作2位三木芽乃さん

第99回装苑賞装苑賞NEW ENERGY特別賞村田光生さん

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