第93回装苑賞(THE 93nd SO-EN FASHION AWARD)公開審査会開催。ソン・セイさんが装苑賞。

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第93回装苑賞の公開審査会が6月11日、東京・渋谷の文化学園遠藤記念館大ホールで行われ、ソン・セイさんが装苑賞を受賞した。Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)

二次審査を経て最終審査に残った候補者16組が各3体の作品をミニコレクション形式で披露する公開審査会で装苑賞に選ばれたのは、歌川国芳の「両面相」など日本の伝統的な「上下絵」から影響を受けたという、上下前後どの向きからでも着ることができる無縫製の服や上下前後どの向きでも使えるバッグや帽子を作ったソン・セイさん。中国出身、文化学園大学服装学部服装造形学科を卒業し、現在はアパレルに勤務するソン・セイさんは「日本の画家が好きでいろいろな美術館に行っていた。面白い作品を作ることができるようなデザイナーになりたい」と喜びを語った。

また、装苑賞佳作1位はブレイクダンサーの衣装を製作したときに、踊っている姿を見て感じた「衣装が壊れるのでは」という思いや一瞬しか見ることができない瞬間的な造形美、写真にしたときの「ぶれ」や「ゆがみ」などを、テーラードジャケットをベースに縦糸をなくすことなどで表現した小口大輔さん。装苑賞佳作2位は視覚障害のある人と話したことからインスパイアされたという、点字やQRコード、香りの出るプリントなどをプラスしたジャケットとドレス、コートやミニワンピースをデザインしたラロパイブン・プワデトさんがそれぞれ受賞。

PR01.TRADE SHOW賞は、1枚の絵を服としてまとうことをコンセプトに、3点の作品トータルで戦争を描いたピカソの「ゲルニカ」の壁画を表現した村橋美咲さんに決まった。

審査員を務める高島一精さんは「ファッションコンテストのトレンドを意識せず、作りたいものを作っていたので、いろいろな作品を見ることができた。装苑賞では今、若い人がどう考え、服を通して何を世の中に問うのかを楽しみにしているが、今回はキラキラするもの、目がチカチカするものがたくさんあって刺激を受けた」とコメント。岩谷俊和さんは「ソン・セイさんは圧倒的に良かった。他に比べて完成度とデザインが抜群によく、装苑賞にふさわしかった。佳作1位の小口さんも非常にきれいで服として仕上がっていた。プワデトさんは作品として完成しているとは思えないが、何か新しいものが生まれるのではと予感させた」と評価した。

また、コシノジュンコさんは「装苑賞には満点を付けたが、点数よりもこの経験が大切。これを将来に活(い)かしてほしい。また、藤下加南子さんの作品もすごくかわいかった。受賞できなかったのはフォルムや色のバリエーションが少なかったから」とアドバイス。津森千里さんも「1番好きだったのは藤下さんの作品。自分が着てみたいと思ったから。ソン・セイさんの服は作品、彼女ははもの作りをする職人さんのようだと思いました。もっとセンスがよくなれば、すごくなるのではと期待しています」。廣川玉枝さんは「アートのような作品がたくさんあって楽しめましたが、難しい素材や素材の複雑な組み合わせた仕事をしていたので、もう少し縫製の始末やカッティングにも注意するともっとよくなると思いました」と話した。

一方、「3体作る必要のない作品が多かった」という三原康裕さんは「装苑賞は哲学がしっかりしていて面白かったし、いい意味で醜さも少し残っていて好きでした。プワデトさんも考え方が好きで、何と向き合うのかという姿勢がよかった」とした上で「小口さんはもっとアシンメトリーにして、ダンサーを困らせるようなものでもよかった。今回はこの先、未来に向けた、影響力のあるようなものが少なかった。受賞できなかった作品を見ると『何と向き合って、闘っているのだろう』とも思いました」。

森永邦彦さんは「服をどう新しく作っているのかを見ていましたが、服の上下をどう見るかということや縦糸と横糸の関係をどう見るのかなど、僕自身も想像できなかった表現に挑戦していました。ここで評価される、されないということよりも自分が表現したいもの、信じるものを長くつづけていれば必ずどこかで形になるので、がんばってください」とエールを送った。

装苑賞ソン・セイさんと作品

装苑賞佳作一位の小口大輔さんと作品

装苑賞佳作二位ラロパイブン・プワデトさんと作品

PR01.TRADE SHOW賞村橋美咲さんと作品

藤下加南子さんの作品

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