砂川卓也がデザインするミスターイット(mister it.)は楽天ファッション・ウィーク東京2024/2025年秋冬(Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 A/W)コレクション5日目の3月15日、渋谷ヒカリエ ヒカリエホール Aで2024/2025年秋冬コレクションを発表した。テーマは”couture rhythm”。Photos: Courtesy of mister it.
ミスターイット(mister it.)2024/2025年秋冬コレクションLOOK
ミスターイット(mister it.)2024/2025年秋冬コレクションリリース
élégance graffiti.
優美、上品さ、優雅さを意味するエレガンスは、“身近なオートクチュール”を標榜するmister it.におけるエッセンシャルかつベースとなる態度です。しかし、エレガンスは画一的ではありません。伝統を守りつつ、時代精神と呼応し、変容を続けています。移ろうエレガンスの下敷きに、自由にグラフィティを重ね、現代の様相を生み出していきます。
humor.
その精神は、エレガンスに載る「落書きのようなもの」だとデザイナーは話します。
draping.
mister it.の洋服作りにおける礎のひとつ。
wrapping.
フランスの伝統的な工芸技術であるカルトナージュのテクニックとイマジネーションは、mister it.と深く結びついています。「デザイナーとしてのルーツであり、刺激を受けた場所」であるパリで、メゾンのアトリエに勤め、その人の身体にそった立体裁断を毎日のように続けてきたデザイナーは、「そのものに合わせて」、「包む」という平明なアイデアに想像力を膨らませています。また、贈り物をラッピングするように、たったひとつの手を加えるだけで喜びを生み出すことができるという軽快さも共存しています。
couture rhythm.
仕立てのリズム。デザイナーとブランドは、オートクチュール——技術だけでなく、人の存在、身体、嗜好を捉える態度——が自身の中核にあるものだと反芻しています。服が作られる過程で必然的に発生するリアルな音、人と人との触れ合いに潜む目に見えないリズム、楽しくなるリズミカルなテンポ。ブランドに寄り添うその「リズム」が波紋のように拡がり、ショーのゲストや服を着る人へと伝わっていくことをデザイナーは切に願っています。また、このセンテンスがほとんどのルックのバストラインを強調していたことは、ドレーピングにおける基点が胸元にある事実に着想されています。
fabrics.
「強いて言うなら、ひと癖あること」。ブランドの嗜好を表す不変的な素材がある一方で、〈deconFAB〉とのリレーションシップによる新しい素材の選択がある——デッドストックの贅沢な生地に今の技術を用いて加工を施したシャツ地。シルクで知られる京都の製法技術を活用したナイロンのテキスタイル。シルク着物を綿に戻し、糸にし、オーガニックコットンと混ぜて織ったデニムなど——それらは、“クラシック”に現代のエッセンスやテクニックを融和させることで今の日常に浸透するものをつくりだす、ブランドの思想と呼応しています。
camel and beige.
ファブリックにとどまらず、学生の頃からクラシックなもの——それは歴史があるもの——がベースとして好きだったという彼にとっては、クラシカルな性質を残しながらユーモアを取り入れるのに最適なカラーパレット。
scarf.
曽祖父の代からスカーフを作り続ける家系に生まれ、幼少期の彼にとってスカーフは自宅に当たり前のようにあるごく自然なものでした。パリに渡り、蚤の市で、眼鏡やサングラスなどの小物を蒐集するなかでも無意識にスカーフを探し続けていたと言います。mister it.のコレクションを介し、若き日の記憶と接続し、エレガンスの印象を醸しだすスカーフの存在感が増していくことは必然的だったといえるでしょう。
mud dyeing (doro-zome).
デザイナーが自身のルーツをさぐる旅に出て出逢った、小粋な奄美大島の職人たちと。
soft heart motif.
パフクッションのような柔らかさ。多くの人と共有できる誠実なこころのかたち。
hirakata and paris.
デザイナーが安心するところ。
observing people.
道ゆく人の中には、自分の嗜好やポリシーを貫いている魅惑的な人々がいます。デザイナーは、ずっと幼い頃から、彼ら、彼女たちから目が離せなかったと言います。国籍、性別、年齢すべてが想像でしかなかったが、デザイナーは常にその装いや歩き様に“キャラクター”を見出していました。「それはまるでゲームのようでした」
mes amis.
デザイナーが身近な友人から得たインスピレーションに思いを馳せて作られたのが、mister it.のはじめてのコレクションでした。以来、すべてのプロダクトには、友人たちの名前のような名称がつけられています。「どのコレクションにおいても最終的には誰かのことを思い出す」のだとデザイナーは語ります。「この人は、こうしたら喜ぶんじゃないか?」という率直なアイデアが「mister it.」に人の面影を与え、届ける人にとっても身近で、リアルなものになるのだと確信を持っています。
katakoto.
デザイナーがパリに渡ったその時も片言のフランス語を話していたが、片言を聞くと、実際に洋服をつくり、街のひとに着てもらっていた日々を思い返すことがあると言います。ものさえあれば、たとえ片言でも、楽しいことを共有でき、通じ合うことができる。
scissors.
学生の頃から使っている黒いハサミ、パリから帰国するときにメゾンのチームがくれた白いハサミ。
cap.
そもそも、その名前は「moi」である。フランス語で「自分」を意味します。mister it.のファーストコレクションから現在まで同一のパターンで生み出され続けるキャップは、つばが長く、ひとの視線から隠れるのに最適です。学生の頃、彼が作ったキャップのつばは80cmを超えていました。
haute couture for everyday life.
パリでオートクチュールを学び、メゾンではVIPに向けて洋服を作っていたデザイナーにとって、洋服がその人のものであることはもっとも自然な思想のひとつと言えます。閉ざされたオートクチュールの考え方を現代に解放し、パーソナルなものづくりの楽しさや自由さを共有し、現代の生活や日常にしなやかに馴染む実践を行っていくことは、mister it.の中軸にある価値観と言えます。
fashion show “COUTURE RHYTHM”
11:00, Friday 15th March 2024
DESIGN & DRAPING Takuya Isagawa
CREATIVE EDIT Tatsuya Yamaguchi
SHOW PRODUCE Michio Hoshina from PLANKTON
HAIR STYLING Mikio Aizawa
MAKE-UP Suzuki
CASTING DIRECTION Chouaïb Arif
CONCEPT MOVIE Soshi Nakamura
MUSIC Kazuya Oi
IN-HOUSE PR Naoko Ueda
PR SHOWROOM Harumi Showroom
PR STRATEGY Hikaru Shiga from TEN10
COORDINATION Azusa Nozaki
RUNWAY IMAGE Koji Shimamura
BACKSTAGE PHOTOGRAPHY Jun Yasui
DESIGN ASSISTANCE Kurumi Takata
CARTONNAGE Ruruka Nishiyama
STYLING ASSISTANCE Taku Kato
SHOES SUPPORT Ayumi Otsu from _Fot
FABRIC COLLABORATION Shinji Sudo from deconFAB
SPECIAL THANKS Kazuya Tatematsu from KYOWA HOLDINGS