「お話を聞いたとき、ルーヴルと愛ってすごくいいなと思いました。この2、3年でどんどん世界が変わっていく中で、改めて見直したこと、愛を感じること、触れられないことへのさみしさ、触れられるものへの愛(いと)おしさなど、日々感じていると思います。是非、展覧会に足を運んで自分の日常にもたくさん愛を感じてほしいし、私も愛を描きたいと思います」と話す満島ひかりさん。
ジャン=オノレ・フラゴナールの《かんぬき》やフランソワ・ジェラールの《アモルとプシュケ》など、ルーヴルが誇る珠玉の「愛」の絵画を一堂に集めた展覧会「ルーヴル美術館展 愛を描く」東京展が3月1日から6月12日まで、東京・六本木の国立新美術館で開催されている。一般公開に先立ち、2月28日にはプレス内覧会と開会式が行われた。内覧会と開会式には同展の“案内人”を務める満島ひかりさんも登場し、トークセッションも行われた。大阪展は6月27日から 9月24日まで京都市京セラ美術館で開催される。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)注 : 満島ひかりさん オフィシャル画像©NTV
ジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》1777-1778年頃 展示風景
2018年から2019年にかけて東京と大阪で開催され、約70万人を動員した「ルーヴル美術館展 肖像芸術ー人は人をどう表現してきたか」に続き開催される今回の「ルーヴル美術館展 愛を描く」は、ルーヴル美術館のコレクションの中から、選(え)りすぐられた73点の「愛」の名画を展示。西洋の画家たちが『愛』という複雑な概念をどのように見つめ、描いてきたのか、通して考察するもの。
26年ぶりの来日となった18世紀フランス絵画の至宝、ジャン=オノレ・フラゴナールの《かんぬき》や、フランソワ・ジェラールの《アモルとプシュケ》をはじめとする、16世紀から19世紀半ばまで、西洋各国の主要画家の名画によって古代の神々の愛、キリスト教の愛、恋人たちの愛、家族の愛、官能の愛、悲劇の愛など、「愛」の表現の諸相をひもとく、かつてない趣向の展覧会となっている。
展覧会は、「プロローグ 愛の発明」、「第1章 愛の神のもとに―古代神話における欲望を描く」、「第2章 キリスト教の神のもとに」、「第3章 人間のもとに―誘惑の時代」、「第4章 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマ主義の悲劇」から構成されている。
最初に登場するのは「プロローグ 愛の発明」。古代ギリシア・ローマとキリスト教という2つの文化における愛の始まりの象徴的な表現を紹介。フランソワ・ブーシェの《アモルの標的》やピーテル・ファン・デル・ウェルフの《善悪の知識の木のそばのアダムとエバ》などを展示している。
「第1章 愛の神のもとに―古代神話における欲望を描く」では、アントワーヌ・ヴァトーの《ニンフとサテュロス》やドメニキーノの《リナルドとアルミーダ》などを展示。欲望に突き動かされる神々や人間の愛の表現を、大きな物語を追うような形で紹介している。
続く、「第2章 キリスト教の神のもとに」では、愛する者を所有するというギリシア・ローマ神話の愛とは対照的な、愛する者のために自分を犠牲にする愛を見ることができる。シャルル・メランの《ローマの慈愛》、または《キモンとペロ》やサッソフェラート(本名 ジョヴァンニ・バッティスタ・サルヴィ)の《眠る幼子イエス》、「放蕩(ほうとう)息子」のテーマを扱った絵画などでは、犠牲的な愛の規範が描き出された。また、深い信仰から忘我の境地に至り、愛する神と一体となる神秘体験をした聖人たちは、概して恍惚とした表情で描かれ、官能性を帯びている。同展ではマグダラのマリアを主題にした作例で紹介している。
また、「第3章 人間のもとに―誘惑の時代」では、ジャン=オノレ・フラゴナールの《かんぬき》を始め、サミュエル・ファン・ホーホストラーテンの《部屋履き》、ギヨーム・ボディニエの《イタリアの婚姻契約》などを展示。同展の注目ポイントのひとつである《かんぬき》について「愛をテーマにした今回の展覧会で最初のリストから出品してほしいというリストに入っていました。神話、宗教画に加えて、同時代の人々の日常生活を描かれるようになった18世紀。上流階級の男女の駆け引きが描かれることが流行した中でも、その極みであり、最後のきらめきといえる作品。一義的には解釈できない、あいまいさが一瞬しか描けない画面の中に視覚化されているのを味わってほしい」と同展の日本側監修者は話している。
フランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》1798年 展示風景
そして、展覧会の最後を飾るのは「第4章 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇」。美しい牧歌的風景の中に配された、はかない思春期を思わせる恋人たちの姿に、無垢な愛に対する当時の関心を読みとることができる、新古典主義の画家フランソワ・ジェラールの傑作《アモルとプシュケ》のほか、ギリシア・ローマ神話の男性同士の愛の物語に題材を得たクロード=マリー・デュビュッフの《アポロンとキュパリッソス》などを紹介している。
また、この「第4章 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇」は、今回の「ルーヴル美術館展 愛を描く」の中でで唯一一般来場者の写真撮影ができるエリアとなっている。
開会式で国立新美術館の逢坂恵理子館長は「それぞれの愛の絵画の物語や図像学を読み解きながら、じっくりと作品を御覧いただきたいと思っています。見る人1人1人が愛を分かち合う大切さをおもい、共有すること、異なる人と共存することにも想いを新たにしていただければ」とあいさつ。
ルーヴル美術館総裁・館長ローランス・デ・カールさんは「ルーヴル美術館の所蔵品の多様性を紹介する紹介するために、広範囲にわたり、そして普遍的な主題を見つける必要がありました。そして、選ばれたのが愛でした」などと話した。
開会式で行われたトークセッションで、満島ひかりさんは「展覧会に合わせて、パリのルーヴル美術館展を貸し切りにしたロケにも行かせていただき、現地でもとてもいい絵を見させていただいたこともあり、ワクワクしています。東京では学芸員の方から歴史を聞き、背景を紐(ひも)解きながら見ていると、1枚の絵に30分以上必要で(笑)。いろいろなことを想像してあっ、こういうヒントがあるから愛って言われているんだなとか。知れば知るほど鑑賞する時間が長くなってしまうので、1度では足りないなと、正直思いました。もちろん、パーッと見るだけでも、たくさんの時代や感情を追体験できるいい展覧会だとも思います。ルーヴル美術館では、高いところにあって見上げて見たのに、日本では目の前で見られて、パリでは見えなかった秘密が見えてくるような、ルーヴル美術館よりもぜい沢にみることができるものもあります」と笑顔。
また、声優の森川智之さんと共演で音声ガイドも担当することについては「初めて音声ガイドも担当したのですが、情感が盛り上がるようなものができたので、聞きながらご覧いただけるとより一層楽しめるかなと思います」と語った。
「ルーヴル美術館展 愛を描く」東京展プレス内覧会
フランソワ・ブーシェ《アモルの標的》1758年 展示風景
「ルーヴル美術館展 愛を描く」 東京展 2023年3月1日-6月12日 国立新美術館
「ルーヴル美術館展 愛を描く」 東京展 2023年3月1日-6月12日 国立新美術館 展示風景
アントワーヌ・ヴァトー《ニンフとサテュロス》1715-1716年頃 展示風景
ドメニキーノ(本名 ドメニコ・ザンピエーリ)《リナルドとアルミーダ》1617-1621年頃 展示風景
サッソフェラート(本名 ジョヴァンニ・バッティスタ・サルヴィ)《眠る幼子イエス》1640 -1685年頃 展示風景
サミュエル・ファン・ホーホストラーテン《部屋履き》1655-1662年頃 展示風景
ジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》1777-1778年頃 展示風景
「ルーヴル美術館展 愛を描く」東京展 2023年3月1日-6月12日 国立新美術館 展示風景
アリ・シェフェール《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》1855年 展示風景
クロード=マリー・デュビュッフ《アポロンとキュパリッソス》1821年 展示風景
「ルーヴル美術館展 愛を描く」東京展 2023年3月1日-6月12日 国立新美術館 展示風景
「ルーヴル美術館展 愛を描く」東京展 開会式
満島ひかりさん「ルーヴル美術館展 愛を描く」東京展プレス内覧会と開会式から©NTV
「ルーヴル美術館展 愛を描く」東京展 開催概要
展覧会名 ルーヴル美術館展 愛を描く
会期 2023年3月1日から6月12日
休館日 毎週火曜日 ※ただし 3月21日・5月2日は開館、3月22日は休館
開館時間 10:00-18:00 ※毎週金・土曜日は 20:00 まで ※入場は閉館の30分前まで
会場 国立新美術館 企画展示室 1E
〒106-8558 東京都港区六本木 7-22-2
観覧料 一般:2100円、大学生 1400円、高校生 1000円
主催 国立新美術館、ルーヴル美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、BS日テレ、ニッポン放送
後援 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
特別協賛 野村證券
協賛 大成建設、DNP 大日本印刷
協力 日本航空、NX 日本通運、TOKYO MX、TOKYO FM
企画協力 NTV ヨーロッパ
お問合せ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会HP https://www.ntv.co.jp/love_louvre/
展覧会 twitter @love_louvre2023