アルカンターラ社(Alcantara S.p.A.)は10月1日、イタリア・ヴェネツィアのサン・セルヴォーロ島で第6回「サステナビリティに関する国際シンポジウム」を開催した。社会的影響を与える投資のネットワークであるイタリア・ソーシャル・インパクト・アジェンダ (Social Impact Agenda for Italy) の支援を受け、ヴェネツィア国際大学と共同で開催したもの。シンポジウムには世界各国からイタリアの環境大臣や欧州議会議員、科学者、研究者、ジャーナリスト、企業家などが参加。トークセッションでは「グリーンウォッシングとサステナビリティ」をテーマに、エコロジカル・トランジション (持続可能な環境政策) を実施するときに新たな問題となっている、環境に配慮しているように見せかけるグリーンウォッシングの拡大を解明するため、サステナビリティ (持続可能性) の情報の透明性、広く受け入れられる技術・認証基準の定義、効果的な規制を特定する重要性など、グリーンウォッシングがどのようにして、様々なビジネスの分野で広がっているか、EU(欧州連合)がどう対処するかを話し合った。シンポジウムは、同社のウェブサイトでライブ配信された。
メイド・イン・イタリーの最高級素材アルカンターラ(ALCANTARA®)を展開するアルカンターラ社。2009年にイタリア企業として初めてカーボン・ニュートラル認証を取得し、サステナビリティの分野において先進的な取り組みを行っている。
シンポジウムの開会式で、ヴェネツィア国際大学 のウンベルト・ヴァッターニ学長に迎えられた、アルカンターラ社のアンドレア・ボラーニョ会長は「グリーンウォッシングは、生態遷移の妨げや不公正な競争の原因となり、サステナビリティに向けたプロジェクトへの投資に反する活動を誘導する。阻止しなければいけない」と挨拶。グリーンウォッシングの問題について警鐘を鳴らすとともに今回のシンポジウムの重要性を強調した。
イタリア・ソーシャル・インパクト・アジェンダのジョヴァンナ・メランドリ理事長は「環境や社会の変革に向けて何十年も取り組んできた人々やESG (環境、社会、ガバナンス)に準拠して報告されたコンプライアンスが、一部の企業によってマーケティングの機会として言い訳的に捉えられているという新たな問題に直面している。しかし、サステナビリティを重視した投資をしたいという投資家や一般の人たちも増えている。長期的には、現在の会計システムを克服する必要がある。EUはレギュレーション2088で一歩前進したが、インパクトを加味した会計モデルを世界レベルで適用する必要がある。この目標があってこそ、透明性と統合性が保証される」と語った。
トークセッションは、セッション1「グリーントランジション(環境配慮や持続可能性のある社会への移行)への取り組み」、セッション2「拡大するグリーンウォッウォッシングの問題」、セッション3「PETのケース – エコロジーへの移行をリードするバリューチェーン」、セッション4「ソーシャル・インパクト・ファイナンスの役割」の4部構成。
トークセッション1では、各界の著名人による遠隔講義が行われ、グリーン・トランジションへの取り組みについて議論された。エンリコ・ジョバンニーニ、インフラ・持続可能なモビリティー担当大臣は「サステナビリティへの取り組みを現実的なものにするため、技術的な変化、政治的・経済的なリーダーによる文化的観点からの行動、より効率的統治の形態、人々が集団的な意思決定を行う方法が必要」と述べた。
欧州議会議員 ・SUP指令報告者のシモーナ・ボナフェ氏は「次世代のEU資源を利用して、2050年に設定された気候中立の目標を達成することが求められている。環境に有害な材料の使用や、製品の環境への影響を測定できる方法について、明確な規則を採用し、確実な制限を設ける必要がある。また、グリーンウォッシングを避けることも基本だ。サステナビリティは消費者を欺くものであってはならず、科学的な証拠や認証に基づいた情報を提供する必要がある」と話し、現在直面している数々の環境問題を克服し、持続可能で効率的かつ競争力のある経済を実現するために、EUがどのような取り組みを行っているかを説明した。
また、シンポジウムではエコロジカル・トランジションにおける最も重要な世界的課題の1つである、ポリエステルと再生ポリエステルの具体的な事例についても議論された。欧州PET製造業者委員会のアントネッロ・チョッティ会長は「サステナビリティを達成するためにはコミットメントが必要であり、そのためには世界のサステナビリティ目標を支持しなければならない」とコメント。今後30年間で世界の人口が10億人増加すると言われていることを念頭に置き、ヨーロッパのPETメーカーは、真に持続可能な世界のためのパッケージをデザインするために、ポリエステルと再生ポリエステルを組み合わせることが鍵となると示唆した。
エグゼクティブ・ディレクターやサステナビリティ担当責任者として活躍するヤショバルダン・ロヒア氏は「PETのリサイクル過程では、より少ないエネルギーと排出量で済む」と、PETリサイクルの利点を強調。アルファ (ALPLA) グループのギュンター・レーナー会長は、より信頼性の高い認証システムの必要性を示すとともに、ペットボトルやコンテナーの生産を成功させ、グローバルに展開する可能性を示した。
シンポジウムの最後に、アンドレア・ボラーニョ会長は「コーヒーブレイクやランチタイムの時に様々なフィードバックをもらい、興味をもってもらったことが分かったし、様々なアイデアをもらえた。グリーンウォッシングがどれだけ重要な問題であるのかを改めて認識してもらい、グリーン・トラジションを実現するためにはこれからどんなことをしなければいけないのかということを分かってもらえと思う」などと語った。
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