「服を縫うのもボタンをつけるのも、針を持つのも嫌いで画家を目指していましたが、『それいゆ』のスタイルブックを見て、これだったらと思いました。私がファッションの世界に入ることができたのは中原淳一先生のおかげ」と話すコシノヒロコさん。KHギャラリー銀座特別展示「コシノヒロコ 中原淳一へのオマージュ」が10月9日から11月4日まで、東京・銀座のKHギャラリー銀座で開催されている。
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中原淳一は少女雑誌の人気画家として一世を風靡(ふうび)した後、女性誌「それいゆ」を創刊。続いて「ひまわり」「ジュニアそれいゆ」などを発刊し、カリスマ的な存在となったほか、ファッション、イラストレーション、ヘアメイク、ドールアート、インテリアなど幅広い分野で時代をリードした。その卓越したセンスと不朽のメッセージは今も人々の心を捉え、新たな人気を呼んでいる。
今回は、雑誌「それいゆ」の表紙絵やスタイルブックの原画など、中原が描いた貴重な絵画5点を特別に展示。また、コシノヒロコが中原へのオマージュとして描いた横顔の肖像画をはじめ、様々な女性を描いた作品も紹介している。
9日に行われたレセプションパーティーにはコシノヒロコさんとひまわりやの中原利加子代表も出席。中原代表は「ほかの作家と同じ空間で作品を展示するのは初めてだと思いますが、ヒロコ先生の熱い思いを感じ、やらせてもらうことになりました。5点の作品はすべてヒロコ先生が選んだもので、スタイル画だけでなく和服の女の子などいろいろなバリエーションを御覧いただけると思います。中原の絵は雑誌のために描いたものですから、作品にはすべて印刷のための指定や、ここからここまで何センチにするという指定が入っています。ペン画で描かれた2点は、雑誌では赤くなっている部分が白くなっているなど、違う印象になっています。中原は印刷が思った通りになっているのか工場に行って確認していたと聞いています。また、何人かの女性を描いたスタイル画はスタイルブックの表紙のために描いた絵で、すみの部分が四角く空(あ)いています。中原はこういう形にするというイメージがあり、文字が入る所は空けるというやり方がほとんどでした。絵画を見ることで手作りで雑誌が作られていたということを感じてもらえると思います」と挨拶。
コシノさんは「ファッションの世界で成功したおかげで好きな絵を描くことができていますが、ファッションデザイナーとしてこの年齢になっても新しいもの、自分の考えていることを表現できているのは絵を描いているおかげだとも言えます。もし、ファッションしかやっていなかったら60歳くらいで引退していたと思います。どれくらい続けられるかわかりませんが、90歳くらいまでは超新しいものを作っていきたい」と笑顔。また、「11月1日からニューヨークで初めてアートでの個展をします。80歳にしての(ニューヨークでの)アーティストデビューですし、趣味でやっているようなものなので自信はありせんが、今月はコレクション、来月は個展と本当に忙しくて、死んでいる暇もありません」と話し、会場を沸かせた。(注)会期中、一部の作品について展示入れ替えを行います。
KHギャラリー銀座 東京都中央区銀座4の3の13 和光並木通ビル地下1階 回廊時間 10:30~19:00 10月18日は18:00まで。 休廊日10月21日、10月28日 入場料無料
Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)
コシノヒロコプロフィール
スタイル画の大家、原雅夫氏に師事。1964年大阪心斎橋にオートクチュール・アトリエを開設し、1977年から現在まで毎年東京コレクションに参加。1978年にはローマのアルタ・モーダで日本人として初めて作品を発表し、1982年から10年間と2009年から2年間、パリのプレタポルテコレクションに参加。近年はアーティストとして国内外で作品発表の機会を持ち、銀座と芦屋にKHギャラリーを開廊している。