21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2で「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」が開催されている。一般公開に先駆けて6月28日に行われたプレスプレビューにはミュージシャンの小山田圭吾(Cornelius)らが登場した。Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)
小山田圭吾の曲を作家たちが映像化
展覧会ディレクターに、独自の表現により、ウェブ、インターフェース、映像の分野で高く評価されている中村勇吾を迎えた今回の「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」。小山田圭吾が音楽の構造に着目して書き下ろした新曲『AUDIO ARCHITECTURE』と、気鋭の作家たちがそれぞれの視点から楽曲を解釈し、制作した映像作品、Wonderwallの片山正通がデザインしたダイナミックな空間が一体となった会場で、音楽への新鮮な視点を発見できる。
デザインを通して様々なできごとやものごとについて考え、世界に向けて発信し、提案を行う場として2007年3月に開館。昨年、10周年を迎えた21_21 DESIGN SIGHT。第0回の「安藤忠雄2006年の現場 悪戦苦闘」や「デザインあ展」「建築家 フランク・ゲイリー展」「野生展:飼いならされない感覚と思考」など、オープン以来、一定の方法ではなく、様々なやり方で展覧会を行ってきた。
展覧会ディレクターは中村勇吾
今回の企画展は「我々がテーマを考え、誰をディレクターにしようかを考えるというアプローチではなく、中村勇吾さんに展覧会ディレクターをお願いしてみようというアプローチ」(21_21 DESIGN SIGHT佐藤卓館長)で進められたもの。
中村は「去年の今頃、21_21 DESIGN SIGHTから何か考えてほしいという話が来たときに、インタラクティブメディア、映像メディアのデザインをしているので、時間軸上のデザインをテーマにした展覧会にしたいと思った。そこで音楽がいいと思い、最初は音楽の構成法やデザイン法をひもとく展覧会を考えたが、広すぎるし、無理かなと思った。そんなときに立ち読みしていたGINZAという雑誌の中で、リリースされたばかりの小山田さんのアルバムについてショーン・オノ・レノンが『彼の創る音楽はいろいろな絵筆でAUDIO ARCHITECTURE(音の建築)を描いているみたいだ』という一節を見つけた。その言葉がいいな、それでいこうと思い今回の展覧会になった。まず、1つの楽曲があって、音楽を軸に空間や映像が連動して、全体として音楽建築空間ができあがるようなフォーマットを考えた。そのフォーマットを作家の皆さんが考え、再解釈したものを集めたのが今回の展覧会」と語る。
今回は稲垣哲朗、梅田宏明、大西景太、折笠良、辻川幸一郎(GLASSLOFT)×バスキュール×北千住デザイン、勅使河原一雅、水尻自子、UCNV、ユーフラテス(石川将也)+阿部 舜が参加。ギャラリー1、ギャラリー2とその裏の各作家のブースの3つのスペースを使い、小山田が今回の展覧会のために書き下ろした新曲『AUDIO ARCHITECTURE』を作家たちがそれぞれの視点から解釈し、映像化した作品を紹介している。
展覧会はギャラリー1の『AUDIO ARCHITECTURE』のスタジオライブを稲垣哲朗が撮影した映像からスタート。『AUDIO ARCHITECTURE』という楽曲のギター、ドラム、キーボードなどの楽器構成や音、歌詞などのアナログ的な部分を、3面の壁に映し出されたレコーディング風景の映像などで、視覚的にわかりやすく伝え、身体で感じられる作品になっているという。
ギャラリー2では梅田宏明、大西景太、折笠良、辻川幸一郎(GLASSLOFT)×バスキュール×北千住デザイン、勅使河原一雅、水尻自子、UCNV、ユーフラテス(石川将也)+阿部 舜の8組の作家が時間を占有する形で作品を紹介。コンサート会場やコレクション会場のように設置された椅子に座りながら、順番に現れる8組の作品を楽しむことができる。ランウエイを歩いてくるモデルのように近づいてくる映像を横から楽しんだりすることもできる。
その裏に回ると、8組が8つのブースに別れ、それぞれの映像作品を紹介。1組1組の作る映像を楽しむことができる。また、ミュージックビデオの構造に聴く人を取り込んだ、音楽+映像+鑑賞者が1つになった作品を紹介している辻川幸一郎(GLASSLOFT)×バスキュール×北千住デザインでは、自分だけのインタラクティブなミュージックビデオを専用スマートフォンアプリからダウンロードし、いろいろな場所や友人と楽しむこともできるという。
「(中村)勇吾さんとはいろいろな仕事をしてきたが、今まではこんな感じで、と何となく打ち合わせをして自分で勝手に膨らませて作ってきた。だが、今回は勇吾さんに言葉をいくつかもらい、それを構成して曲を作るなど音楽のコラボレーションができたし、楽しくできた」と小山田。
中村は「正直、できたのは昨日(笑)。すべてがきちんと揃ったのはさっきという感じなので、僕自身どう体験したらいいのかはっきりとはわかっていないが、いろいろな楽しみ方ができると思うし、AUDIO ARCHITECTUREという空間自体をいろいろなやり方で体験していただけるかなと思っています」と話している。
21_21 DESIGN SIGHT企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」
会期 2018年6月29日(金) – 10月14日(日)
休館日 火曜日
開館時間 10:00 – 19:00(入場は18 :30まで)
入館料 一般1,100円、大学生800円、高校生 500円、中学生以下無料
会場 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2 〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
tel. 03-3475-2121
www.2121designsight.jp
アクセス 都営地下鉄大江戸線「六本木」駅 東京メトロ日比谷線「六本木」駅 東京メトロ千代田線「乃木坂」駅より徒歩5分
主催 21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援 文化庁、経済産業省、港区教育委員会 特別協賛 三井不動産株式会社
展覧会ディレクター 中村勇吾
音楽 小山田圭吾(Cornelius)
会場構成 片山正通(Wonderwall)
参加作家 稲垣哲朗 梅田宏明 大西景太 折笠 良 辻川幸一郎(GLASSLOFT)× バスキュール ×北千住デザイン 勅使河原一雅 水尻自子 UCNV ユーフラテス
技術監修 遠藤 豊(LUFTZUG)
グラフィックデザイン 北山雅和(Help!)
21_21 DESIGN SIGHTディレクター 三宅一生、佐藤 卓、深澤直人
アソシエイトディレクター 川上典李子
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