第22回ベストデビュタント賞授賞式ムッシャンの木村由佳、とうあ、ボタニカルな暮らし。らが受賞

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「第22回ベストデビュタント賞発表・授賞式」(日本メンズファッション協会主催)が2026年3月13日、東京・原宿の東急プラザ原宿「ハラカド」3階「CBC」で開催され、ムッシャン(mukcyen)の木村由佳さん、Toua(とうあ)さん、「ボタニカルな暮らし。」らが登場した。授賞式後には、受賞者が活動や作品について語るトークショーも行われた。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

ベストデビュタント賞は、日本メンズファッション協会が若手育成プログラムの一環として2004年度に設立したアワードで、本年度で22回目を迎えた。若手クリエイターを応援する趣旨のもと、デビューを飾った若手クリエイター、アーティストの中から、社会、文化、業界、一般に支持され、影響を与え、将来を期待される人たちを各部門で選出する。選考基準は、世界に通用するポテンシャリティー、独自性・創造性、今後大きな活躍が望まれること、次なる世代に夢と希望を与えるスター性の4点。

今回の受賞者は、ファッション部門がムッシャン(mukcyen)デザイナーの木村由佳さん、アーティスト部門がToua(とうあ)さんと美術家・東京大学特任研究員の村山悟郎さん、音楽部門が「ボタニカルな暮らし。」。なお、村山さんは欠席のため、授賞式ではコメントが代読された。

発表・授賞式で、木村さんは、「このような栄えある賞をいただき、誠にありがとうございます。私は2024年秋冬シーズンから自身のブランド『ムッシャン』をスタートしました。衣服と体の関係を探り、新しいテキスタイルの開発を心がけながら追求しています。ブランドの活動をご評価いただいたことを、とても大きな励みだと感じています。ファッションを含め、この変化期、大きな変革期の中でこのような賞をいただき、より一層精進してまいりたいと思います」と語った。

ボタニカルな暮らし。を代表してリーダーの三谷乾仁さんは、「我々は結成したのが、コロナ禍の真っ只中だった2021年だったのですが、先行きが見えない中でスタートし、それでも自分たちの音楽を信じ続けてここまで進んできました。そうした歩みが評価され、結果につながったことを本当にうれしく思います。実は今年はメンバーの半分が30代に突入する年でもありますが、そういったタイミングでこのような賞をいただき、これからも自分たちの音楽を突き詰め、賞に恥じないよう活動していければと思っています」と述べた。

とうあさんは、「この世界に飛び込んで、今年で5年目になりました。YouTubeを始めてこの世界に入り、そこからモデルやアーティストなど、さまざまな活動を経験させていただきました。その中で私が一番大切にしていること、見てくださる皆さんに伝えたいことは、自分らしくいることの大切さです。誰かの背中をそっと押せるような、そんな存在でありたいと今でも思っています。表現の仕方は時代によって変わっていくと思いますが、これからも誰かに手を差し伸べられるような発信をしていきたいと思っています」と話した。

村山さんのコメントは司会が代読。「昨年秋に初の著書を刊行し、研究者としてもデビューすることができました。アーティストとしての活動歴はすでにミッドキャリアに入っていますが、この受賞を機に、改めて気持ちを新たに邁進していきたいと考えています。現今の世界情勢やAIを取り巻くメディア環境を鑑みると、極めて厳しい状況にあると言わざるを得ませんが、そのような中でも、制作を通して世界に働きかけ続けたいと思っています。AIの発展は、今後ますますその功罪が問われるようになるでしょう。新たな知のフロンティアが開拓されると同時に、AIによる大規模化の現象が社会に何をもたらすのか、創造性や美のあり方は変わるのか、問うべきことは無数にあります。こうした問いに向き合いながら、再び科学、哲学、芸術を結び合わせるような現代の制作哲学を追求していきたいと考えています」とした。

トークショー

授賞式後のトークショーでは、受賞者がこの道を目指したきっかけや、作品と活動に込める思いを語った。

木村さんは、「私がこの道を志したきっかけは、小さい頃にテレビで見たファッションショーです。その時に感じたことが、いまだに心の中に残り続けています。その時に気づいたのは、服は人の存在や感情を表現できる一つのツールであるということでした。華やかな世界を、自分の小さな力を通して、もっと広げていきたいと思い、この道を突き進んでいます」と話した。

ブランド名は、「苗字の中国における地方的な発音をもとに、日本語の読み方を加えた造語になります。発音自体にはあえて意味を持たせていませんが、『ムッシャン』と名付けました。その理由としては、もともと私自身が始めたブランドではありますが、ブランド自体が自立して育っていってほしいという思いがあります。また、一つのブランドにとどまらず、一つのスタイルとして『ムッシャンといえば』と想起されるような理想を持って、このブランド名にしました」という。

2025年秋冬コレクションについては、「このシーズンは、『砂時計』というポーランドの映画にインスピレーションを受けています。カルト映画なのですが、私はもともとカルト映画や怪談など、ミステリアスな世界に興味を持っています。そうした色合いの使い方やストーリーの広がり、心をつかむ要素を、洋服だけでなくコレクション全体を通して表現できたらいいなと思い、このようなビジュアルを制作しています」と語った。

また、作品づくりの変化について聞かれ、「最初は、ブランドの世界観をいかに感覚的に伝えるかにフォーカスしていましたが、ブランド自体も成長してきており、現在はプロダクトの幅や可能性を開拓しながら、新しい開発にも取り組んでいます。少しずつブランドとともに成長していると感じています」と述べた。

創作の原点と活動の広がり

ボタニカルな暮らし。のメンバーも、それぞれの原点を語った。Siyoさんは、「家が空手一家で、兄が3人いるのですが、みんな体育会系の中で育ち、自分だけとても繊細だったことにあると思います。親も子どもが4人いて忙しく、あまり見てもらえなかったこともあり、自分のそうした繊細な部分を見てほしい、私も見てほしいという気持ちが根っこにあって、音楽をやっているのだと思っています。幼稚園の頃から歌うことが好きで、大学に入ってジャズの研究サークルに入り、そこでバンドメンバーと出会いました。みんなジャズをやっていて、同じような気持ちで音楽に向き合っている人もいるのだと感じました」と振り返った。

三谷さんは、「音楽は5歳の頃から始めました。最初はエレクトーンで、親の勧めだったと思いますが、それが自分に合っていたようで、これまで途切れることなく続けてきました。人生の中でも一番長く続けていることなので、そうした音楽を仲間と一緒にできるのは本当にうれしいことだと思っています」と語った。

はるまきさんは、「音楽を始めたきっかけは、4歳でピアノを始めたことです。母の影響で、母がジャズピアノをやっていたことから、私もピアノを習い始めました。その後、小学校で吹奏楽部に入り、サックスに出会いましたが、とてもかっこいい楽器だと衝撃を受けました。そこから気づけば20年が経ち、長く続けてきてよかったと感じています」と話した。

中西和音さんは、「音楽を始めたきっかけは父とおじの影響が大きいです。おじはJポップの歌手である中西圭三さんで、ライブをよく見に行っていたこともあり、音楽をやってみたいと思うようになりました。ドラムを始める際、父が音楽好きでジャズをよく聴いていたことから、ポップスやロックのドラムをやりたかったのですが、父に勧められてジャズのドラムを始めました。大学のジャズ研究会で現在のメンバーと出会いました。ジャズは一つのバンドで継続的に活動するというよりも、その都度メンバーを集めて編成を組むことが多い音楽ですが、このメンバーで長く活動を続けてきた中で、このような名誉ある賞をいただけたことを大変うれしく思っています」と述べた。

創作面では、三谷さんが「自分たちの音楽をもっと広げたいという思いから、これまでとはジャンルの異なるものにも挑戦してきました。それはそれで良かったのですが、自分たちのアイデンティティーは何なのかと考えるようになりました。そこで、最初の頃のように、自分が曲を作り、Siyoが歌詞を書くという制作の形を改めて大切にしています」と説明。「レコーディングについても、現在は技術の進歩によってそれぞれが個別に行うこともできますが、あえて全員で集まり、同じ空間で音を出しながら録音することの大切さを改めて実感しました。最近は、そうした原点に立ち返った形で制作を行っています」と語った。

Siyoさんは、「常に、自分たちが出した曲を後から聴いて、『もっとこうすればよかったのではないか』『どうすればより伝わるのか』と悩み続けていて、揺れ動いている部分はあると思います。ただ、音楽はかっこよくなければならないものでも、正しくなければならないものでもなく、それが魅力だと感じています。できるだけ『こうしなければならない』という考えを取り払うようにしています」とし、「ファンの方の中には、すべての曲が好きだと言ってくださる方もいて、その言葉を聞くと、自分が生きてきた軌跡を肯定してもらえたような気持ちになります。本当にファンの皆さんに感謝しています」と話した。

とうあさんは、活動の広がりについて「これまでYouTubeで活動してきたのですが、やはりYouTubeだけでは、私の思いや伝えたいこと、教えたいことに限界があると感じていました。表現の仕方もそうですし、受け取り手の側も含めて、本当に私のことを好きで見に来てくださる方にしか伝わらない部分があると感じていました」と振り返った。

その上で、「そうした中で、不特定多数の人に自分の思いを伝えるにはどうしたらよいのかと考えたとき、小さい頃から大好きだった歌って踊ることに行き着きました。音楽は多くの人に自分の気持ちを伝えやすく、理解してもらいやすいと感じています。より多くの人に自分のことを知ってもらうため、そして自分の気持ちを伝えるために、この活動を始めました」と述べた。

さらに、「お仕事をさせていただく中で、やはり自分らしくいられるかどうかを本当に大切にしています。自分らしくなければ何も伝えられないと思いますし、偽りの自分は本当に嫌いなので、自分の好きなこと、その感情を大切にしながら仕事をさせていただいています」と話し、「私も小さい頃から歌うことが大好きで、つらい時も楽しい時も、ずっと歌に支えられてきました。自分を見失いそうになった時も歌が支えてくれたので、自分と同じように悩んでいる人を歌で救いたいと思っています」と語った。

今後の活動

トークショー終盤では、今後の活動についても言及した。木村さんは、「今シーズンもランウェイ形式で発表させていただきます。先ほどお話ししたように、ブランド自体も成長しており、これまでより立体感のある演出ができるのではないかと思っています。また、国内にとどまらず、海外のメディアや販売面も含めて、ムッシャンの提案を国際的に広げていければと考えており、現在さまざまな取り組みを進めています」と話した。

Siyoさんは、「できるだけ長く心に残る曲を作りたいと思っています。その一つの目標として、子ども向けの童謡や合唱曲を作ってみたいと考えています。子どもたちが長く楽しめる曲を、素直な気持ちで書けたら幸せだと思っています」と明かした。

三谷さんは、「自分は曲を作る立場として、多くの人に届く音楽も大切だと思っていますが、自分たちのこだわりを突き詰めて作ったものが、本当に深く刺さる人に届いてほしいという思いが強いです。流行に流されることなく、自分たちらしい音楽を続けていく中で、さまざまな目標がかなっていくのではないかと思っています」とし、「また、自分たちはライブが魅力のバンドだと感じていますので、ぜひライブに足を運んでいただければうれしいです」と呼びかけた。

とうあさんは、「アーティストとしての活動については、ネタバレになってしまうのであまり詳しくは言えないのですが、現在制作中のものがあります。自分の人生や、今の自分を形づくってきたものをテーマにしています。最近は自分と向き合うことが多く、その中で落ち込んだり、うれしくなったりと、さまざまな感情を経験しています。そうした思いを込めて、誰かの救いになればいいなという気持ちで制作していますので、楽しみにしていただけたらうれしいです」と語った。

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