イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)2026年春夏コレクション〇2026年春夏パリコレクション日本人デザイナー

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イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)は2026年春夏パリコレクション(パリ・ウィメンズ・ファッションウィーク)5日目の2025年10月3日、パリのポンピドゥー・センターで2026年春夏コレクションを発表した。テーマは「Being Garments, Being Sentient(衣服は意識を持つのか)」。衣服を「生き物」と仮定し、成長や変容、意思を持つ存在として捉えることで、着る行為や表現の自由を拡張することに挑戦。「衣服の意識」「成長と脱皮」「消費社会」「表裏の境界」「偶然性」「植物の生命力」などを表現した。カンペール(Camper)との協業による新作スニーカー「Karst Finch」も発表された。音楽演出はタレク・アトゥイが担当し、自然素材を用いた電子音響で「無機と有機」を音楽的に表現した。Photos:© ISSEY MIYAKE INC.

「衣服は意識を持つのか」という問いから出発した今シーズン。衣服にまつわる既成概念を取り払い、そこに存在しないはずのものを着想源に新しい「衣服像」を描いている。衣服は本来、身体を覆って環境から守るもの、自己を表現・演出するもの、あるいは制服のように同一性や所属を示すものでもある。今回のコレクションでは、そうした機能的、表現的、社会・文化的な役割を意識しながら、衣服をあたかも自己意識を持ち、意思を示す「生き物」として想像した。その仮説を基に、衣服を着る行為をより自由に、表現をより豊かにし、着る側と着られる側の新たな関係を開こうとしている。

「GENERIC WEAR」「GENERIC WEAR: STRIPES」「GENERIC WEAR: SPEAKING」と題したシリーズでは、紙やナイロン、コットン、ポリウレタンといった素材を用いた。発想の起点は「衣服は意識を持つのか」という問いにある。もし衣服が自らの意識を持つ生き物であれば、仕立てられた型を破り、成長していくのではないか。衣服が「成長し脱皮する」という仮定を置き、本来動くことのない衣服が生き生きと自由に変化していく姿を表現している。Tシャツやパーカーといった既存の型に落とし込むことで、その変容をより際立たせた。

「ARMS」では、ポリエステルやコットン、ポリウレタンを使用した。テーマは「生き生きと動き出す衣服」。袖を思いもよらない位置に取り付けることで、着る人の手足との対照から違和感を生み出し、その発想に含まれる遊び心を引き出している。ジャケットは片腕を出す着方など、工夫次第で自由なスタイリングが可能となる。

「PEU FORM3」では人工皮革を使用した。テーマは「増殖するフットウェア」。2025/26年秋冬コレクションで発表したカンペール(Camper)との協業による「Peu Form」を衣服に展開した。Peu Formが生き物のように衣服と同化し、増殖していくという発想から生まれた造形が特徴。定型を持たないフォルムがしなやかにドレープを描きながら一枚の革となって身体を覆う様子は有機的で、衣服は仕立てられたものという概念を覆している。

「A SHOPPER’S BODY」ではナイロンとポリウレタンを用いた。テーマは「溢れ出る物欲」。過剰に物を買い込むことで生じるあふれる状態を衣服で捉え、消費社会の縮図として表現している。着る人の身体に多様な「もの」を収めることで、柔らかな丸みを持つ身体に対し、くっきりとした輪郭を浮かび上がらせた。第二の皮膚のように伸縮性のある薄いジャージーを使用し、意外な位置に配した大きなポケットはデザインの特徴であり、機能性も備える。

「PALINDROME」ではウール、ポリエステル、トリアセテート、コットンを用いた。テーマは「表裏の境界を無くす」。衣服の「表と裏」という概念を取り払い、どちらを表にしても着用できる仕様とした。通常は裏地になる面にはイッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)のロゴが小さく配され、身体を通すとジャケットの下にシャツを着ているように見える。その面を表にして着用すると、背中にシャツを背負っているかのような着こなしも可能となる。

「CONCEALED」では紙やナイロン、コットン、ポリウレタンを使用した。テーマは「覆い隠すことであらわれる本質」。身体とその周囲の余白を一枚のキャンバスに見立て、シンプルなパターンから発展させた。一枚の布を筒状にし、身体を程よく覆うことで形が完成する。身体と布の間に生まれる空間に着目し、それ自体をデザインすることで新たな造形を見いだしている。

「URBAN JUNGLE JERSEY」ではトリアセテート、ポリエステル、ポリウレタンを使用し、「URBAN JUNGLE」ではポリエステルを用いた。テーマは「植物の生命力に肖る」。都会で見かけるシュロなどのヤシ科の植物が、窮屈に植えられても伸びやかに育つ姿を写真に収めて柄(URBAN JUNGLE JERSEY)とし、その形態(URBAN JUNGLE)を衣服に取り入れた。写真柄は植物が育つ環境を忠実に表す一方、植物の形態を模したプリーツ素材はしなやかで、張りのある葉を思わせる。

「ADVENTITIOUS: SLEEVES」ではトリアセテートとポリエステルを使用し、「ADVENTITIOUS: HIGH-NECKS」ではコットンとポリエステルを用いた。テーマは「型に偶然性を」。植物が思い思いに芽吹く姿を取り込み、通常は既定の型からつくられる衣服に「生」の意思を宿らせた。思いもよらない位置に袖や襟、穴を配した筒状のニットは多様な着方が可能で、重ね着によって組み合わせはさらに広がる。一着の衣服の着方が自由になることで、着る人の身体も、着ることへの考え方も自由になっていく。

「CAMPER × ISSEY MIYAKE」カンペール(Camper)との2回目の協業としてスニーカー「Karst Finch」を発表した。カンペールの代表的なシリーズのひとつ「Karst」のソールに、軽量で伸縮性のあるアッパーを組み合わせたモデルだ。Karst Finchは、両者のものづくりに共通する「遊び心」を形にしたフットウエアで、小鳥の羽毛の色彩を着想源にした鮮やかな配色と軽やかな履き心地が特徴。自由に街を歩くイメージを託している。さらに、配色の異なる2足の靴下がスニーカーとセットで販売され、履く人が自由に組み合わせることで多様なスタイリングを楽しめる。

今回のコレクション発表の音楽演出「サウンドスケープ」は、アーティストで電子音響音楽の作曲家タレク・アトゥイ(Tarek Atoui)が手がけた。アトゥイは自身の多様なプロジェクトや作品群から楽器や音の素材を選び出し、それらを組み合わせて調和の取れた音と空間を構成。

コレクションのテキスタイルが持つ質感と音質的な特性を生かし、作曲とパフォーマンスに取り入れた。石や水、モロッコやサウジアラビア、韓国で太鼓に用いられる獣皮、陶器や磁器といった自然由来の素材を使い、多彩な要素で音と空間を創出。「無機と有機」というコレクションテーマを音楽として解釈した。

イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)2026年春夏コレクションLOOK

イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)2026年春夏コレクションDETAIL

画像© ISSEY MIYAKE INC.
ランウェイルック / ディテール画像: Frédérique Dumoulin-Bonnet
ショー画像: Olivier Baco / 金谷龍之介
サウンドスケープ: Ophélie Maurus

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