
「日本メガネベストドレッサー賞2025」—「iOFT-国際メガネ展」で5年ぶりの開催
「日本メガネベストドレッサー賞2025」の表彰式が10月1日、東京ビッグサイト東7ホールの特設会場で行われ、木村文乃さんや石破茂首相が登場した。iOFT(国際メガネ展)の第1回開催にあわせて創設された「日本メガネベストドレッサー賞」は、各界から「最もメガネが似合い、最も輝いている人」を選び表彰する、眼鏡業界最大の顕彰イベントで、iOFTの併催行事として実施されている。5年ぶりの開催となった今回は、女優の木村文乃さん(芸能界部門)、石破茂首相(政界部門)、経済学者の成田悠輔さん(経済界部門)、VTuberで「にじさんじ」所属の加賀美ハヤトさん(VTuber部門)が受賞した。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)
木村文乃さん「メガネは人生の相棒」

芸能界部門は木村文乃さんが受賞した。映画やドラマで幅広く活躍し、透明感のある存在感と確かな演技力で多くのファンを魅了してきた。ドラマ「愛の、がっこう。」では教師役を演じ、誠実で温かみのある演技と、メガネをかけた柔らかな笑顔が大きな反響を呼んだ。知的で洗練された雰囲気と端正な顔立ちにメガネが映えることが、今回の受賞理由となった。
漆職人が一つひとつ丁寧に仕上げた世界で唯一のメガネであいさつした木村さんは、「中学1年生のころからずっとメガネユーザー」と明かし、「私の人生においてメガネは相棒のように身近な存在」と語った。作品の中でメガネを外した瞬間、「自分なのに自分でないような、不思議な感覚を覚えました」というエピソードも披露。「これからもメガネとともに暮らしていきます」と話した。
成田悠輔さん「メガネは社会を包摂する装置」

経済界部門は、経済学者の成田悠輔さんが受賞した。鋭い知性と独自の視点で経済学の枠を超えて活動し、テレビやメディア出演では複雑な社会課題をわかりやすく、時に鋭く論じる姿で注目を集めてきた。左右で形の異なるトレードマークのメガネは講演や番組を通じて広く知られ、知的な語りとともに印象的なスタイルとして支持を得たことが評価された。
成田さんは、映画「シン・ウルトラマン」に登場するウルトラマンをイメージして作られたメガネをかけて登壇。「裸眼だと視力はもう0.01。太古の昔だったらあっという間に死んでしまっていたんじゃないかと思うんです。自分のような人間が生きていられるのもメガネのおかげ」と語った。さらに、メガネを「弱い者や少し変わった者に救いの手を差し伸べ、社会の中に包み込んでくれる、とてもありがたい存在」と位置づけ、「日本でも海外でも、弱き者や異なるものを排除しようという動きが高まっている。今の社会に求められているのは、メガネの精神」と強調した。
加賀美ハヤトさん「自分と世界を彩る存在」

今年から新設されたVTuber部門は、ゲーム実況やライブ配信、バーチャルイベントで人気を集める「にじさんじ」所属の加賀美ハヤトさんが選ばれた。。バーチャルな姿で活動するVtuberは、動画配信をはじめSNSやイベントなど幅広い場面で活躍し、新時代のインフルエンサーとして注目を集めている。VTuber部門は、若い世代を中心に支持を拡大し、新たな消費やメガネ文化の広がりに寄与する存在として期待され、今年度から新設された。メガネを取り入れたおしゃれなスタイルも話題を呼んできた加賀美さんは、コンセプトショップ「ひつじメガネ」とのコラボレーションで自身のモデルが好評を博し、その魅力と存在感が業界からも高く評価された。
加賀美さんは「30年以上の歴史を持つこの賞に、次元の違う色物が紛れ込んでしまった」と会場を和ませつつ、「メガネは自分の世界を、そして自分自身を同時に彩ってくれる大切な存在」と表現。「バーチャルの立場から、メガネ業界の盛り上がりに少しでも貢献できれば」と語った。
石破茂首相「和らいだ雰囲気と真剣さを伝える」

最後に発表された政界部門は石破茂首相。冷静な分析力と誠実な姿勢で国民に寄り添い、首相就任以降、公務でメガネをかける姿が印象的とされ、業界から大きな支持を集めたことが今回の受賞につながった。
石破首相は受賞に「表彰状を差し上げることはあっても、自分がいただくことはありませんでした」と笑顔を見せ、自身は裸眼視力が良く、当初は見え方のためではなく「表情が柔らかく見える」ためにメガネをかけ始めた経緯を説明した。「政治家は場当たり的に受けを狙えばいいというものではありませんが、メガネは和らいだ雰囲気と真剣さの両方を伝えてくれる」とメガネの効用を語った。さらに、AIによる似合い度診断やタフな素材など、店頭で触れた最新技術に言及し、「メガネは生活の一部であり、人生の一部。これからもメガネが素敵な人生をつくる力になれるよう取り組んでいきたい」と語った。
日本メガネベストドレッサー賞 2025芸能界部門・木村文乃さん

華やかな賞をいただき、ありがとうございます。身に余る選考理由で、少し恐縮しながら登壇いたしました。今回はたくさんのメガネをいただきまして、その一つひとつを拝見し、またホームページも見させていただいたのですが、私は中学1年生のころからずっとメガネユーザーです。幸いにも、メガネをかけてお芝居をさせていただく機会も多くありました。
一作品まるごとメガネ姿で臨んだこともあり、「変身インタビュアーの憂鬱」というドラマでは、度を入れて特注した、とても分厚いメガネをかけて演じました。それほど、私の人生においてメガネは相棒のように身近な存在です。今回、皆さんの会社のホームページを拝見したときに、メガネは改めて人に寄り添い、あらゆる年代の方々のニーズに応え、そして個性を与えてくれるものだと感じました。これは私自身、日々の生活で実感していることでもあります。
先ほどご紹介いただいたドラマ「愛の、がっこう。」では、小川愛実先生――チワワ先生と皆さんから呼んでいただいていましたが――を演じました。この役はメガネなくしては成り立たなかったと思います。メガネがあったからこそ、多くの方に愛され、可愛がっていただけたのだと強く実感しています。実際、劇中で2、3回だけメガネを外すシーンがあったのですが、そのときは自分なのに自分でないような、不思議な感覚を覚えました。そこにいるのは確かに愛実なのに、愛実ではないように思えたのです。その経験を通じて、メガネが小川愛実という人物として私をカメラの前に立たせてくれていたのだと改めて感じました。
これまでずっと身近にあったメガネ。その存在がきっかけとなり、このような素晴らしい賞をいただけたことに深く感謝しています。本当にありがとうございました。これからもメガネとともに暮らしていきます。
日本メガネベストドレッサー賞 2025経済界部門・成田悠輔さん

実は、何もスピーチを考えていなかったことに3秒前に気づきまして、今、頭の中で必死に作っているところです。何よりありがとうございます。今日はジメジメと足元の悪い中お集まりいただいて、本当にありがたく思っています。そんな社交辞令を言いたくなるほど、今ちょっと緊張しているんです。
さて、やっぱりメガネの話ですよね。考えてみると、メガネって救いだなという気がするんです。今日こうして、いつもと違うメガネをかけさせていただいているんですが、これは伊達メガネで度が入っていません。私事ですが、目の悪さだけには自信がありまして、裸眼だと視力はもう0.01。今は全く何も見えず、ただ目の前に光る雲があるような感覚なんです。
そんな人間は、太古の昔だったらあっという間に死んでしまっていたんじゃないかと思うんです。すぐに外敵に襲われてしまいそうですし、仲間からもはぐれて、どうにも立ち行かなくなっていたでしょう。そう考えると、今こうして自分のような人間が生きていられるのもメガネのおかげだなと、大げさかもしれませんが、そんな気がしてくるんです。
そういう意味で、メガネというのは弱い者や少し変わった者に救いの手を差し伸べ、社会の中に包み込んでくれる、とてもありがたい存在なんじゃないかと思っています。
メガネだけでなく、技術やテクノロジーもみなそういうものだと思うんです。本来ならはじかれてしまうようなものを包摂し、包み込むような存在です。今まさに社会で求められているのは、そういう存在じゃないかと感じています。
日本でも海外でも、弱き者や異なるものを排除しようという動きが高まっているからです。排外主義や外国人嫌悪、外国人差別の問題は、日本でもアメリカでも、そしてほかの国でも大きな課題になっています。今の社会に求められているのは、メガネの精神なんだと思います。日本も世界も、メガネのような存在になってくれたらと、そんなことを考えています。
日本メガネベストドレッサー賞 2025 VTuber部門・加賀美ハヤトさん

30年以上の歴史を持つこの賞に、次元の違う色物が紛れ込んでしまったことを、まずは深くお詫び申し上げます。正直に申し上げますと、今回の受賞に関しては二度驚かされました。1度目は受賞の連絡をいただいたとき、そして2度目は他の受賞者の方々のお名前を拝見したときです。「この並びの中に自分が入っていてよいのか」と悩みに悩んできましたが、ここはあえて開き直らせていただきました。
私は普段、YouTubeで配信活動を行っています。そのとき「今日はどんな姿で皆さまの前に現れようか」と毎日考えています。知的な雰囲気で出るのか、それとも柔らかい印象で臨むのか。そうした考えを形にしてくれるのがメガネです。
私にとってメガネは、ただ視界を整えるものではありません。自分の世界を、そして自分自身を同時に彩ってくれる大切な存在だと思っています。今回の受賞は、そんなメガネの魅力を信じて共に楽しんでくださった皆さまのおかげです。今後もバーチャルの立場から、メガネ業界の盛り上がりに少しでも貢献できれば幸いです。
日本メガネベストドレッサー賞 2025 政界部門石破茂首相

国会議員を40年務め、大臣や党の役員、総理大臣などさまざまな役職を経験してきました。その中で表彰状を差し上げることはあっても、自分がいただくことはありませんでした。総理大臣になって1年、こうして初めて賞をいただき、「人生をやっていると、たまにはいいこともあるんだな」と思ったところです。
私はもともと目が悪い方ではなく、視力はだいたい1.2や1.0。運転免許の更新のときにも「裸眼で運転できます」と言われて喜んだくらいで、これまで「メガネをかけないと運転できません」と言われたことがありません。ですので、ずっとメガネをかけてこなかったのですが、3回目の自民党総裁選のとき、「顔が怖いと言われるのだから、表情を少し柔らかくする工夫をしたらどうか」と助言をいただきました。メガネをかけると確かに表情が柔らかく見えるということで、それ以来かけるようになったのです。
私としては、少しでも威圧感や重圧感を和らげたいと考えています。ただ、政治家はコメディアンではありませんので、場当たり的に受けを狙えばいいというものではありません。怖さや威圧感がなくても「この人の言っていることは信じてみよう、本当かもしれない」と思っていただくことが大切です。それが政治家の仕事だと考えています。そういう意味で、メガネは「和らいだ雰囲気」と「真剣さ」の両方を伝えてくれる、とてもありがたい存在です。
数カ月前には前橋のメガネ店を訪れました。そこでは「象が踏んでも壊れないメガネ」が本当にあることを知り、驚きました。また、メガネを試着した姿をAIが判定して「どのメガネが一番似合うか」を教えてくれるサービスもあり、技術の進歩に感心しました。さらに、メガネ屋さんでパンを販売し、地域のにぎわいの中心になっている店もありました。メガネは生活の一部であり、人生の一部でもあり、大きな存在だと思います。これからも皆さんと一緒に、メガネが素敵な人生をつくる力になれるよう取り組んでまいりたいと思います。
「日本メガネベストドレッサー賞2025」表彰式












