
ミッフィー(miffy)誕生70周年を記念した展覧会「誕生70周年記念ミッフィー展」が、2025年4月23日から5月12日まで、東京・松屋銀座で開催されている。会場では、ミッフィーシリーズ全32作品の原画を日本で初めて一堂に展示するほか、初期の絵画や装丁、ポスターなど200点以上の資料を紹介している。前日の22日には内覧会と記者会見が行われ、女優やミュージシャンとして活躍する松下奈緒さんがスペシャルゲストとして登場。子どもの頃の思い出や展示の感想、ミッフィーへの想いなどを語った。Text & Photo: Shinichi Higuchi(樋口真一)

「ミッフィーちゃんは、小さい頃から身近にいました」と話す松下さん。図書館や学校のライブラリーに絵本が置いてあり、自然と手に取っていたという。「絵が可愛くて鮮やかで、お話はすごくシンプルなんだけど、どこかあたたかくて深い。改めて今回展示を見て、ディック・ブルーナ(Dick Bruna)さんって本当にすごいなって思いました」。
特に印象に残っているのは、0歳のころから愛用していたという蛇腹タイプの絵本。「一枚一枚にミッフィーちゃんやライオン、ぞうさんが描かれていて、文字はなかったんですけど、それを母が見ながらオリジナルのストーリーをつくって聞かせてくれて。出かけるときもその絵本があれば泣き止んでたらしいんです。そんな話を今回このイベントのお話をいただいたときに母から教えてもらって、すごく懐かしくなりました」と笑顔。
今回の展覧会では、1955年の『ちいさなうさこちゃん』から2009年の『うさこちゃんのおじいちゃんへのおくりもの』まで、全32作品の原画やスケッチを日本で初めて一堂に展示。素朴な線で描かれたミッフィーが、家族や友だちとのあたたかいつながりの中で成長していく姿を、1作品ずつ丁寧に紹介している。

松下さんは「絵本だから、アクリルペンか何かでさっと描いてるのかなと思ってたんです。でも全然違って、すごく細かくて繊細で、線も色も一筆一筆が大事に描かれてるのが伝わってきました。見ていて本当に感動しました」とコメント。
さらに、「大人が見ても心が動かされる。絵本って子どものものって思いがちだけど、こんなに深くてあたたかい世界があったんだって、あらためて気づかされました」と語った。

松下さんが200点以上の作品の中で最も心を打たれたと語ったのが、1996年に発表された『うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん』。「ミッフィーちゃんのおばあちゃんが亡くなっちゃうお話なんですけど、ちょっと展示も暗い世界観になっていて。でも、ブルーナさんの描き方が優しくて、子どもでもちゃんと受け止められるようにしてくれている。私、この絵本を知らなくて、初めて読んだんですが、ちょっと泣きそうになりました」。
「子どものときって、死ってどう受け止めていいかわからない。でもこの絵本を通じて、おばあちゃんはどこに行くの?っていう問いに、そっと寄り添ってくれるような気がしました。立ち止まってじっと見入ってしまいました」と話した。
今回、初来日となる『うさこちゃんおとまりにいく』(1988年)、『うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん』の2作品に、『うさこちゃんと たれみみくん』(2006年)を加えた3作品からは、とくに多くの原画や資料を紹介している。
「展示を見ていて、やっぱり“色”の力ってすごいなと思いました」と松下さん。ブルーナが絵本に使ったのは、基本の4色(赤・青・黄・緑)と数色の補助色のみ。
「限られた色の中で、どのページにどの色を使うかまで計算されていて、だからあの世界観ができてるんですよね。絵もシンプルだけど、だからこそ伝わるものがある。見ていて可愛いだけじゃない感動がありました」。
また、展覧会では2005年のミッフィー展以来、20年ぶりとなるブルーナさん自身による朗読映像『うさこちゃんとうみ』(オランダ語)も再公開。やさしく語りかけるような語り口で、原語の響きを体験できる貴重な機会となっている。

たくさんのミッフィーグッズも持っているという松下さん。「最近は海外のロケに行く機会も少なくなったんですけど、以前はいろいろなアーティストや画家の方だったり、芸術の旅という仕事をする中で、オランダの美術館は好きでした。オランダにはゴッホとかフェルメールとか、たくさんの画家がいますけど、美術館に行くとミッフィーちゃんとその作品がコラボしてるのをよく見かけるんです。ミッフィーちゃんのワンピースがゴッホの“アーモンドの木の花”の絵柄になっていたりして、つい買ってしまって」と話す。
「部屋に“ミッフィーコーナー”があって、世界中で買ったミッフィーちゃんの置物やぬいぐるみを置いています。自分で色を塗れるぬいぐるみも持ってるんですけど、もったいなくてまだ塗れてないんですよ」と笑った。
また、展覧会ではブルーナさんが若い頃に手がけた絵画や、出版社時代のペーパーバック装丁・ポスターなども紹介。グラフィックデザイナーとしての一面も知ることができる。
イベントの最後に、「“もっともっと”やってみたいことはありますか」と聞かれると、「もっともっと旅に出たいですね。日本も海外も。オランダのユトレヒトにも行ってみたいです。ブルーナさんのゆかりの地を巡ったら、また今回の展示の感動が深まる気がするし、知識を持って旅をすることで、新しい発見がある気がします」と答えた松下さん。

来場者に向けてメッセージを求められると、「ミッフィーちゃんが愛されて、皆さんの心にある理由が、この展覧会の中に詰まってるんです。ミッフィーちゃんって、子どもだけのものじゃないんですよね。大人になっても、いくつになっても教えてくれることがある。絵の可愛さ、言葉のリズム、ブルーナさんの世界に触れて、心があたたかくなる時間を過ごしてほしいです。私自身も、また会いに来たくなりました」と語った。
会期中は展覧会場だけでなく、松屋銀座内で展開される期間限定のショップやカフェなど、展覧会と連動した企画でもミッフィーの世界を楽しむことができる。
また、展覧会は神戸や大阪など全国を巡回する。
「誕生70周年記念ミッフィー展」内覧会













©Mercis bv
ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927〜2017)
オランダ・ユトレヒト生まれ。絵本作家・グラフィックデザイナーとして世界的に活躍した。1953年に初の絵本『de appel(りんごぼうや)』を発表して以来、2017年2月に生涯を閉じるまでに、120冊以上の絵本を手がけた。その作品は、世界約50の言語に翻訳され、累計8500万部以上を誇るロングセラーとなっている。
【開催概要】
■タイトル:誕生70周年記念 ミッフィー展
■会期:2025年4月23日(水)~5月12日(月) ※会期中無休
■会場:松屋銀座 8階イベントスクエア(東京都中央区銀座3丁目6-1)
■開場時間:午前11時~午後8時
※5月6日(火・振替休日)、5月11日(日)は午後7時30分まで
※最終日は午後5時閉場。入場は閉場の30分前まで
※混雑時には入場制限や整理券の配布を行う場合がある
■入場料:一般 1800円(1600円)、高校生 1300円(1100円)、小中学生 800円(600円)
※税込み。カッコ内は前売料金。未就学児は無料
※混雑緩和のため、全日程日時指定制
※チケットはローソンチケットで販売(Lコード:34917)
※購入方法および注意事項はローソンチケット販売ページを参照
■問い合わせ先:松屋銀座(代表)03-3567-1211
■公式サイト:https://miff70.exhibit.jp
<誕生70周年記念 ミッフィー展 グッズコーナー>
展覧会場内のグッズコーナーでは、テトラポーチ、アイシングビスケット入り角缶など会場でのみ購入できるオリジナル商品をはじめ、先行販売商品や新商品など、500点以上を展開する。ここでしか手に入らないミッフィーグッズがそろう。
場所:松屋銀座 8階 イベントスクエア
期間:2025年4月23日(水)~5月12日(月)
※グッズコーナーの利用には展覧会への入場が必要。入場してもすべての商品が購入できるとは限らない。
<誕生70周年記念 ミッフィー展 コラボカフェ>
期間限定で、ミッフィーをイメージしたカフェラテ、チーズケーキ、ハンバーグプレートなどのコラボメニューとオリジナルコースター(なくなり次第終了)を提供する。
場所:松屋銀座 8階 レストランシティ内「MGカフェ」
期間:2025年4月23日(水)~5月12日(月)
営業時間:午前11時~午後10時(ラストオーダー午後9時)
※5月6日(火)、11日(日)は午後9時30分閉店(ラストオーダー午後8時30分)
【巡回情報】
本展は2026年まで全国を巡回予定。
東京:2025年4月23日(水)~5月12日(月) 松屋銀座
神戸:2025年7月23日(水)~8月11日(月・祝) 大丸ミュージアム〈神戸〉
大阪:2025年8月14日(木)~9月1日(月) 大丸ミュージアム〈梅田〉
横浜:2025年9月13日(土)~11月4日(火) そごう美術館
名古屋:2025年12月6日(土)~2026年1月18日(日) 松坂屋美術館