東京テキスタイルスコープ2026年春夏、5月開催へ AIファッションや機能素材も登場する新展示会

開催概要:5月14日から3日間、都立産業貿易センター浜松町館で開催
日本ファッション・ウィーク推進機構はこのほど東京都内で記者会見を開き、2025年5月14日から16日まで東京都立産業貿易センター浜松町館で開催する新たな総合テキスタイル展示会「東京テキスタイルスコープ2026年春夏(TOKYO TEXTILE SCOPE 2026 Spring/Summer)」の開催概要を発表した。同機構の設立20周年という節目にスタートする同展は、従来の「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)」と「ジャパン・クリエーション(JC)」を統合・再構築したもので、テキスタイル業界の次世代展として新たな価値の創出を目指す。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)
日本ファッション・ウィーク推進機構主催の新たなテキスタイル展示会として第1回を迎える今回は、83社が出展する。展示会は全館貸し切りで実施され、2階から5階までの4フロアを使用。3階に総合受付を設置し、全体を見渡せる中核ゾーンとして機能させる。2階には織物短繊維の39社、4階には織物長繊維、染色・後加工、服飾資材など44社の出展ブースを配置し、自然な回遊動線を確保する。5階はセミナーやレセプションが行われる「フレンドリーゾーン」として活用され、来場者や出展者同士の交流の場となる。初日にはオープニングパーティーの開催も予定されている。
「テキスタイル事業の新たな第一歩」JFW古茂田事務局長、
日本ファッション・ウィーク推進機構の古茂田博事務局長は、「日本ファッション・ウィーク推進機構がスタートして今年で20年。この節目を機に、テキスタイル事業として新たな第一歩を踏み出したい、新たなステージに入ろうと考えました。これまでの趣旨を踏まえつつ、今後こういった取り組みを進めるべきではないかという要素を反映したコンテンツに取り組んだ、新たな東京テキスタイルの総合展にしたい」と語る。国内外の産地や企業、クリエイターとの連携を視野に入れた本展示会は、会場レイアウトから情報設計まで“体験価値”を意識した設計が施されている。
注目1|「トレンド&インデックス」「What’s Next Textile」で素材トレンドを一望


注目の展示コンテンツとして、まず挙げられるのが「トレンド&インデックス」。これは出展者が開発した主要商材を集約して紹介するもので、来場者が全体の素材動向を一望できる場として継続される。また、来場者による人気投票型企画「ワッツ・ネクスト・テキスタイル(What’s Next Textile)」も継続して実施される。第1回は宇仁繊維、第2回と第4回はサンコロナ小田、第3回には東レが受賞するなど、特殊な加工だけでなく、ビジネスにつながる量産可能な生地を見ることができ、来場者の評価を知ることができる企画として定着してきた。
注目2|新企画「What’s Next Scope」始動 住友金属鉱山の高機能素材「ソラメント」に注目
さらに今回は、主催者視点でスタートアップ企業や注目素材をクローズアップする新企画「ワッツ・ネクスト・スコープ(What’s Next Scope)」がスタートする。その第1弾として選ばれたのが、住友金属鉱山が開発した機能性素材「ソラメント(Solament)」。同社が保有するナノ粒子技術を活用し、鉱物由来の粒子を繊維に練り込むことで、夏は遮熱、冬は保温という両極の機能性を兼ね備えたテキスタイルを実現した。窓ガラスなどの建材分野での実績があるが、アパレル用途は今回が本格展開の初期段階となる。テキスタイルとしての製品化は瀧定名古屋が担い、アパレルやユーザーに提供する仕組みとなっている。会場内では、素材と製品のサンプル展示や、機能を体感できるデモンストレーションが予定されている。
注目3|生成AI×ファッションの融合「東京AIファッションウィーク」
テクノロジーと創造性の融合という点では、昨年から楽天ファッション・ウィーク東京の関連イベントとして行われてきた「東京AIファッションウィーク(TOKYO AI Fashion Week)」にも注目が集まる。JFWと、生成AIに取り組むオープンファッションとの共同企画として、AIで生成したファッションデザインの展示や、最新の生成AI技術の紹介、体験デモが実施される。会場内では、入賞作品の展示に加え、誰でも簡単に体験できる生成AIデザインのワークショップも展開される。会期中には、AIファッションをテーマにしたセミナーも開催される予定だ。

注目4|産地のものづくりを学ぶ「産地フォーカス」第1回は“デニム産地”に特化
若手人材や未来の担い手育成を視野に入れた「産地フォーカス」も、新たな取り組みの一つだ。初回は、日本が世界に誇る“デニム”に焦点を当て、実際の工場での製造工程を360度VR映像で再現。30台のVRゴーグルが用意され、広島・岡山などの工場での紡績から染色、整理加工、洗い加工、縫製を経て、店頭に並ぶまでのプロセスを、リアルな現場の空気とともに疑似体験できる。映像制作には8社が協力し、素材から仕上げまでの一貫工程を臨場感ある形で伝える。学生やバイヤーにも開かれたこの取り組みは、次世代の繊維業界や生産現場への関心を高め、学びの場としても大きな役割を果たす。「産地フォーカス」は、シーズンごとにウール、シルク、綿などにスポットを当て、シリーズ化して継続される。また、ミラノおよびパリでも、VRゴーグルを使ったデモンストレーションを行う予定だという。
国際連携も強化:プルミエール・ヴィジョンとパートナーシップ。特設ブースも設置
さらに、展示と並行して開催されるセミナープログラムでは、フランス・パリで開催される国際見本市「プルミエール・ヴィジョン(Première Vision)」の最新トレンドやエコ・イノベーションを紹介する特別講演も実施される。プルミエール・ヴィジョン ジャパンの代表と、フランス本国のディレクターが登壇し、国際的な視点から素材開発やサステナビリティに関する知見が共有される予定だ。
また、国際連携にも力を入れるJFWは、昨年の「トラノイ東京」に続き、プルミエール・ヴィジョンとのパートナーシップを締結。今回の東京展では、3階に「ワッツ・ネクスト・インフォメーション(What’s Next Information)」クリエイティブ・ポール――「プルミエール・ヴィジョン」特設コーナー――を設置し、2026年春夏のシーズンカラーをはじめとしたトレンド提案や、プルミエール・ヴィジョンのプロモーション、出展希望企業との相談対応などを行う。
今後の展望やデザイナー、コレクション事業との連携も
古茂田事務局長は、従来の展示会で多く見られた団体出展が今回は少ない点について、「補助金など自治体予算のタイミングが5月開催に合わず、結果として企業単位の出展が中心となった。ただ、ジャパンクリエーションに出展していたところの多くは、11月展には出展すると言っている。また、2026年に向けて予算化を進めるため、今回は出展していないが、ぜひ見て参考にしたいという申し入れもいくつか来ている」と説明した。
また、コレクションブランドとのマッチングやコレクション事業との連携については、「5月展では特に大きなものはありませんし、現時点ではまだ内容は発表できませんが、11月展に向けて動いています。パリや東京のファッションウィークに参加しているデザイナーのうち、毎回20人近くが来場しています。我々が紹介させていただいたことがきっかけとなり、次のシーズンにつながったという実績も出てきているので、それを仕組みにできるようにしたい」と語った。


