東京ニットファッション工業組合が「次世代クリエイター育成プロジェクト」発表会を開催

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東京ニットファッション工業組合(TKF)は2025年2月16日、東急プラザ原宿「ハラカド」7階の「シブヤフォントラボ」で、「次世代クリエイター育成プロジェクト」の発表会を開いた。障がいのあるアーティストと文化服装学院ニットデザイン科の学生がコラボレーションし、アーティストの作品を基に学生がデザインを手がけ、TKF認証企業が製品化する取り組みで、共生社会の実現を目指す。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

同プロジェクトは2023年に開始され、2024年には2人のアーティストの作品を基にTKF認証企業6社が洋服を制作し、ファッションショー形式で発表された。今回はその発展版として、5人の学生と一般社団法人AOAartに所属する6歳から16歳の4人の若手アーティストのコラボレーションによる多様な感性を生かした作品作りに取り組んだ。

発表会では、ランウェー形式のプレゼンテーションで作品が披露された。また、プロジェクトに携わった学生デザイナー、TKF認証企業、アーティストが登壇し、制作過程や作品への思いを語った。

会見で、深澤隆夫理事長(東京ニットファッション工業組合)は「多様な人材が共生する社会の実現に向けた取り組みの一環として2年間続けてきた。まだ明確な答えは見えていないが、今後もより良い未来を目指し、活動を続けていきたい」とあいさつ。

フクフクプラス共同代表の福島治さんは「支援する・されるという関係ではなく、クリエイター同士として対等にチームを組みました。プロジェクトを通じて、アーティストが多くの人と出会い、コミュニケーションすることで、新しい共生社会が生まれると信じています」と話した。

また、今後の商品化について、TOKOWAKA代表の小林洋志さんは「現時点での商品は一点物に近く、生産コストが高いため、多くの人に届けるには価格調整が必要だ。そのため、クラウドファンディングを活用し、20点以上の予約が入ったら生産を開始するなどの仕組みを導入する予定。在庫リスクを抑えながら、より多くの人に商品を届けられる形を模索している」と説明。さらに、大手百貨店なども関心を寄せており、連携の可能性について協議を進めているという。

参加チームと作品紹介

佐藤望乃(学生) × 百瀬繊維 × アーティスト:村田大和(YAMATO)
作品タイトル:無題

佐藤望乃さんは「フレアのシルエットを細かく伝えることが難しかったですが、理想的な形に仕上げていただきました。産地の方々とのコラボレーションも貴重な経験だったと思います。この経験を今後の活動にも生かしていきたい」と語った。

百瀬繊維は「一番苦労したのは、付属の色がデザインと合わなかった点。佐藤さんと相談を重ね、最終的にこの形に落ち着きました。良い仕上がりになったと思います。メンズでピンクを使うという佐藤さんの発想によって、普段とは違う感性を取り入れた商品ができました」としている。

笹目歩美(学生) × 川島メリヤス × アーティスト:粕谷向日葵(HIMAWARI)
作品タイトル:フルーツ

笹目歩美さんは「HIMAWARIさんが描く野菜のリズムが独特で素敵だったので、抽象的な柄に変換し、ジャカードで編めるようにデザインしました。また、川島メリヤスさんの提案を基に、モヘア素材の特性を生かし、毛羽を立たせることで、より豊かな表現に仕上げました。工場の方々とものづくりをするのは初めての経験でした。学生のうちにこのような貴重な体験ができたことは、とても良かったと思います。

また、自閉症の方々と関わる機会がこれまでなかったのですが、実際に絵を描く様子を見せてもらい、筆に迷いがないことがとても印象的でした。その力強い表現に尊敬の念を抱きました。この経験を今後に生かしていきたいと思います」と話した。

ハンショクセイ(学生) × 伊東メリヤス工業 × アーティスト:粕谷向日葵(HIMAWARI)
作品タイトル:ゆきだるま

ハンショクセイさんは「これまでオリジナルデザインを中心に制作してきましたが、今回は向日葵さんの作品をベースに、新しい形に挑戦しました。打ち合わせでは、粕谷さんと直接話す機会もあり、感受性が豊かで、存在感のある方だと感じました」と振り返った。

宮本康平(学生) × 伊東メリヤス工業 × アーティスト:KAN
作品タイトル:ぼうにぶらさがるナマケモノ

宮本康平さんは「木にぶら下がるナマケモノをイメージし、丸編みの天竺生地に木のモチーフを組み込むデザインにしました。市場にありそうでないデザインに仕上がったと思います。スタイリングではジェンダーレスを意識し、2パターンの提案をしました」と説明。

「普段は学校で1人で作品を制作することが多いのですが、今回はチームでのものづくりに挑戦しました。障害者のアートや東京ニット産地の背景についても学ぶことができ、非常に勉強になりました。また、SNSなどを活用すれば、この取り組みをより多くの人に広めることができると感じました。今後も、自分なりに発信していきたいと思います」と話した。

竹内奈々(学生) × ニードル × アーティスト:YUUSEI
作品タイトル:きけんせいぶつ

竹内奈々さんは「イラストをそのまま柄に落とし込んだカーディガンを制作しました。シンプルな色使いですが、危険生物をここまで可愛らしくデザインできることに驚きました。プロジェクトの初回ミーティングで、アーティストの皆さんが絵を描く様子を見学しましたが、描くスピードが速く、迷いがないことに驚きました。そして、

そこから生まれる作品のクオリティの高さを間近で見て、『もっと多くの人に知ってもらいたい』と強く思いました。また、企業の方々と連携し、学生では経験できないような社会的なやり取りの大切さを学ぶことができました」とコメント。

ニードルは「4色のジャカードを使用しました。柄の部分を袋編みにすることで、立体感を出しました」と説明した。

また、アーティストの粕谷向日葵(HIMAWARI)さんは「かわいいです。楽しかったです」。YUUSEIさんは「かわいいと言ってもらえてうれしいです」などと語った。

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