桂由美追悼ファッションショー「偲ぶ会 ‘Yumi – Celebration of Life -‘」開催

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「これまで様々な苦しい経験をしてきましたが、常に『愛』『美』『夢』の三つを失わないように生きてきました」と語る桂由美さん。桂由美追悼ファッションショー「偲ぶ会 ‘Yumi – Celebration of Life -‘」が2024年8月9日、東京千代田区の帝国ホテル東京「孔雀の間」で開催された。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

今回のショーは、生前「お葬式なんていらないから、その代わりにショーをしてほしい。その時には装花は假屋崎省吾さんに、秋川雅史さんには『千の風になって』を歌ってほしい」と語っていた桂さんの想いを叶えたもの。これまで発表された作品から代表作100着を厳選し、ショー形式で披露した。また、ショーには冨永愛さんも登場した。

ショーに先駆けて、新生Yumi Katsuraクリエイティブチームとして始動する藤原綾子、森永幸徳、飯野恵子の3人が登場。「晴れの日の仕事を続けてきた桂にふさわしい追悼ショーを成功させるため、社員一丸となって準備に励んできました。59年にわたる創作活動の集大成を、皆様とともに楽しみ、桂へ思いをはせたいと思います」とあいさつ。また、「準備期間は、桂の功績や偉大さを再確認し、今後のブランド発展の足掛かりを見つける期間ともなりました。今後、私たちユミカツラは、誰も成し遂げることのなかった桂の活動や思いを受け継ぐとともに、時代とともに進化させ、発展させていきたいと思っています」と述べた。

続いて、会場には桂さんが生前語った「『愛』といっても、いろいろな形の愛があると思います。友人同士の友情もあれば、家族の愛情もありますし、恋愛における愛情もあります。さまざまな愛情がありますが、そのいずれか一つでも持っていれば、人は強くなれるものです。それが第一です。

次に、何かを美しくすること。食事のセッティングでもいいですし、部屋に花一輪を飾ることでもいい。美しいものを見る、あるいは取り入れることで、心が豊かになります。そして最後に、夢を持つことです。私自身、夢と共に生きているような人間ですが、寝ているときも、暗い場所で一人でいるときも、必ず『将来はこうしよう』と考えています。

今の私の夢は、『ハッピーランド』を作りたいということです。そこに来れば、本当に幸せな気持ちになれる場所を作りたいと思っています。私の店は小さなブティックですが、考え方次第では『ランド』とも言えるでしょう。『愛』『美』『夢』の三つを持っていれば、こんな苦しい世の中でもなんとか生きていけるのではないかと考えています。私たちはいつでも花嫁さんの幸せを一番に考えています」という言葉が流された。

桂由美さんが遺した代表作100点を、「Yumi – Celebration of Life -」「花嫁誕生」「ウェディングパーティ」「ユミラインパレード」「クチュールウェディングヒストリー」「アニバーサリー・ウェディング」「ラグジュアリークチュール」「スタイリッシュジャパン」「ジャパネスク」「ドラマティッククチュール」「ローズ・ユミ」の11シーンで紹介した今回。

ショーは、秋川雅史さんが『千の風になって』を歌う中、55メートルの絹織物を使用し、総重量わずか600グラムに仕上げたウェディングドレスを身に着けた冨永愛さんが登場してスタートした。「新婦の体に負担がかからないよう、軽いウェディングドレスを作り、ダンスを軽やかに踊れるようにしてあげたい」という桂さんの言葉をきっかけに、4年をかけて開発された「妖精の羽」、フェアリーフェザーと名付けられたドレスは、その軽さと機能的なデザインで見る者を驚かせた。

次に登場したのは「一枚の布から花嫁は誕生するのです」という言葉から始まるシーン。1989年、25周年のショーで初めて披露され、2015年の50周年ショーでも再演されたシーンが、今回改めて披露された。パーティーなどのウェディングプロデュースから、初めてニューヨークで行ったショーで発表した大振り袖のお引きずりスタイルをヒントにしたユミラインのドレスへと続くシーン。モデルたちは桂由美さんへのオマージュとしてターバンを巻いて登場した。

そして、ギネスブックに登録された1万3262個のアコヤ真珠を刺繍したドレスなどの革新的なデザイン、桂由美が最後まで力を入れて取り組んでいたアニバーサリー・ウェディングとそれに対応したデザインの提案、絵画や自然からインスピレーションを受けたイブニングドレスが登場した。また、和装スタイルを現代の花嫁に合うようにアップデートしたデザインや、パリ・オートクチュールコレクションで発表された日本の伝統美や技術を独自の解釈で作品に投影したデザインも披露された。結婚式やパーティーからデザインまで、桂由美が59年間続けてきた挑戦の歴史を再認識させるようなシーンが続く。

後半には、7色の光を放つLEDライト繊維を使い、大輪の花を表現したドレスや、越前和紙職人とユミカツラの技の共演で琳派のイメージを表現するなど、和紙の可能性を追求したドレスなど、ドラマティックなデザインが登場。桂由美の名前に由来する花嫁のバラ「ローズ・ユミ」をイメージし、300枚の花びらで飾られたドレスなど、桂由美の人生をたたえ、ローズ・ユミを様々にデザインしたドレスが追悼ショーのフィナーレを飾った。

コレクションの最後には、クリエイティブチームの後ろから立体的な映像を空間に投影する3Dホログラムを使って映し出された桂由美さんの姿が登場。まるで桂さんがその場にいるかのような演出で、来場者を驚かせた。

また、ショー会場前の展示ブースでは、初公開となる桂由美さんのワードローブや、トレードマークのターバン、デザイン画などが展示された。

ショー後に行われた会見で、假屋崎省吾さんは「桂先生とはもう30年以上の付き合いです。ショーのたびにお花をブーケとして生けさせていただき、公私ともに交流させていただきました。今年1月にも、実は鎌倉の自宅にお越しいただきました。うちには6匹の犬がいるのですが、一緒に遊び、美味しいものを召し上がっていただき、にこやかにお帰りになりました。それがすぐに(亡くられてしまった)という感じで、まだ先生がいらっしゃるような気がしてなりません。そして、今日のショーを見て、未来があるなと感じました。これから3人体制になり、もっと素晴らしいことをしてくれるのではないかと、期待感でいっぱいです。先生、見ていますよね。すごく嬉しく、感動しました」とコメント。

「今日のお花は先生への恩返しです。先生が生前、『こういう時には假屋崎さんにお花を生けてもらってね』と『徹子の部屋』でも公言なさっていました。遺言ではないのですが、もう30年以上の恩を、今回恩返しという形で花に託し、真心を込めて生けました。大勢の方々が桂先生の姿を皆さんの胸に永遠に焼き付け、先生を偲んでいただきたい。そして、先生が皆様の心の中でずっと生き続けていただきたいと願いを込めて、お花を生けさせていただきました」と話した。

今回の追悼ショーについて、クリエイティブチームの森永幸徳さんは「100点という数字にこだわった部分もありますが、本当はもっと出したかった。でも、きっと桂なら『100点にしなさいよ』と言っていたと思います。今日もきっと桂は、『あ、そうそう、それを出しなさい。それを出しなさい』と言いながら、客席の一番前で笑って見てくれていると思います」と語った。

また、森永さんは、桂由美さんが生前話していた「デザインはお客様に使っていただいて初めて成立する」という考えを引き継ぎ、今後もお客様を第一に考えて活動していきたいと強調。さらに、来年の60周年やこれまで年1回東京で行ってきたコレクションについての質問には、「現在、60周年に向けて企画を練っている段階で、ショーになるのか、どのような形になるのかは検討中ですが、開催する予定です。また、今後もユミカツラとして、年に1回はイベントや新作の発表を続けていかなくてはいけないと考えています」と答えた。

桂由美追悼ファッションショー「偲ぶ会 ‘Yumi – Celebration of Life -‘」

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