日本ファッション・ウィーク推進機構は楽天ファッション・ウィーク東京2024/2025年秋冬(Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 A/W)から、海外ビジネス強化のため海外からのプレスやバイヤーの誘致を再開した。楽天ファッション・ウィーク東京はコロナ禍に対応し、オンライン上での情報発信を国内外へ向けて行ってきたが、2024/2025年秋冬コレクションから本格的に海外からのプレス(メディア・ジャーナリスト等)誘致を検討し、フィジカルな海外との交流、情報発信を図っていく。実際にファッション・ウィークの臨場感を感じ、コレクションを間近で見てもらうことで、リアルな記事の発信の増加を目指す狙いから行われるもの。今シーズンは、そのスタートとしてニューヨークからジャーナリストのユージーン・ラブキン(Eugene Rabkin)さんを、ロンドンからフリーランスライターのゾエ・スーエン(ZOE SUEN)さん招聘した。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)会見、プレゼンテーション写真のみ。コレクション画像はブランド提供
楽天ファッション・ウィーク東京2024/2025年秋冬最終日には、ユージーン・ラブキンさん、ゾエ・スーエンさん、東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)の海外審査員であるニック・ウースター(Nick Wooster)さんが会見し、楽天ファッション・ウィーク東京2024/2025年秋冬の印象や改善点、今後の海外発信強化に必要なこと、印象に残ったコレクションなどについて語った。
今シーズン楽天ファッション・ウィーク東京のコレクションを見て感じたこと
ゾエ・スーエン「前回2019年に初めて東京のファッション・ウィークに来た時と比べて、変わったと思ったのはお客様の雰囲気。それぞれのデザイナーのテイストを反映していて、コレクション会場の中に、1つのコミュニティーみたいなものが生まれていると感じました」
ユージーン・ラブキン「オフィシャルな形(招聘)で来日するのは今回が初めてですが、オフィシャルではない形では何度も日本に来て、東京のファッション・ウィークを楽しませていただいています。僕は先取りをするのが好きなので、海外で発表していないブランド、東京でしか見られないブランドを発見することを、いつも楽しみにしてます。コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)、ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)、イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)、アンダーカバー(Undercover)、ナンバーナイン(NUMBER (N)INE)など、僕自身、日本のファッションで育って、もともと日本のファッションが大好きで、自分の中で日本のファッションは特別な存在。だから、東京のファッション・ウィークも注目しています」
ニック・ウースター「今回で10年目、18回来ています。好きなのは日本のファッションのエコシステム、要するに、東京のファッション・ウィークから始まって、その後どういう形で、どういうルートでセールスに乗っていくかをつぶさに見ることができること。しかも、日本のバイヤーはとても選ぶのが上手で、それを見ながら、私も勉強できるので、毎回楽しみに東京のファッション・ウィークに来ています。ファッション・ウィークで見たものが如実により1番反映されるのが日本だと思います。海外でも、ある程度は反映されるんですが、ショーで見るものがお店でちゃんと反映され、見られるのは日本が1番。特にレディースは日本が1番だと思うので好きです。ただ、元々僕は日本で買い物をするのが大好きで。ちょっと偏見があるかもしれないですが」
東京のファッション・ウィークは他のファッション・ウィークと比較してどうなのか
ニック・ウースター「他のファッション・ウィークと比較をすることは、あまり意味がないことだと思っていてますが、日本の特徴として特にいいと思っているは、若手の育成に力を入れてるっていうことです。ユージーンも言っていましたが、若手を育成することでファッションの未来が見える。僕はずっと来ているので、それを実際に目の当たりにしてきました。それはもう自分にとって日本のファッション・ウィークを見る楽しみの一つになっています」
ゾエ・スーエン「二人のあげた点、私も大賛成です。ただ、1つ小さいポイントをあげあげるとすれば、日本で見られるストリートスタイル。他の国で見られるものとは全く違って、すごくユニークで楽しいです。新しいデザイナーものものと、老舗のデザイナーのものとかお上手に組み合わせたり、その構築の仕方がすごく面白い。もともとあるものを再編集して、自分のスタイルを作り上げていくっていうのが上手だと思います」
東京のファッション・ウィークがよりよくなるために必要なこと
ゾエ・スーエン「私は実際今東京に来て、自分の目で見て、体験することができて、すごくそれを幸運に思ってるんですけれども、もっと多くのグローバルプレスの方たちが来て、実際に自分たちで見ることができたらもっといいと思います。確かに、SNSやウェブでも見られますが、生で見る、実際に見るのとはやっぱり全然違いますから」
ユージーン・ラブキン「ゾエさんがおっしゃった通りだと思います。付け加えるなら、もっと海外への発信が強まるといいということ。そのために、もっとフィジカルなショーが増えるといいなっていうこと。そして、もっと老舗のブランド、 いわゆる有名ブランドがもっと東京のファッション・ウィークに参加するようになったらいいと思っています」
ニック・ウースター「ホールセールという観点から言わせていただくと、来日するたびに繰り返し伝えてることなのですが、あえて、もう一度ここで言うと、展示会の時期がバラバラで、バイヤーが非常に買いにくい。それでは国際ビジネスに非常に不利だと思います。 だから、老舗ブランド、長年続いている(力のある)ブランドは展示会をしている。パリでやって、また東京でもやるというやり方が僕は正解だと思っています」
ブランドの海外発信強化に必要なこと。
ニック・ウースター「今言ったことが答えです。現実問題としてパリが1番なんです。だからプレスもバイヤーたちもそこにら集まるし、ブランドも必然的にパリに集まってしまう。それがいいとか悪いとかではなく、それが今の現実であると。やり方として、例えば老舗のブランドなども日本ではショーをやらず、パリに行ってしまう。パリでコレクションを発表する若手のブランドも増えてきている。でも、それでは海外だけでショーをするブランドが増えると、結局日本(ファッション・ウィーク)の魅力が上がっていかない。だから、日本でショーをして、例えばパリで展示会をするいう方法もいいなと思っています。あともう1つ、やっぱり英語、いい悪いは別として、共通語が英語になっているので、英語の情報を載せるっていうことも大事だと思います」
ニック・ウースター「ただ、今申し上げたのは、日本だけの問題ではなく、今、日本にいるから日本と言ってますけれど、これは、もうグローバルな問題です。とにかくパリが抜きんでて1番。だから、ニューヨークも、ロンドンも、ミラノも、全部同じ問題を抱えているんです。私達がこうして厳しく申し上げてるのは、日本のファッション・ウィークが大好きだから。日本のファッション・ウィークに成功してほしいので申し上げています」
今シーズン印象に残ったコレクション
ゾエ・スーエン「さっきニックさんと『よかったね』と話していたんですが、コウタグシケン(Kota Gushiken)。ショーの形が全部日本語で、英語が話されてなかったっていうことには驚きましたが、ショーの形として、既存のものとは全く違うので、そういう意味で面白かったです」
ニック・ウースター「僕は東京ファッションアワードの審査員でもあるので、半年前にコウタグシケンを初めて見ましたが、自分がいいと思って、推したブランドがこうやって頑張ってくれてるのを見るのはすごく嬉しい」
ユージーン・ラブキン「いくつかありますが、まず、ハイドサイン(HIDESIGN)が素晴らしかった。ワークウェアをあそこまで消化させてること。消化のさせ方が素晴らしい。次に、アキコアオキ。とにかく生地の扱い方、カッティングの仕方がうまい。これは全般的に日本のデザイナーに言えることで、どうどうやってその腕を上げてるんだろうと思うんですけれど、彼女は素晴らしくうまい。また、ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)は非常に洗練された大人のショーで、それだけ彼のそのビジョンが成熟されてるっていう風に私は捉えています。 そして、最後がシンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)。世界作りが非常にうまいと思いました」
海外招聘ジャーナリスト、TOKYO FASHION AWARD海外審査員プロフィール
・ユージーン・ラブキン(Eugene Rabkin)
ジャーナリスト
www.eugenerabkin.com Instagram @eugenerabkin / @stylezeitgeist
ニューヨーク在住。StyleZeitgeist誌の創刊者兼編集者であり、同名のポッドキャストも配信。New York Times、Business of Fashion、T Magazine China、Air Mail、032c、Highsnobiety、日本のThem magazineなどに寄稿。
・ゾエ・スーエン(ZOE SUEN)
フリーランスライター・コンサルタント・South China Morning Postエディター
Instagram @zosuen
香港生まれ、ロンドン在住。The Business of Fashion (BoF)、Another Magazine、South China Morning Post等にファッション、ビューティー、食の記事を寄稿。
・ニック・ウースター(Nick Wooster)
WOOSTER CONSULTING ファウンダー、クリエイティブ・ディレクター
https://www.nickwooster.com/ @nickwooster
カルバンクライン(Calvin Klein)、バーニーズニューヨーク(Barney’s New York)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)のファッションディレクターを経て、現在はさまざまなブランドのアドバイザーを務める。