2021年(第39回)毎日ファッション大賞の表彰式が10月25日、都内で行われ、トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)の小泉智貴さん、CFCL代表/クリエイティブディレクター高橋悠介さんらが出席した。Text : Shinichi Higuchi(樋口真一)写真提供:毎日新聞社(撮影 三澤威紀)
39回目を迎えた今回。大賞に選ばれたのはトモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)の小泉智貴さん。小泉さんは2019年(第37回)毎日ファッション大賞で選考委員特別賞を受賞している。小泉さんは「2011年にコスチュームデザイナーとしてキャリアをスタートして10年。日本では需要の少ない大きなドレスばかり作る、メインストリームではないキャリアは平たんなものではなく、苦しく、つらい経験もたくさんしてきました。それでもデザイナーにこだわり続けてこられたのは10代のころに体験したファッションへの感動があるからです。デザイナーを目指すきっかけとなったジョン・ガリアーノとは今年アメリカンヴォーグのプロジェクトを行うことが出来ました。東京オリンピックでは国歌斉唱の衣装を担当し、世界で1番着用してほしいと夢見ていたビョークにも衣装を着てもらうことが出来ました。そして毎日ファッション大賞を受賞することも出来、今年は願ってきた夢がすべてかなった年になりました」と挨拶。「世界中の人たちにとって辛(つら)く厳しい年に評価してもらえたことを深く受け止め、これからの活動につなげたいと思っています。私の受賞が独自の活動を模索している次の世代のデザイナーの1つの道筋になることを願っています。私は美しいものが人の心を救うと信じています。これからもマイペースで活動を続けながら、デザイナーの多様な在り方を体現していきたい」と今後の決意を述べた。
新人賞・資生堂奨励賞はCFCL代表/クリエイティブディレクター高橋悠介さん。ファッション界に貢献した人や団体に贈られる鯨岡阿美子賞は山縣良和さんが主宰する「ここのがっこう」、話題賞はアウトドアブランドの「スノーピーク」が、それぞれ受賞。
また、今回は昨年亡くなった髙田賢三さんの功績を称(たた)えファッション文化特別賞が設けられた。
高橋さんは「昨年2月に会社を創業、翌月にはコロナのパンデミックになり、今年2月には緊急事態宣言の中でブランドをローンチし、ポップアップをオープンしましたが、あっという間という感じでした。いろいろな人からコロナで大変だったのではと言われましたが、コロナ前から自分が何をしたいのかを整理しながら、ものづくりや自分のスタンスを作っていったので、コロナのタイミングで、どういう服が求められているのかをバイヤーやジャーナリストの皆さんに服や言葉でプレゼンテーションをすることが出来、このような賞をいただけたのではないかと思っています。いつもバタバタしていて感謝の言葉を忘れがちですが、改めていつもありがとうございますと言いたいです。来年からパリに発表の場を移します。バタバタや忙しさも1.5倍から2倍になると思いますし、迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします」と喜びを語った。
ここのがっこう代表の山縣さんは「今回このような賞を頂きましたが、もっともっと日本でファッションを文化として根付かせたいし、まだこれからだな、道は長いなとも感じています。ここのがっこうを立ち上げたときにセツモードセミナーのような学びの場を作れたらいいなと思ってたので、もっともっとやらなければいけないことはたくさんあると思っていますし、頑張りたいという気持ちを新たにしています」と強調。
スノーピークの高井文寛副社長は「衣、食、住、遊、働、キャンプ、自然の価値観を提案し、実現したことを評価してもらえてうれしい。これからも自然志向のライフバリューを届け、また賞をいただけるように精進していきたい」と話した。
ファッション文化特別賞は「ケンゾー タカダ(KENZO TAKADA)」共同経営者で、髙田賢三さんと長年のビジネスパートナーだった鈴木三月さんが代理に受賞。鈴木さんは「髙田賢三さんも空から、あるいは時空を超えて、この会場に来てくださって『スピーチ、がんばりなよ』と言ってくれている気がします。髙田は2019年に80歳になったときに、パリで世界中の友達を呼んでパーティーをしましたが、次の日には『今度は88歳のときに誕生日パーティーを盛大にやろうね』と目をキラキラさせながら言っていたことを思い出します。昨年の1月にはケースリー(K三)というライフスタイルの新ブランドをスタートさせました。4月に出展する予定だったミラノサローネには出られませんでしたが、髙田は病床の中でもケースリーのデザインや、『こんなのがいいな』『あんなのがいいな』と話していたと聞いています。ファッションでフランスと日本をつなげた髙田が大事にしてきたのは日本の伝統文化を世界に向けて発信することでした。そして、次の世代のデザイナーやアーティストに世界にどんどん出ていってほしいと言っていました」と挨拶。そして、「髙田賢三の功績を継承する活動をしていくことが私の使命だと思っています。最後になりますが、『髙田賢三さん、おめでとうございます」と涙ぐんだ。
また、表彰式に続いて、新人賞・資生堂奨励賞記念プレゼンテーションと、小泉さんと高橋さんによるトークセッション「なんでファッションデザイナーになったのですか?」も行われた。
プレゼンテーションで新潟の工場の映像とコレクションの動画の2部構成でコレクションを紹介した高橋さんは「コンピューターのプログラミングでほぼ全自動で作っていますが、その情景事態未来的感覚もありますし、丁寧に作っていると伝えたかった。改めてものづくりの現場のカッコよさを伝えていく必要があるとも思ってがんばりました」と説明。
トークセッションで小泉さんは「高橋さんと会うのは初めてですが、全然違うことをしているのにブランドの在り方に共通点を感じます。それは得意なことをただひたすらやり続ける、それだけをやるということ。それはこれからデザイナーを目指す人にとってヒントになると思います。サステイナブルが叫ばれる中であらゆるものを必要はない。自分はこれが得意、これを届けたいということ、ひとつ強いものがあれば逆に目立ちやすい、頭一つ抜けられると思っています」。一方、高橋さんは、小泉さんについて「自分には出来ないクリエーション。ラッフルというテクニック自体はみんな知っているけど、あれをあのボリュームでやり抜いたことがあっぱれというか。しかも、それを続けて、突き抜けることは誰にもまねできない。あれをやるとトモ コイズミに影響されたということになってしまうような状態を作ることがすごいと思う。自分もコンピューターニットをきわめて、どれだけ突き詰めていけばいいんだ、と参考になりました」などと話した。
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