リンシュウ(RYNSHU)2021/2022年秋冬コレクションのテーマはドレスコード。1986年秋冬東京コレクションでデビューから35周年を迎えた山地正倫周はドレスコードをテーマに、オートクチュールコレクションのように美しいレディースと、山地らしくありながら次の時代を追求したメンズの両方を発表した。
コレクションは無駄をそぎ落とし、女性の体の美しさそのものをデザインにしたような、次の展開を感じさせるレディースのブラックドレスでスタート。繊細な花刺しゅうとオフショルダーによる肩も女性らしさと曲線を強調する。メンズスーツの肩についた花刺しゅうとレディースジャケットの立体的な袖付けの対比。永遠の黒と未来的な光と黒、暗闇や夜空に舞い散る桜吹雪を強調する黒。家紋のように背中に花を付けたジャケット。ふと、4半世紀以上前に見た、夕暮れの風景や雲の流れのようなグラデーションが美しいジャケットや、かつてパリのホテル・クリヨンのショーを思い出してしまうような山地ならではのデザイン、艶コーティングやグラデーション、ジャガード、マイクロスパンコールなどの実験的でありながら遊び心のある素材を駆使したデザイン。永遠の黒と自然から生まれたようなグラフィックと素材、男と女、その間、クラシックとモダン、二極化。サングラスとネクタイ、ハードなブーツやシューズ。
サイズネームをミルフィーユ状にコラージュするなど、サステナブルな素材を使い、今とコロナ後に求められる女性らしいシルエットや繊細さといったトレンド、時代の空気などを取り入れながら、一目で誰のものなのかわかるデザインとスタイル。ブランド名や名前は変わっても、日本刀のようにすべての無駄をそぎ落としながら、着物のようにシンプルかつ、遊びと超絶なまでの技巧も追求した服作りと、黒と光、自然のグラフィックと近未来の要素。自分が着たいもの、美意識をベースにしたデザイン、性差のないデザインなどは、東京で発表していた当時やパリメンズコレクションに進出した1990年代とは違うのに、そのスタイルと本質は一目で彼の服とわかる。ブランドとは、スタイルとは何かを感じさせるコレクションだ。
「コロナでパリメンズコレクションに参加したくてもできない中で、自分にとって35周年、名前を変えて11年という節目の時に、何があってもファッションを楽しみたい、原点に帰ってファッションは生活を楽しむためのものだと考えました。ジェンダーレスではなく、メンズの集大成を作りたかったし、これからも新しいクリエーションを作り、大胆に変わっていきたい」という山地正倫周。
1992年にブランド名をマサトモに変え、パリメンズコレクションに進出。その後も節目の年に、武士や出世魚のように自身の名前を変えたり、メンズをベースにしたレディースを発表したり、映画の監督、脚本、衣装に挑戦したりするなど、常ら新たな挑戦を続けてきた山地。自分の着たい服、次の時代がどうなるのか追求し新しい男性像を生み出すというアプローチに女性ならではのデザインという新しい挑戦がプラスされた今回。次はどんな発展を見せてくれるのだろうか。写真©zoomupcollection