ミュージカル「イヴ・サンローラン」制作発表会見が10月30日、フランス大使館大使公邸で行われ、ダブルキャストでサンローラン役を演じる東山義久さんと海宝直人さんや、安寿ミラさんなどが登場した。また、公演のテーマ曲も披露された。
21歳という若さでクリスチャン・ディオールの後継者として主任デザイナーに抜擢され、2002年に自身のブランド、イヴ・サンローランのデザイナーを引退するまで、40年間世界のトップデザイナーとしてファッション界をリード。2008年に逝去して以降もファッション界やトレンドに影響を与え続けているサンローラン。今回のミュージカルは20世紀を代表する世界的デザイナーの一人であるサンローランの素顔に焦点を当て、究極の美を求めるクリエーターとしての葛藤と数奇でドラマチックな半生を描くもの。サンローランは書籍、映画などで取り上げられてきたが、ミュージカルとなるのは初めて。
東山さんは「自分がサンローランを演じると聞いたときには『誰が』と聞き直しました。このために髪の毛をバッサリ切りました。演出の荻田さんからは『独特の存在感を消してくれ』と言われています。繊細なイメージを作っていきたい」。
海宝さんは「すごくわくわくしています。パリに行く機会があり、サンローランの美術館も見ましたが、そこで見た衣装や仕事場を再現したエリアなどから自分が感じたものや、パリの空気感を膨らませながら作っていければ」と話した。
シャネルとサンローランの母の二役を勤める安寿さんは「30年近くフランスに行っているぐらいフランスが好きなので、シャネル役をやらせてもらえることは個人的にもとてもうれしい。今までもいろいろ調べてきましたが、シャネルの資料はたくさんあるので、これからも更に調べて見聞を広げ、演じていきたい。サンローランのお母様のことはほとんど知られていないので、自分が台本を読んだイメージを膨らませていけると思っています」と語った。
ピエール・ベルジュ役の上原理生さんは「子供の頃からサンローランのロゴは印象的でしたが、高級なブランドで一生関わることはないと思っていました。自分のやっているフィールドで関わらせていただけるのは不思議な感じですが、これを機にサンローランの美の世界に潜り込んで堪能したい」。ピエール・ベルジュとクリスチャン・ディオールなどを演じる大山真志さんは「映画やドキュメンタリーを見て感じたのは、栄光を手にしたけど、すごく繊細で孤独な人だろうということ。そして、それを支えるベルジュや周りの人たちがいた。それが今回のミュージカルではどうなるんだろうと思っています」とコメント。ディオール役などを務める川原一馬さんは「サンローランという人は生きることイコール、デザインすることであり、それだけに命を燃やしてきた人だと思う。僕たちの世代にとってサンローランはハイブランドというイメージしかありませんが、このミュージカルを通して、サンローランという人とブランドをもっと知っていきたい」などと話した。
また、作・演出の荻田浩一さんは「サンローランは最も歴史的なデザイナーであると同時にプレタポルテを作り歴史を変えたデザイナーですが、彼の功績は第二次大戦後のヨーロッパの歴史とも大きく関わっています。アルジェリア独立戦争や五月革命など、当時の文化の流れから生まれたのがサンローランであり、サンローラン自身も歴史を作ったというような作品を作りたい。サンローランはドラッグやアルコールなどネガティブな部分もオープンにしていました。あまりにも繊細すぎる心とあふれすぎる才能から、心身をすり減らして作品を作ってきた彼の孤独と苦闘が一番大きなモチーフになってくると思います」。
音楽を手がける斉藤恒芳さんは「もう半分ぐらいできていますが、こんなに筆が進むのは初めて。最近はやっているジュークボックスミュージカルやカタログミュージカルのような新しめのミュージカル、1曲1曲が歌謡曲のような雰囲気にして、今の感じとサンローランの生きていた60年代の音楽を混ぜて、楽しめるものにしたい」としている。
衣装を担当する朝月真次郎さんは「サンローランの名に恥じない、私が死ぬ前の最後の作品というぐらいの気持ちでやらせていただきたい」と意気込みを語るとともに、「サンローランは既製服を初めて世に出したデザイナー。シャネルよりは後ですが、デザイナーがみんなオートクチュールで好きなお客様に高く売る中で、トレンチコートやサファリルックなどを初めて既製服として発売された勇気あるデザイナーであり、既製服の神様」と強調した。
また、会見にはローラン・ピック駐日フランス大使も出席。「サンローランはフランス人にとってエレガンスそのものを象徴する人であり、美を追究する人。ミュージカルになるのは初めてなので私も楽しみにしている。このミュージカルを見ることでフランスのライフスタイルのあり方を感じて欲しいし、ミュージカルファンや宝塚ファンはもちろん、演劇の好きな人やファッションの好きな人にも楽しんでもらいたい」と語った。
東京公演は来年2019年2月15日から3月3日、よみうり大手町ホールで、兵庫公演は3月26日、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールで、それぞれ上演される。
Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)