山本耀司がデザインするヨウジヤマモト オム(Yohji Yamamoto HOMME)2018年春夏コレクションでは、山本耀司のメッセージと女性の姿が注目を集めた。
東京の展示会でも、4Kのコレクション映像はもちろん、ラックにつるされた服からも、「オールドテロリスト」「創作は人を救うのか」「絶望国の幸福な若者たち」という言葉や、鏡文字で「仰向(あおむ)けの言葉」「下流老人」と書かれたジャケットなど、その力強いメッセージが伝わってくる。鏡文字は独白や秘密を隠すためなのか、それとも鏡に映ったの姿をSNSで発信する時代に対応するためだろうか。そして、チュニックやコート、シャツからは女性の顔が暗闇の中でろうそくを付けて絵を見るかのように浮かび上がってきた。
今回のコレクションは柄があってパターンがあるという発想で作られたもの。メッセージや絵、柄を見せるために、細部にまで気を配って作ったという。
柄を服に乗せるアプローチは、絵とは違う服だからこそできる柄を描いたイヴ・サンローランのモンドリアンルックや、前シーズンの2017/2018年秋冬のウィメンズコレクションで見せたタッキングやギャザー、プリーツを施した布を女性の身体に乗せるという新しいアプローチへの挑戦なども思い出させた。
ここ数シーズン、アーティストとコラボレーションし、昨年12月には東京・新宿の東京オペラシティで、「画と機 Painting and Weaving Opportunity 山本耀司 朝倉優佳」展を開催。「世界が、特に日本がヤバい状態を何とかできるのは、指先の力でありセンス、技術、そしてソフトパワー。つまりアートしかない。ヤバい状況の中でファッションだけをやっていては駄目だという思いにかられました。若い人に、おまえたちも立てよと言いたかった」と話していた山本。
今回のコレクションは、まるでTwitterに書き殴ったかのような生の言葉と女性、柄があってパターンがあるという新しいアプローチによってメッセージとアートとしての服を加速。さらに、SNS映えする服を求める今の時代と若者にも対応する完璧なアイテムまで発表することで、あのときの山本の言葉と思いをコレクションで実現したものだったのかもしれない。
Text:Shinichi Higuchi(樋口真一)
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ヨウジヤマモト オム2018年春夏コレクション(Yohji Yamamoto HOMME)1
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