まとふ(matohu)が増上寺で2017/2018年秋冬コレクションを開催した。日本の眼・15となる今シーズンのテーマは「いき」。ブランド10年を経て、町人文化から生まれた江戸の「いき」とその生き方にたどり着いた。
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霧と闇の中からタイムスリップしてきたように現れるモデルたち。煙の中を進むオーバーサイズのコートやジャケット。ライトが当たると縞(しま)や格子、着物を連想させる様々な柄が浮かび上がる。ぜい沢を禁止する幕府に対抗して作られたような派手な裏地。縞(しま)はそれが手で作られたことを示すようにランダムで、ゆらぎを描いたようにも見える。着物のような直線や極端なオーバーサイズは使わず、自然な中に女性の体の曲線の美しさを描き出すニットやドレスを加えている。だが、柄などを見る限りこれまでとは違いストレートな表現が多い。黒の衝撃以前、70年代から80年代前半の日本人デザイナーの作品によく見られた柄を思い出させた。
コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)やドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)までが、ゼロからスタートするのではなく象徴的なデザインやこれまで使った素材を再構築し、スタッフユニフォームなど80年代や90年代の復刻が初めて見る新鮮なデザインとなっている今。ストレートで大道な日本は、まとふが見せた集大成であり次のステップに向けてタブーを破ろうとしているよう。フィナーレで再びモデルたちが霧と闇、光の中に消えていく様子は現代にタイムスリップしてきた「いき」が江戸時代に帰っていくようだった。
本来は夜の増上寺と東京タワーが見えるはずだったというが、もし、雨が降らなければコレクションの印象は全く変わっていたのかもしれない(もしかすると、今から30年前にイッセイ ミヤケが代々木のテントと外の壁を取り去ったように、ショーの世界と街の境界線も時代の壁もなくしたものになっていたのか)。終わってしまったことに「もし、~だったら」というのは意味がないが、もし、まとふがコレクションをしなかったら、どうなったのだろう。ここ数年で多くのブランドが東京のファッション・ウィークから姿を消す中で、次もまとふのコレクションを見たいと思わせるコレクションだった。
Text & Photo:Shinichi Higuchi / Chief Editor(樋口真一)
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