
写真東京都産業労働局提供
4部門で知事賞、一般投票で特別選抜賞
東京都が主催する若手デザイナー育成のためのファッションコンクール「ネクスト ファッション デザイナー オブ トウキョウ(Next Fashion Designer of Tokyo、NFDT)」と「サステナブル ファッション デザイン アワード(Sustainable Fashion Design Award、SFDA)」の最終審査会が3月29日、東京都港区の虎ノ門ヒルズで開かれた。約2,000件の応募から選ばれた35組がファッションショー形式で作品を披露し、審査員による審査と一般投票を経て、計16組の受賞者が決まった。
コンクールはNFDTとSFDAの二つで構成され、それぞれ二部門、計四部門で審査が行われた。NFDTは学生・生徒を対象とした若手デザイナー育成コンクール、SFDAはサステナブルな発想を取り入れた作品を募るアマチュアデザイナー向けコンクールだ。各部門では「東京都知事賞」として大賞1組、優秀賞2組を選出し、一般投票により「特別選抜賞」1組も選ばれた。

NFDTフリー部門の大賞は、大西洋太朗さん(エスモード・東京校)の「Scenes Inside the Train 電車内の光景。」。満員電車という都市生活の日常的な場面に着目し、そこで生じるネガティブなジェスチャーをシンメトリーなガーメントの構造として表現した。フローティング・パースペクティブという概念のもと、ネガティブな要素をファッションの文脈へ転換することを試みた。大西さんは受賞にあたり、「この1年で、たくさんの人と出会い、そして多くの人々に支えられました。今回の受賞を機に、もっとたくさんの素敵な方々と出会い、さらに多くの方に応援し、支えていただけるような人材になりたい」と話した。

NFDTインクルーシブデザイン部門の大賞は、マックファーレン七海さん(文化服装学院)の「Unbalanced beauty」。先天性四肢障害を持つ本人が、自らの身体的特徴を服全体に取り入れ、赤いアウトラインで強調することで、障害を隠すのではなく個性として表現した。手が不自由でも着脱しやすい設計も施した。マックファーレンさんは「私が伝えたかったメッセージを、皆様に伝えることができ、大変嬉しく思っています」と述べた。

SFDAウェア部門の大賞は、片柳由菜さん(東京デザインプレックス研究所)の「シュリンク」。着物のように生地のロスが出にくい長方形のパターンを採用し、袋縫いした二つ折りのテープを組み合わせた構成で、従来の和服にはない立体感と伸縮性を実現した。テープはミシンで自動加工が可能で、生産性にも配慮した。解体して新たなアイテムへ転換できる点も特徴だ。片柳さんは受賞後、「服作りは初めてでした。自分の表現したいことをぶつけてみて、評価されたことはとても自信になりました。服作りが楽しいと感じました」と話した。

SFDAファッショングッズ部門の大賞は、八木香菜子さん(多摩美術大学)の「甲冑リュック」。日本の甲冑が持つ「守る」と「装飾する」という二つの機能に着目し、その構造と造形美を現代のバッグとして再解釈した。着物生地などを素材に用い、日本の美意識を現代のファッションプロダクトとして提案した。八木さんは「私のデザインが審査員の方々に共感していただけて、こんなに嬉しいことはありません」と喜びを語った。
優秀賞、特別選抜賞も決まる
優秀賞は、NFDTフリー部門で高橋紅梅さん(杉野服飾大学)の「Swipe up」と安田日航太朗さん(エスモード・東京校)の「存在の輪郭線」が受賞した。
NFDTインクルーシブデザイン部門では、井上楓陽さん(東京モード学園)の「INVERSA」と若林唯さん(文化服装学院)の「コルセット×ドレス」が選ばれた。
SFDAウェア部門では、坂野瀬奈さん(一般応募)の「錦織りなす猩と涅」と西崎有那さん(文化服装学院)の「REGENERATE」が受賞した。
SFDAファッショングッズ部門では、東海林理見子さん(一般応募)の「MARUDE 草履」と中田南さん(慶應義塾大学)の「輪廻昇華」が選ばれた。
一般投票による特別選抜賞は、NFDTフリー部門が高橋生樹さん(文化学園大学)の「オーバーサイズの再解釈」、NFDTインクルーシブデザイン部門が若林さんの「コルセット×ドレス」、SFDAウェア部門が花野井瑠美さん(一般応募)の「『面裏-OMOTEURA』:裂けた面に宿るもの」、SFDAファッショングッズ部門が東海林さんの「MARUDE 草履」となった。
審査員が講評、小池知事も出席
審査には、東京藝術大学長の日比野克彦さんを審査員長に、森永邦彦さん、篠原ともえさん、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン合同会社社長のノルベール・ルレさんら計15人が参加した。うち1人は当日欠席し、事前審査を行った。小池百合子東京都知事も出席し、受賞者に祝辞を述べた。

審査員長の日比野さんは総評で、「地下鉄の中でのストレスを形にする、あるいは指先が出ているデザインなど、日常生活の中から洋服の形態が生まれてくる。パターンといった既存の概念ではなく、今ならではの習慣化している日常の様子が発想の源になっているのが、今回の大きな特徴だった」と振り返った。
インクルーシブデザイン部門については、「個性をハンディとしてではなく『表現』として捉え直しているものや、医療関係の仕事で見つけたものをファッションに取り入れているものもあった。それぞれの背景がファッションの幅を広げてくれている」と評価した。
副審査員長の原由美子さんは、「これまでのファッションコンクールは『美しく完成度が高い立派なもの』というイメージが強く、『いつ誰がどこで着るのか』と感じる作品も多かった。しかし今回は、身近なもの、私たちが毎日着る衣服とのつながりの中で作品が生まれており、時代の変化を痛感した」と語った。

SFDAの審査員長を務めたルレさんは、「単に技術が上がっているだけでなく、全体の雰囲気や熱量がアップしているのを感じる」と述べたうえで、「自分の伝えたいメッセージも重要だが、ファッションは商品として売らなければならない。ビジネスの視点を忘れないでほしい」と呼びかけた。
篠原さんは、「参加者の皆様が日本の歴史、そして東京という都市の文化をよく調べて参加されているという印象だった。一般参加の方も受賞されたことが嬉しい」と話した。

小池知事は祝辞で、「多様な個性は、発想やアイデアに豊かさをもたらすものです。今日の経験も悔しさも、次の創作への大きな力になると思います。東京は、世界に向けたファッションの発信地であり、人材を育てる大切な場所です。これからも、ファッションや色、素材にメッセージを込め、いろいろな人がチャレンジし、世界へ羽ばたいてくれることを心から願っています」と述べた。
賞金に加え、パリでの発表支援も
受賞者には、賞金として大賞100万円、優秀賞と特別選抜賞に各50万円が贈られる。このほか、都内商業施設での巡回展示、創業・ブランド立ち上げ支援、パリ・ファッションウィーク期間中の作品発表支援も提供される。
一次審査通過者には、世界で活躍するデザイナーや業界関係者によるワークショップを実施する。二次審査通過者には、マーチャンダイザーらによる商品化体験やプロモーション体験の機会も設けている。
応募総数は約2,000件、35組が最終審査会へ
2022年に創設されたNFDTとSFDAは、今回で4回目を迎えた。両コンクール4部門への応募総数は約2,000件に達した。
最終審査会には、二次審査を通過した24組と一般投票で選ばれた11組の計35組が出場した。NFDTフリー部門では1組が辞退した。
NFDTの応募資格は都内在住または在学中の学生・生徒。部門はフリー部門とインクルーシブデザイン部門。SFDAの応募資格は都内在住または通勤・通学しているアマチュアデザイナーで、ウェア部門とファッショングッズ部門を設ける。いずれもグループ申請と複数作品の応募が可能。審査会の模様はYouTubeで公開されている。
東京都は、東京をパリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンと並ぶファッションの拠点とすることを目標に、ファッション・アパレル産業の振興を進めている。NFDTとSFDAはその一環として実施している。





