「KIMONOIST(キモノイスト)2025」長濱ねる、大黒摩季、高橋克典ら6人が受賞 未来の着物を発信

  • URLをコピーしました!
Pocket

表参道で開催「KIMONOIST 2025」、未来の着物を象徴する著名人を表彰

未来のキモノを発信する人、新しく進化するこれからのキモノを着てほしい人に贈られる「KIMONOIST(キモノイスト)2025」の授賞式が10月7日、東京・表参道の「ザ・ストリングス表参道」で開かれた。5回目となる今年は、長濱ねるさん(俳優・エッセイスト)、枝並千花さん(バイオリニスト)、唐田えりかさん(俳優)、大黒摩季さん(シンガー・ソングライター)、仁科亜季子さん(俳優)、高橋克典さん(俳優)の6人が受賞した。会場に和楽器の生演奏が流れる中、それぞれの個性を映すコーディネートで登場し、伝統とモードを融合した「未来の着物」の魅力を発信した。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

「KIMONOIST」アワード――伝統とモードをつなぐ未来の着物

「KIMONOIST(キモノイスト)」アワードは、時代とともに変わる美意識や価値観の中で、日本の民族衣装である着物を大人のたしなみとして愛されるファッション文化に育て、サステナブルかつグローバルに定着させることを目指している。日本の伝統産業や職人に光を当て、技術の継承を未来につなぐ取り組みとして2021年に発足。毎年、着物を最新のスタイルでありモードとして発信する役割を担う「キモノイスト」を著名人の中から選び、表彰している。5年目を迎えた今回は、文化庁の協力を得ての初めての開催となった。

今回選ばれたのは、長濱ねるさん、枝並千花さん、唐田えりかさん、大黒摩季さん、仁科亜季子さん、高橋克典さん。多彩な分野で活躍する6人が、琴、琵琶、尺八といった和楽器の音色が響く中、ランウェイを歩き、それぞれの着物姿を披露した。6人のトータルスタイルはすべてデザイナーの斉藤上太郎さんが監修し、各受賞者のイメージに合わせて、着物、帯、帯締め、帯揚げ、足袋、草履まで一式を選んだ。

元欅坂46メンバーで、俳優やコメンテーター、エッセイストとして活躍する長濱ねるさんは、自然体の雰囲気をまとい、豪華さよりも自分らしさを重視した着物姿が評価された。長濱さんは大人の赤を基調とした花柄の着物に、赤い木立柄の帯を合わせた都会的なモードスタイルで登場。小物と半襟でアクセントを効かせ、令和らしい新しい着こなしを見せた。

長濱さんは「受賞を聞いたときは驚きましたが、光栄に思いました。着物には背筋が伸び、所作まで美しくなる力があります」とコメント。「普段選ばないシックな赤が、自分の背中を押してくれるように感じました。斉藤上太郎先生から『ワンピースのように歩いてほしい』と声をかけていただき、着物をより身近に感じました。次世代にその魅力を伝えていきたい」と語った。

枝並千花さんは、音楽を「気持ちを乗せて伝える行為」と捉え、その演奏が聴く人のエネルギーに変わる点が評価された。「着物スタイル」に挑戦してほしいという点も選考理由となった。

当日は、「氷割れ」文様の着物と帯で全身をモノクロームに統一。小物、半襟、長襦袢まで墨の濃淡でまとめた姿で登場した。枝並さんは「初めてこの着物を拝見したときに浮かんだ言葉は品格と情熱。クラシック音楽も着物も伝統を守り伝えるもの。いつかこの着物でステージに立ちたい。ジャンルを超えて音楽や伝統、芸術を伝え続けていきたい」と話した。

唐田えりかさんは、作品ごとに鮮烈な印象を残す稀有な表現者として評価され、自由さと芯の強さ、挑戦心を次代の着物に重ね合わせたいとの理由で選ばれた。

授賞式では、ベージュ地に墨色のフラワーモチーフをあしらったワンピース風の着物に、甘さを抑えたモチーフの帯を合わせ、イエローの小物と光沢のあるボーダーの半襟でランウェイを歩いた。唐田さんは「色味やシックな雰囲気が好きで、個性として楽しめる嬉しさを体感しました。着物の佇まいに見合う自分になれるよう努力したい」と語り、「日常生活を充実させることを大切にしています。サスペンス作品にも挑戦したい」と今後の意欲を示した。

大黒摩季さんは、数々のヒット曲を持つアーティストとして、力強い歌声と生き方を重ね合わせたクールな着物姿が観客に強い印象を与え、今回の受賞につながった。

大黒さんのために選ばれたのは、大島紬に「竜巻絞り」を施した貴重な一着。グリーンパープルとピンクを組み合わせた着物に、欧州文様をアレンジしたバーガンディの帯を合わせ、“粋でかわいい”スタイルにまとめた。

大黒さんは「斉藤上太郎さんとは同世代で友人。邦楽のライブでご一緒した際に、着物を着せていただいたことがあります。ミュージシャンやクリエイターは何もないところから音を積み上げていきますが、着物も繊細な糸から始まる点で共通している」と語り、音楽と着物の共鳴を強調した。

仁科亜季子さんは、歌舞伎俳優の家に生まれ、気品ある佇まいと、闘病を乗り越えて前向きに生きる姿勢が「気楽に」という言葉と重なり、大人の魅力と着物の美しさを体現したことが受賞の理由となった。

幼少期から和装に親しんだ仁科さんは、当初「自分には無理」と感じた新機軸の柄や配色に挑戦。斉藤さんの提案で、大胆な花モチーフの着物にツル花模様の帯を重ねたスタイルに、黒の小物を組み合わせた。グレーの模様入り八掛、レースの重ね足袋、ラメやラインストーンをあしらった襟を合わせ、「72歳にして初めての経験」と笑顔を見せた。

仁科さんは「着物は決まりが多く、ハードルが高い印象がありましたが、この着物は現代アートとのコラボレーションのような新しいイメージ。若い人にも、年齢を重ねた世代にも冒険して楽しんでほしい。新しい着物姿で銀座や表参道を歩いていただけたら」と呼びかけた。

高橋克典さんは、ドラマや映画で幅広い役柄を演じ、世代を超えて支持を集める存在であり、「新しい古典」を思わせる着物姿が現代の大人のスタイルを示すものとして評価された。

当日は、破れや太さの変化を取り入れた大胆で繊細な縞格子の織が目を引く着物に、スプリングコートのような一重仕立てでポケット付きの軽い羽織を合わせ、帯揚げをチーフ代わりに用いたスタイルで登場。高橋さんは「大岡越前を演じる中で着物と向き合う機会が増え、着物の奥深さや職人の技への尊敬の念を持つようになりました。生活の中に着物が似合う場面が少ないことに気づきました」と語った。

さらに「パーティーや書道の稽古、相撲観戦など、和の世界に触れる機会が少しずつ増えています。日常では、あまり構えずに着た方がいいのではないか」と、自然体の着物の楽しみ方を示した。

文化庁協力で意義高まる「KIMONOIST」 若い世代や海外にも発信

「KIMONOIST」は、着物が似合う人物を選ぶだけでなく、時代の空気に即した「未来の着物」を提示するアワードである。伝統産業や職人技術の継承を広く社会に発信し、新たな市場創出の一端を担う役割を持つ。今年は文化庁の協力を得て公的な後押しが加わり、アワードとしての意義が一層高まった。受賞者の発信力を通じ、若い世代や海外に向けても和装文化の魅力が広がることが期待されている。

KIMONOIST(キモノイスト)2025長濱ねるさん

「受賞のお話を聞いたときは、本当に驚きました。同時に光栄にも思いました。お仕事で着物を着る機会がありますが、袖を通すと背筋が伸び、所作まで美しくなる力があると感じています。

普段自分が選ぶ色よりもぐっと大人っぽい、シックな暗めの赤で、自分の背中を押してくれるようなお着物だと思いました。レースがあしらわれ、足袋にもレースが使われていて、普段から親しみやすいと感じました。この着物を着た自分を見て、いつもより大人っぽい雰囲気になったと思います。

今日この着物を着させていただき、斉藤上太郎先生から『ワンピースのように歩いてほしい』との言葉をいただきました。着物には格式が高いイメージがありましたが、実は普段着のように親しみやすいものだと感じました。

自分の未来に向けて、次の世代に着物の良さを伝えていきたいと思います」

KIMONOIST(キモノイスト)2025枝並千花さん

「本日はこのような素晴らしい賞をいただき、本当に光栄に思います。初めてこの着物を拝見したときに浮かんだ言葉は『品格』と『情熱』でした。まさに私がステージに立つときに大切にしているキーワードで、いつかこの着物と共にステージに立ちたいと思っています。

私は4歳からバイオリンを始め、演奏活動を続けてきました。クラシック音楽という伝統芸術を信念を持って守り伝えていくことが自分の使命だと思っています。着物の世界もまた、長い年月をかけて受け継がれてきた大切な文化です。その信念を持ち続けるために必要なエネルギーのようなものを、この着物に袖を通して強く感じました。

これからもジャンルを超えて、音楽や伝統、そして芸術を伝え続けていきたいと思います」

KIMONOIST(キモノイスト)2025唐田えりかさん

「着物を着る機会は、プライベートではあまりありません。作品で着させていただくときくらいです。今日の着物は、色味やシックな雰囲気がとても好みで、その中に白や黄色といった華やかな部分もあり、本当に着物を自分の個性として楽しめる嬉しさを初めて体感しました。

普段から着物を着ている方を拝見すると、凛としていて品があり、かっこいいと感じます。そういう姿に見合う自分になれるよう努力したいと思います。

役づくりの準備はもちろん大切ですが、それ以上に、今は仕事以外の時間を大事にしています。日常の積み重ねが自然とお芝居に反映されると思うので、いかに生活を充実させて過ごすかを意識しています。

挑戦したい役柄は幅広くありますが、個人的にサスペンス作品が好きなので、いつかそうした役に挑戦してみたいと思っています」

KIMONOIST(キモノイスト)2025大黒摩季さん

「斉藤上太郎さんとは同い年で、友人でもあり、お世話になっていて、とても信頼している方です。

サングラスをかけたのは、なんとなく恥ずかしかったからです。歌わずにただ歩くというのは、なかなかない経験でした。

着物スタイルは今回が初めてではなく、和太鼓を習っていて大太鼓を三基叩いたこともあります。その和太鼓チームと邦楽のライブをご一緒した際、斉藤さんに着物を着せていただきました。そのときは袴を合わせたり、アバンギャルドなお着物をデザインしていただいたりと、以前からお世話になっています。ロックの世界は“とんがりたい”と思うのですが、その域を超える着物を手掛けてくださいました。今回は髪色にまで合わせてくださり、大島紬に竜巻絞りを施した贅沢な一着で、帯も特別なものでした。

さらに、炎をイメージした帯も作ってくださり、『GO GO RED TOUR』『GO GO BLACK TOUR』両方の要素が取り入れられていました。本当にありがたいです。ノーベル賞を受賞された坂口さんの『座右の銘は四字熟語ではなく、一つ一つ積み上げていくこと』という言葉が印象に残っています。ミュージシャンやクリエイターも、何もないところから音を積み上げていきますし、着物も繊細な糸から始まる点で共通しています。

その繊細さやデリカシー、そしてアバンギャルドさの振れ幅を持つ斉藤上太郎さんは、本当にすごい方だと思います」

KIMONOIST(キモノイスト)2025仁科亜季子さん

「育った環境から、4歳の頃から毎週のように、ほとんど毎日のように着物を着て過ごしてきました。最初に写真を拝見したときは『これは私には無理ではないかしら』と思うような柄や模様があり、斉藤上太郎さんのもとへ銀座シックスまで伺い、『無理です』と直訴までしました。ところが斉藤さんに『このように着ていただけるんですよ』と説明いただいたときは、本当に目から鱗でした。

自分では考えもつかないような素晴らしいコーディネート、新しい着物スタイルに出会うことができ、72歳にして初めての経験をさせていただきました。うれしくて楽しくて、今日は朝から胸が高鳴っていました。私の育った時代の着物は、色彩や季節、模様などに応じて『この時期にはこれ』『この式にはこれ』と決まりが多く、正直なところハードルが高く、とっつきにくい印象がありました。

しかし、斉藤さんの着物はまさに現代アートとのコラボレーションのような新しいイメージです。たとえばこの着物なら、私は無地の八掛を選んでしまうと思いますが、斉藤さんはグレーの模様入り八掛を合わせてくださいました。足袋もレースを二重に履くスタイルで、襟にはラメやラインストーンをあしらってくださり、本当に素晴らしいと感じました。

だからこそ若い世代にも、そして私のように年齢を重ねた人にも、もっと冒険をしてほしいと思います。新しい着物姿で銀座や表参道を颯爽と歩いていただけたらうれしいですね」

KIMONOIST(キモノイスト)2025高橋克典さん

「以前から時代劇に出演する機会があり、昨年からは『大岡越前』の四代目を演じるようになって、ようやく少し着物との付き合いができるようになりました。普段は江戸時代の雰囲気の着物ばかりを着ていますので、こうした新しい“古典”という着物を着るのは初めてです。最初は謎の言葉かと思いましたが、モダンな着物に触れてとても新鮮に感じました。羽織も非常に軽く、ポケットが付いていて驚きました。普段は役で殿様のような雰囲気ばかりですが、こういうスタイルだと逆に姿勢や歩き方も少し崩して着たくなりますね。

私が若い頃、10代や20代のころは国全体がアメリカかぶれで、Tシャツなどカジュアルなファッションばかりでした。だからこそ、この年齢になって着物の奥深さや職人の技に対する尊敬の気持ちを持てるようになったと思います。知識はあまりありませんが、その素晴らしさを感じ取れるようになりました。

一方で、自分の生活圏に着物が似合う場がなかなかないことにも気づきました。ただ、パーティーのような場や、最近始めた書道の稽古、相撲観戦など、和の世界に触れる機会が少しずつ増えています。書の師匠の展覧会に伺ったり、応援している力士を見に行ったりする中で、自然と和の世界に囲まれると心地よさを感じます。そうした時間が自分に良い影響を与えているように思います。生活の中では、あまり構えずに着た方がいいのではないかと感じています」

「KIMONOIST(キモノイスト)2025」授賞式

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!