
青山商事は、「ザ・スーツカンパニー(THE SUIT COMPANY)」を全面的にリブランディングし、2025年9月から「スーツスクエア(SUIT SQUARE)」として始動した。9月18日には東京・青山のAOYAMA GRAND HALLで「SUIT SQUARE アンバサダー就任&新CM発表会」を開催。遠藤泰三社長は「本日がスーツスクエアとしての本格的な船出」とした上で、新たなブランド戦略を発表するとともに、元乃木坂46のメンバーで、俳優やモデルとして活躍している白石麻衣さんをアンバサダーに迎え、新シリーズ「CHANTOWA(ちゃんとは)」を初披露した。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

OMO(店舗とECの融合)とDX(デジタル変革)を柱に新体制始動
同社は2025年8月末をもって屋号を完全に変更し、全国の全店舗をスーツスクエアに統一した。遠藤泰三社長は会見で「物価上昇や人口減少、働き方の変化など、ビジネス環境は急速に変わっている。OMO(店舗とECの融合)推進、DX(デジタル変革)推進、人的資本経営の3本柱を軸に、新しいビジネスモデルを築いていきたい」と語った。
コロナ禍を契機に進んだスーツ需要の減少を受け、同社は23年に複数ブランドを集約し、銀座にOMO型店舗を開業。リアルとECを融合させた「デジラボ」を導入し、従来の店舗を超える体験を提供してきた。今回のリブランディングは、この取り組みを全面展開するものとなる。

レディース売上比率25%から35%へ、新シリーズ「CHANTOWA」発表
会見で最も注目を集めたのが、レディース領域の強化だ。現在25%程度の売上比率を、短期的に35%まで引き上げる目標を掲げ、その象徴として新シリーズ「CHANTOWA」を立ち上げた。
「CHANTOWA」はレディースブランド「ホワイト(WHITE)」から派生したラインで、「カジュアルでも、ちゃんとはしていたい」女性をターゲットとする。ジャケットを軸に羽織りやレイヤードしやすい軽量アイテムを中心に構成し、“きちんと見える”スタイルを実現。働く女性の新しい選択肢となることを目指す。
岡本博マーケティング部長は「20年以上ビジネスウェアを扱ってきた知識と経験を生かし、既存顧客だけでなく新しい層にも提案できるアイテムを揃えた」と説明した。

白石麻衣さんが新アンバサダーに就任、新CMでブランドの新ビジョンを体現
ブランドの顔には白石麻衣さんを起用。新CMでは「ちゃんとしたいんじゃなくて、ちゃんとはしていたいだけ」というコピーを掲げ、オフィス空間で自然体のポーズを取る白石さんが登場する。しっかり感と抜け感を両立させた演出で、スーツスクエアが掲げる新しい仕事服のイメージを表現した。
白石さんは「アンバサダーに就任できてとても嬉しいです。普段はカジュアルな服装が多いのですが、ジャケットやパンツを着ると背筋が伸びて気持ちが引き締まります。その感覚を大事にしながら、このブランドをPRしていきたい」と語り、積極的な活動への意欲を示した。
メンズ戦略:2026年春に新ブランド「FLAT」展開へ、通勤カジュアル化に対応
メンズでは、通勤カジュアル化の進行を見据え、2026年春に新ブランド「フラット(FLAT)」をスタートする計画を明らかにした。ブランド名には「ビジネスとカジュアルの境界をフラットにする」という意味を込め、Tシャツやニット、軽アウターを中心に構成する。販売はECを軸とし、商業施設内のカジュアル競合との差別化と新規層の獲得を狙う。
「SIS」「GOBY」がECで好調、楽天出店とバーチャル試着で販売拡大
24年度にデビューした「シス(SIS)」と「グービー(GOOVI)」も順調に推移している。両ブランドはEC購入比率が3割を超え、オンライン販売の成長をけん引してきた。今後は楽天ファッションモールへの出店を予定しており、販売チャネルをさらに拡大する。
また、スマートフォンで利用できるバーチャル試着サービスも導入。まずはシスのアイテムで運用を開始し、今後対象商品を広げていく方針だ。
OMO推進の要、デジラボ全店導入とスタッフスナップ活用で購買体験を進化
スーツスクエアは全店に「デジラボ」を導入し、店舗とECを連携させたOMO施策を展開している。店舗での試着体験を起点にEC購入へつなげる仕組みを強化し、スタッフスナップを活用したコーディネート提案も好調だ。岡本部長は「軽量アイテムの開発やSNS発信を通じ、店舗とECの両方で快適な購買体験を提供する」と説明した。
ECではインナーやニットなど軽衣料の売上比率が高く、今後はこうしたアイテムの開発に注力することでOMO推進を加速させる考えだ。
展示会場で新ライン披露、“きちんと×軽快”のスタイルを提示
会場にはCHANTOWAの新作に加え、黒石奈央子さんがディレクターを務めるシスや、高田朋佳さんがディレクターを務めるグービーのアイテムも展示。ブランド横断で“きちんと×軽快”の新しいスタイルを紹介し、来場者にスーツスクエアの方向性をアピールした。