「IM MEN」展覧会“FLY WITH IM MEN”が開催。「一枚の布」の思想を可視化21_21 DESIGN SIGHTで8月3日まで

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「IM MEN」2025/2026年秋冬の世界を体感する展示 東京・六本木で開催中

株式会社イッセイ ミヤケは、メンズブランド「IM MEN(アイム メン)」の2025/2026年秋冬コレクションを紹介する展示「FLY WITH IM MEN」を、2025年7月10日から8月3日まで、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で開催している。展示では、今季コレクションの代表作を通じて、ブランドの中核をなす「一枚の布」という思想と、その具現化に向けた技術・造形の成果が提示されている。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)提供画像© ISSEY MIYAKE INC.Photo: Masaya Yoshimura (Copist)

会期初日前日の7月9日には、プレビューが行われ、IM MENのデザインチームである河原遷(デザイン/エンジニアリング)、板倉裕樹(デザイン/エンジニアリング)、小林信隆(テキスタイルデザイン/エンジニアリング)の3氏が登壇。来場者に向けてブランドの理念や展示の見どころについて解説を行った。

「この先50年の服」を目指して──チームが語る設計思想と技術

IM MENは、2021年に三宅一生氏の発案によりスタートしたメンズブランドで、「一枚の布」という思想を男性の身体という視点で再構築するものづくりを掲げている。2025年1月には、同ブランドとして初のパリ・ファッション・ウィーク参加を果たし、翌日から一般公開を含む展覧会を開催。その内容をもとに、今回の東京展が企画された。

登壇した河原氏は「ブランドの出発点にあるのは、『この先50年続くような新しい男性服をつくりたい』という思い。構造や素材を一から見直し、服の本質を問うものづくりを続けている」と語った。

デザインとエンジニアリングの融合

IM MENでは、デザインとエンジニアリングを横断する職能を重視している。河原氏は「デザイナーとエンジニアを分けず、両者の視点を一人が持つことで、布地の効率性と衣服の美しさのバランスを取る」とし、自身のキャリアがパターンナー出身であることにも言及。「描くだけではなく、設計まで担うデザイナーが求められる時代が来ている」と述べた。

チーム体制は現在7〜8名。展示では、布の構造的可能性を探る作品4点が紹介されており、いずれも「一枚の布」の哲学を反映した造形が特徴だ。

布の造形と思想に向き合う4作品

展示作品①:FLY
展示の冒頭に配されたのは、今季のコレクションテーマでもある「FLY」を象徴するアイテム。小林氏は「一見すると白くシンプルな布に見えるが、職人の技術と軽量素材の工夫が詰まっている」と説明。縦糸には中空構造の糸を、横糸にはサトウキビ由来の植物繊維を使用し、軽さと膨らみ、ナチュラルな質感を両立させたという。

このコートは、布の端を切り落とさず、スナップボタンで構造を与えるという設計。板倉氏は「着る人が自由に形を変えられるように、ボタンの留め方で上下を逆さにしても着られる。風にたなびく白い布から着想を得た」と語った。

展示作品②:METALLIC ULTRA BOA
二つ目の作品「METALLIC ULTRA BOA」は、東レの人工皮革「ウルトラスエード」にリサイクル複合繊維のボアを貼り合わせ、黒い箔をプリント。さらにタンブラー乾燥を施すことで、ヴィンテージ調の自然なシワと風合いを加えている。

構造面では、布の裾から脇下にかけて2本の切り込みを入れ、そこにファスナーを通すことで立体化。ファスナーを外すと再び一枚の布に戻る設計で、衣服を平面から立体へと変化させる構造の可能性を示す設計となっている。

展示作品③:HERON
三作目の「HERON」は、植物由来100%の東レ製ウルトラスエードを使用したコート。衣服としての採用は世界初とされる。小林氏によれば、「京都の工業製品加工工場と連携し、正確な穴開け加工を実現した」といい、通気性と装飾性を兼ね備えた素材に仕上げた。

一方で構造は、折り線のような切り込みを施し、左右対称のスナップボタンで立体的な衣服を組み立てるという設計。布を二つ折りにして穴を開けることで、上下で対称となるデザインを効率的に加工している点も特徴的だ。

この作品も高度な加工技術と衣服の設計を同時に成立させるエンジニアリング的思考を反映している。

展示作品④:KASURI
最後の作品「KASURI」は、日本の伝統技法「絣」を大胆に再構築したアイテム。広幅で染め・未染めを交えた糸を用い、ジャカード織機で織り上げた。綿100%の素材には節の異なる3種の糸を使用し、豊かな風合いを実現している。

構造は、裾から袖口へとファスナーが螺旋状に走る仕立て。ハの字に切り込みを入れ、筒状に組み立てることで、ポンチョとしても着用できる多様なスタイルを可能にしている。

「一枚の布」が体現する責任と創造性

展示説明の最後で語られたのは、「一枚の布」の思想が示す倫理性だった。板倉氏は「布に対して責任を持つという姿勢が、この思想の根幹にある。無駄な裁断くずを出さずに、最初から布に役割を与えて使い切る。それが私たちのサステナビリティ」と語る。

再生やリサイクルに頼るのではなく、最初から無駄を出さない設計思想。「一枚の布」は構造的な実験であると同時に、布と人、社会との新たな関係を築く倫理的実践でもある。展示は、素材と構造を通じて、現代の衣服づくりにおける創造性と社会的責任のあり方を可視化している。

なお、会期中は毎週末、デザインチームによるギャラリーツアーを開催する。※いずれも15時開催(予約不要、日本語のみ)

特別展示「FLY WITH IM MEN」

主催:イッセイ ミヤケ
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3(東京都港区赤坂9丁目7の6、東京ミッドタウン・ミッドタウン・ガーデン内)
会期:2025年7月10日~8月3日(火曜休館)
開館時間:午前10時~午後7時
入場料:無料

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