
日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW)は2025年5月14日から16日まで、東京都立産業貿易センター浜松町館で「第1回東京テキスタイルスコープ(TOKYO TEXTILE SCOPE)2026 Spring/Summer」を開催した。初日の14日には、オープニングレセプションが行われた。
東京テキスタイルスコープは、これまで国内で開催されていた「JFWジャパン・クリエーション(JFW JAPAN CREATION)」と「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(Premium Textile Japan)」の2つの展示会を統合し、新たなコンテンツを加えて再編した総合テキスタイル展示会。グローバルなファッション・テキスタイル市場のニーズに応えることを目的としている。
初開催で83社が出展 2026年春夏素材を一堂に展示


初回となる今回は83社が出展し、2026年春夏向けの最新素材を紹介した。
また、出展者が開発した主要商材を集約して紹介する「トレンド&インデックス」や、来場者による人気投票型企画「ワッツ・ネクスト・テキスタイル(What’s Next Textile)」といった人気企画に加え、スタートアップ企業や注目素材をクローズアップする「ワッツ・ネクスト・スコープ(What’s Next Scope)」、「東京AIファッションウィーク(TOKYO AI Fashion Week)」、「産地フォーカス」などの新企画も注目を集めた。
さらに、「ワッツ・ネクスト・インフォメーション(What’s Next Information)」の一環として、フランスの国際見本市「プルミエール・ヴィジョン」の「クリエイティブ・ポール」のプロモーションブースも設置された。
JFW・経産省・出展者が語る展示会の意義と展望
オープニングレセプションの冒頭で、日本ファッション・ウィーク推進機構の古茂田博事務局長は、「日本ファッション・ウィーク推進機構は設立から20年を迎えました。記念すべき節目の年でもあります。この20年の間に、私たちを取り巻く環境は大きく変化しました。特にコロナ以降、その変化はさらに加速しています」とあいさつ。
そのうえで、「そうした新たな時代に向けて、JFWが新たに推進するテキスタイル展の第1歩を踏み出したという位置づけです。日本のものづくり産業の強みは、多彩で多様、かつ高品質で丁寧な生産拠点が集積している点にあります。そうした点が国際的にも優れたものとして評価されてきました」と述べた。
さらに「環境に優しい技術を生かし、伝統を重んじながらも新しい挑戦を続けていることも特徴です。ここ東京テキスタイルスコープから、機能的で美しく、そして世界に愛されるテキスタイルを発信していきたいと願っています」と語った。

日本ファッション・ウィーク推進機構の下地毅理事長は、「アパレルと繊維の産地が連携し、ともに盛り上がっていく取り組みを進めていきたい。学生の皆さんも入場できるので、より多くの人たちと一緒に、アパレルの未来、そして繊維産業・産地の未来を築き上げていく、そんな力強い展示会へと成長させていければと考えています」と話した。

行政からは、経済産業省生活製品課の高木重孝課長が来賓としてあいさつした。「経済産業省としても、サステナビリティに焦点を当てたセミナーや関連の取り組み、日本各地の繊維産地にしっかりとフォーカスを当てている点など、東京テキスタイルスコープの取り組みに注目しています」と述べた。
また、「私は昨年夏に着任して以来、毎週のように全国の産地を訪問しており、これまでに約50回出張しました。各地の産地では、日本の多様性や、それぞれの地域が持つ可能性を強く感じています」と語った。
さらに、「日本の繊維産業では輸入浸透率が98.5%に達している点ばかりが注目されがちですが、実際には地域に根ざした“ものづくり”の力こそが日本の強みであると考えています」と強調した。
そのうえで、「昨年秋から勉強会を立ち上げ、このテーマについて省内でも議論を重ねてまいりました。6月にはその成果として報告書を取りまとめ、公表できる予定です」と説明。「財政面での直接的な支援は難しい状況ですが、それ以外のことについては、可能な限り対応していきたいと考えています」と述べた。

出展企業を代表して登壇した東レの大矢光雄社長は、「東レはPTJの初回から継続して出展してまいりました。この展示会をコーポレートブランディングの一環として活用することは、当社にとっても大きな意義があります。若手社員が来場者の皆さまに自らの言葉で生地の企画や特徴を説明する機会が得られることは、非常に貴重な体験となっており、改めてその重要性を実感いたしました」と語った。
「パリの『プルミエール・ヴィジョン』、イタリア・ミラノの『ミラノ・ウニカ』、そして中国・上海の『インターテキスタイル』を超えるような展示会へと成長することを願っています」と話した。

宇仁繊維の宇仁龍一会長は、「東京テキスタイルスコープのような大規模な展示会は、“ものづくり”を行う企業にとって、大変ありがたい機会です。展示会でレベルの高いお客さまと出会えること、新しいものづくりへの評価をいただけること、他社や他産地の商品を一堂に見ることができること、そして社員のレベルアップにつながることは、当社にとって大きな力となっています」と述べた。

バイヤーを代表して登壇したオンワードホールディングスの保元道宣社長(日本ファッション・ウィーク推進機構副理事長)は、「アパレルや小売業にとって、産地との距離を縮めていくことが重要です。その上で、世界へと発信していく。東京テキスタイルスコープが、そのようなプラットフォームとなることを願っています」とあいさつ。
続けて、「いま世界各国で『製造業を国内に取り戻す』という動きが高まっています。国によってやり方は異なりますが、日本の場合は、壁を築くのではなく、国内業界内の垣根を下げ、さらには海外のお客さまとも垣根を取り払っていく方向に進むべきだと考えています」と強調した。
さらに、「日本の“ものづくり産業”は、農業の次に繊維産業から始まりました。今こそ、もう一度繊維産業、そしてファッション産業を基軸として、世界に向けて発信・輸出していく時代が来ているのではないでしょうか」と呼びかけた。

最後に、運営・支援者を代表して、日本ニット工業組合連合会副理事長であり、「ジャパンクリエーション」と「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」の創設当初から関わってきたエイガールズの山下雅生会長が登壇した。
「『プルミエール・ヴィジョン』や『ミラノ・ウニカ』と肩を並べること、さらには大規模な『インターテキスタイル上海』にも匹敵する規模へと成長させていくために、“世界と戦う”基盤を築いていきたいと考えております」としたうえで、「これからが本当の勝負です」と強調した。
What’s Next Textile過去4回のグランプリ受賞企業の表彰式も


会場では、「ワッツ・ネクスト・テキスタイル(What’s Next Textile)」の表彰式も行われ、下地理事長から過去4回のグランプリ受賞企業にトロフィーが贈られた。
「ワッツ・ネクスト・テキスタイル」は、来場者による人気投票で選ばれる企画。第1回グランプリは宇仁繊維の「ストレッチシアーサッカー」、第2回と第4回はサンコロナ小田が「エアファブリックカラースパッタリング」と「オリガミオーガンザプリーツ」で受賞した。第3回は東レの「ウルトラスエードNU」が選ばれている。
世界との連携・発信に向けて TRANOÏも注目

なお、オープニングレセプションには、仏・トラノイ(TRANOÏ)のマネージングディレクター、ボリス・プロヴォ氏も出席。「こうした新しいテキスタイルの展示会がスタートしたことは、とても素晴らしいことだと思います。また、プルミエール・ヴィジョンがそのパートナーシップを結べたことも、大変うれしく思っています」と述べた。
さらに、「トラノイとしても、もともと楽天ファッションウィークの期間中に『トラノイ東京』を開催しており、日本ファッション・ウィーク推進機構とはすでにパートナーシップを結んでいます。今回の展示会に出展することは、非常に自然な流れだったと思います」と続けた。
また、「GLイベンツ社では『ザ・クリエイティブ・ポール』という新たな部署が設置され、プルミエール・ヴィジョンとトラノイの両方がその中に位置づけられています。ショーのプロモーションも含め、今後は東京テキスタイルスコープを当社でもプロモーションできるような流れを作っていけたらと考えています」と語った。








