
イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)は、2025/2026年秋冬パリコレクションの5日目の3月7日、パリ中心部のカルーセル・ド・ルーヴル(Carrousel du Louvre)で2025/2026年秋冬コレクションを発表した。画像© ISSEY MIYAKE INC.(ランウェイルック / ディテール画像: Frédérique Dumoulin-Bonnet、ショー画像: Olivier Baco)
今シーズンのテーマは「[N]either [N]or」。形態や質感、意味合いにおいて、相反する二つの要素を結びつけ、「どちらかである(either or)、どちらでもない(neither nor)」という曖昧さを表現した。衣服の発想は、オーストリアのアーティスト、エルヴィン・ヴルム(Erwin Wurm)の作品に着想を得ており、「見慣れたものを意外で独創的な方法で提示すると、見え方が変わり、視点が新しくなる」という考えに基づいている。
今回のコレクションでは、エルヴィン・ヴルムの代表作「One Minute Sculptures」に着想を得た演出が行われた。この作品は、アーティストが用意した指示書に従い、日常の身近なものを使って観る人が自ら一時的な彫刻を作るというもの。ショーでは、パフォーマーがそのコンセプトを体現し、動きや姿勢を通じて彫刻のような表現を生み出した。イッセイ ミヤケのものづくりとも響き合う、新たな創造の形が示された。
リリースには、「こうして完成された衣服は、見る者の既定視点を覆し、掴めそうで掴めない揺れ動く感覚を呼び起こします。そこに見出だされた違和感の向こうには、新たな美意識が在るのか。その曖昧さは、着ることの自由と、それに伴う期待と悦びを示唆しているのではないか」と記されている。


KNIT (AS REPRESENTED)
コットン、ナイロン、ポリウレタン。
抽象と具象、平面と立体の対話。
「KNIT (AS IT IS)」の写真を柄として衣服にプリントし、平面と立体を行き来する新たな表現を探る。さまざまな素材に印刷可能な最新の転写技術を用いることで、写真を鮮明かつ細やかに再現している。柄のドレープやシルエットが、実際の衣服のドレープやシルエットと重なったり、ずれたりすることで錯視効果を生む。


KNIT (AS IT IS)
ポリエステル。
抽象と具象、身体と彫刻の境界。
身体と衣服の間に生じる余白。その見えない空間を彫刻するように、異なる編み組織によるねじれを活かし、有機的なフォルムを生み出した。無縫製技術による流動的なシルエットが、身体と彫刻の境界を曖昧にする。


LIKE TORSO LIKE SHIRT
紙、ナイロン、コットン、ポリウレタン。
LIKE TORSO LIKE BLAZER
ウール、紙、ナイロン、ポリウレタン。
彫刻なのか、衣服なのか。
シャツやブレザーのように見えながら、彫刻のようにも映る――その境界を探る。彫刻のざらついた質感を和紙で、しなやかさをストレッチ糸で表現した。ファスナーで着脱でき、袖を通すと現れるフォルムが、着る人それぞれの個性を映し出す。


ODD SHIRT
コットン。
ODD SHIRT (STRIPES)
ポリエステル、ウール、コットン。
着る人に、自由を。
ボタンの留め方で前身頃が袖に変形し、腕を通す位置を変えることでシルエットのバランスを調整できる。着る人の気分に合わせた自由な着こなしを可能にする。ストライプ柄は、線の輪郭がぼやけるように、タテ糸を4色のグラデーションに染め分けた。


PAPER BAG
PAPER BAG (POSTER)
紙、ナイロン、コットン、ポリウレタン。
どんなものでも、身体を通せば衣服になるのか。
この問いから着想を得て、紙袋に身体を通してみた。今コレクションの発表にあたり、架空の展覧会ポスターをイメージして制作した柄を、紙袋の形に模した衣服にプリントしている。「Abstract, Concrete, and In-Between(抽象と具象とその間)」という展覧会タイトルと共に、コレクション発表の日時や場所も記されている。


COLLAPSING SCULPTURE
紙、ナイロン、コットン、ポリウレタン。
単純と複雑を行き来する構造。
一枚の布をS字状に折り返し、二つの筒構造を発展させた衣服。和紙とコットンにストレッチ素材を織り合わせた生地は、張りと伸縮性を兼ね備え、立体感を際立たせる。前後いずれかの筒に身体を通すことで、多様な着こなしや造形が可能になる。


GENERIC STRIPES (MACHINE PLEATS)
GENERIC STRIPES (HAND PLEATS)
ポリエステル。
見慣れたものを、見慣れないものへ。
規則的なプリーツ加工や弧を描くハンドプリーツを施し、ストライプ柄に歪みを加えた。さらに折り目をつけることで、表情の変化を生み出している。透け感のある素材を重ねることで、それが柄なのか、プリーツなのか、見る者の視覚を揺さぶる錯視効果が生まれる。


PANINI
ウール、アルパカ、ポリエステル。
既成概念を覆す。
柔らかいものを硬く表現する発想から、柔と剛の境界を探る。熱可塑性のある合成繊維とウール・アルパカの混紡糸をプレス加工し、ニットには通常見られない硬質な質感とほのかな艶を生み出している。ゆったりとしたシルエットに剛柔を織り交ぜ、ボリューム感とシャープな輪郭を兼ね備えたニットに仕上げた。


CAMPER × ISSEY MIYAKE
Peu Form
カンペールとの協業による初のフットウェア企画「Peu Form」を発表する。このパートナーシップは、それぞれ50年の歴史と知識を持つ二つのブランドが、日常の中で手仕事の価値を見直し、独創性と機能性を兼ね備えた靴づくりを目指す新たな取り組み。
カンペールを代表するシリーズの一つであり、マヨルカ語で「足」を意味する「Peu」。Peu Formは、近藤悟史がイッセイ ミヤケのものづくりの根幹にある「身体」との親和性を感じ、「一枚の布」というコンセプトをもとに発展させた。一枚革で足を包み込む独特のフォルムが、快適な履き心地と脱ぎ履きのしやすさを実現。ヒールカーブ部分を踏み込むと、スリッパのようにも着用できる。
イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)2025/2026年秋冬コレクションLOOK


















































イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)2025/2026年秋冬コレクションDETAIL






















