藤田哲平がデザインするサルバム(sulvam)は、楽天ファッション・ウィーク東京2025年春夏(Rakuten Fashion Week TOKYO 2025 S/S)の6日目にあたる2024年9月6日、文化服装学院 遠藤記念館大ホールで2025年春夏コレクションを発表した。楽天グループによる日本のファッションブランド支援プロジェクト「バイアール(by R)」の一環として行われたもので、東京で3年ぶりにランウェイショーが開催された。Photos:Courtesy of sulvam
同ブランドはリリースで以下のように書いている。
サルバム(sulvam)2025年春夏コレクションリリース
サルバムの呼吸音と藤田哲平の律動。
この呼応は、藤田の手の感覚から生まれるカッティングやドレーピングを有体的に現すパターンメイキングというブランドの象徴だけに留まらない。
ウールギャバジンやヘリンボーン、コットン、ツイード、メルトンからデニムやシャンブレーに至るまで、服地の髄を確かめながら触感を大切にしている。
クラシック、フォーマル、エレガンス――装いの本質に目を向け、即興演奏と表されたメンズコレクション: 刹那的な感情の行方。
鮮やかな配色、ジャカードやアロハシャツ、始末やステッチといった遊びを効かせ、時代を思うペーソスを感じさせながら、男性服の元型に実験的な歪みを加える。
女性に対する敬意を起点とし、強さ、チャーム、ありのままの姿を表現するウィメンズコレクション: 余白を設けることで露わになるパターンのナラティブなアイデンティティー。
その個性には無機的ではない身体的な意識が眠っていて、人が袖を通すことで目覚める。
洋服というメディウムによって、寄り添いながら自由を謳歌することに対して平穏に高揚する。
男性性と女性性、動と静、歪と平、未完成と完成、非日常と日常、特殊性と普遍性。
これら二面性を恣意的かつ即興的に相互化することで、サルバムと藤田は同調する。
この場所に立ち返ること。それはこうしたサルバムの“現在”を表現するためではない。-
画一的ではない、服地の個性を活かしたパターンメイキング。
気分と経験によって積み上がったスタイルは、デザイナー自身の確かさの蓄積であり、無数の対話の凝結である。
刺激も安堵も感じず、ただ直向きに服に向かっていた“あの頃”。
バイクを走らせ、山手通りを通って見渡す新宿の街並み。
人混みに辟易していたが、不確かな存在である自分自身をSELL OUT(裏切り、寝返りという一種の断絶)はしないという反逆精神だったのかもしれない。
24時間働きながら見えない切羽と向き合ってきた。
時は現在。
絶大な信頼を寄せる工場や生地屋、同じ舞台で闘う仲間たち、そして愛する家族。
藤田はサルバムの一部でもある守りたい大切な欠片を拾い続けてきた。
それと同時にある視線を強く感じること――次世代の眼差しと姿勢は愚直で情熱的であるから。
彼らは“あの頃”の自分と同じく、確かなものはない。
すべてが不確かであるからこそ、確かさを感じて欲しい。それは未来につながるはず。
伝える舞台はキャットウォークしかない。いくつかのルックには彼らの呼吸音を感じ取れる。
だからこそ、このショーには季節や性差、文化や概念、そして自身の創作哲学さえもない。
これまでサルバムを彩ってきた旧知の、そして新しい表情を作る新生なモデルたち。
20年以上前に出会い、自らを鼓舞してくれたDJ BAKUの音に乗せることで空間を一色に。
正方形の設えにある目線の先には、目に見えない真の再会があるかもしれない。
楽観的でもなく、終末的でもない。
サルバムが綴る走書き――その筆跡は必ず未来に残ると藤田は信じている。
Dear…
楽天グループ株式会社及び文化服装学院の皆さまのご協力によって、3年ぶりに東京でランウェイショーを開催できることを本当に嬉しく思います。
このショーはサルバムのものではなく、このショーに関わってくださる皆さまのものです。
“ファッションに関わる仕事をやりたい”“服を手に取ってみたい”――私たちがあの頃に感じた真心。
身の丈に合っていないかもしれませんが、決して明るいとは言い難いこの世界において、将来を担う次世代に感じてもらえるきっかけとなることを祈っています。
ぜひ、楽しんでください。
From Teppei Fujita