アシックスがサステナブルと高い機能性を両立させた「ニンバスミライ(NIMBUS MIRAI)」を発売

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アシックスは、4月12日からアシックスラン 東京丸の内、アシックスフラッグシップ原宿、アシックスストア大阪、アシックスオンラインストアで、シューズに使われている材料を容易に分別しリサイクルできるようにしたランニングシューズ「ニンバスミライ(NIMBUS MIRAI)」を発売した。価格は2万2000円(税込)。発売に先立ち、記者発表会が4月11日、アシックスラン 東京丸の内で開催された。また、発表会では、サーキュラーエコノミー研究​家の安居昭博さんを迎え、「シューズ産業におけるサーキュラーエコノミーの価値」や「お客さまがシューズの回収活動に参加することの重要性」についてのトークセッションも行われた。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

「ニンバスミライ」は、まるで雲の上を走っているような感覚を提供したい、次世代に持続可能な世界を残すことをランナーと一緒に考えたい、という思いからラテン語で雲を意味する「NIMBUS」と未来という言葉を組み合わせて名付けられたもの。「シューズはリサイクルできないからできる」をコンセプトに、同社を代表するクッション性を重視した高機能モデル「ゲルニンバス」シリーズで、サステナブルと高い機能性を両立させた。

また、シューズ使用時の接着強度は損なわず、回収後アッパーとソールを分離できる接着剤を独自開発し、アッパーとソウルの部分を分離することができるようにするとともに、シューズのアッパー部分の素材を複合素材ではなく単一素材にするなど、開発段階からリサイクルを意識したものづくりを推進、使用済みシューズを資源に戻すということは困難と言われてきた問題を解決した。更に、協力会社とパートナーシップを締結したことで、シューズの回収、リサイクルするという環境を整え、消費者がリサイクルに参加しやすいようにしている。

発表会で、NIMBUS MIRAI 開発責任者​​であるフットウエア生産統括部マテリアル部長の上福元史隆さんは​​「現在、全世界で年間約239億足のシューズが生産され、ていると言われてますが、そのうち約95パーセントは廃棄されています。アシックスはこの問題に取り組み、解決するミッションだと考えていました。そんな中、きっかけとなった出来事が東京2020大会でオリンピック・パラリンピック日本代表選手団応援プロジェクト『アシックス リボーン ウェア プロジェクト』です。 このプロジェクトでは、一般の皆様から回収したアパレルを原料にデレゲーションウエアとシューズが制作されました。そこから、アパレル由来だけでなく、シューズ由来から制作できないかという疑問を抱き、開発がスタートしました。その後、ゼベストを宣言している徳島県上勝町を訪問。上勝町では現在 80パーセントのごみ資源化に成功している中、資源化できていない残りの20パーセントにシューズが含まれていることを知りました。開発段階からリサイクルを意識したものづくりを行い、3年7カ月の開発期間を経て、今回発売に至りました」と説明。今後の展開については「継続的に販売し、規模を拡大していくことが重要。 本商品を通じて、お客様を巻き込んだ顧客参加型サステナビリティ活動を実施していきます」と語った。

デザインを担当したパフォーマンスランニングフットウエア統括部デザイン部の安藤良泰さんは​「自社独自開発の接着剤を使用することで、接着強度はそのままでソウルとアッパー分解可能となりました。また、通常複数の素材で作成されるアッパーの単一素材化を実現するにあたり、ポリエステルに着目しました。ポリエステル系繊維はアパレル産業で大量に使用されていますが、 ポリエステル系繊維のリサイクルはアパレル産業の持続可能性に大きく貢献しています。ニンバスミライのアッパーは100パーセントポリエステルで作られており、アパレル業界と同じループの中に入ることができるアイテムだと言えます。 さらに、ソール設計はアシックスのクッション系ランニングシューズのトップモデルであるニンバスの名を冠しているように、パフォーマンスに一切妥協せず、ランニングシューズとしての機能性、クッション性を有しています」と改めて強調。

シューズやBOXのデザインについては、「何かを追加するのではなくて、引き算のデザインを考える中で、さりげなくお客様にこの商品がリサイクル可能であること、環境に優しいことをお伝えするために、あえて真っ白にはせず、 染色せずに、ポリエステル素材そのものの色である生成り色を採用しました。 また、かかとにサーキュラリティのループを意味する円を、今回分解可能となったアッパーとソールを横断して描いています。これは今後のミライプロジェクトのアイコンのような存在にしていきたいなと考えてます。シューズボックスも同様に、 このリサイクルのループのストーリーを手書き風のデザインで描き、サステナビリティを遊び心をもって表現しています。お客様に親しみをもってコミュニケーションをしたい、一体になってループを完成させていきたいという思いから、このデザインを採用しました」と話した。

サステナビリティ部長の井上聖子さんは「当社は2050年に向けまして温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標を掲げています。 昨年は、製品での CO2排出量削減を目指し、市販のスニーカーでCO2排出量世界最少となる『ゲルライトスリーシーエム1.95(GEL-LYTE III CM1.95.)』を発売することができました。また、ネットゼロ(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)に向けては、循環型ビジネスへの転換が必要不可欠となっています。 今回のニンバスミライは、製品でのサーキュラリティを実現しているという点で、当社の取り組みの大きなマイルストーンになると感じています」とコメント。

「今回の取り組みに関して、サステナビリティとビジネスという観点で3つのポイントがあるという風に考えています。1点目は、実質ゼロにするという目標に向けて、今後リサイクル材を安定的、継続的に調達し続けていくということが重要となっていくこと。2点目はサステナビリティと機能性の両立。3点目はサステナビリティは1社では実現することができない、重要なステークホルダーであるお客様をしっかり巻き込むということです。今回のニンバスミライの取り組みを通じて、さらにお客様と一緒にこのアクションを取っていく、こういった取り組みをさらに活発にしていきたいと考えています」と述べた。

また、発表会の第2部では、シューズ業界におけるサーキュラーエコノミや消費者が参加することの重要性についてのトークセッションが行われた。トークセッションにはサーキュラーエコノミー研究​家の安居昭博さんと早稲田大学の学生が参加。安居さんはサーキュラーエコノミーとリサイクルの違いについて、「リサイクルが、すでに出来上がってしまっているものに対して、後から延命措置を施すような、対処療法的なものだったのに対して、今世界で進められているサーキュラーエコノミーはビジネスモデルの構築や商品の設計、デザインを行う段階から廃棄が出ない仕組み作りが実践される、予防医療的な側面があるところに、大きな違いがあります」と説明。

「サーキュラーエコノミーの要点から今回開発されたニンバスミライを見ると、回収する仕組みがハードとソフトの両面で整えられているというところはもちろん、自社で独自に接着剤の開発をされるなど、どのようにしたら商品をできるだけ回収し、再資源化、再びシューズに戻していく仕組み作り、サーキュラーデザインという風に他の業界、分野でも呼ばれていたりするデザインは、シューズ産業のみならず、例えば建築、家具、電化製品など、 他の分野、領域でサーキュラーエコノミーを進めたいと考える企業にとっても非常に大きなステップかなと思います。日本全体として、より一層サーキュラーエコノミーが活性化していき、日本から世界に向けて新しいモデルを築いていく、示していくという流れにも繋がる1つのきっかけになるのではないかと感じています」と話した。

アシックス「ニンバスミライ(NIMBUS MIRAI)」記者発表会から

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