「横尾忠則 寒山百得」展の報道発表会に横尾忠則さんが登場

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東京国立博物館、読売新聞社、文化庁は9月12日から12月3日まで、東京・上野の東京国立博物館 表慶館で「横尾忠則 寒山百得(よこおただのり かんざんひゃくとく) Tadanori Yokoo:100 Takes on Hanshan and Shide」展を開催する。「横尾忠則 寒山百得」展報道発表会が4月20日、東京国立博物館 平成館 大講堂で行われ、横尾忠則さんが登場した。当日は、横尾さんと東京国立博物館学芸研究部調査研究課長の松嶋雅人さんによるトークセッションも行われ、横尾さんは「以前から寒山拾得(かんざんじっとく)に興味を持ち、描き始めていたが、そのままではつまらないと思い、拾得の拾(じゅう=10)を1v百にして、100点作ることに挑戦した」などと語った。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)

「横尾忠則 寒山百得」展は、横尾さんが「寒山拾得」を独自の解釈で再構築した「寒山拾得」シリーズの完全新作101点を一挙初公開するもの。テーマとなった寒山と拾得は、中国、唐の時代に生きた伝説上の詩僧。怪しげに笑う表情の絵が多く、寒山が手に巻物を持ち、拾得がほうきを持つ姿が定番的な表現となっているが、その奇行ぶりから「風狂」ととらえられ、中国では伝統的な画題となっている。日本でも室町時代以来、描かれてきた。

横尾さんは2019年から「寒山拾得」シリーズを描き始めていたが、今回の「横尾忠則 寒山百得」展では、2021年9月から2023年2月までに描いた未発表の新作101点を展示する。作品は1点目の2021-09-03から101点目の2023-02-13まで、日付がタイトルになっている。後日加筆変更したものもあるが、概(おおむ)ね日付順に展示される予定だという。

新型コロナウィルス感染症の流行の下、横尾さんが寒山拾得が達した脱俗の境地のように、俗世から離れたアトリエで創作活動に勤(いそ)しみ、描き出された寒山拾得からは、精神世界を縦横無尽に駆け巡り、時空を超えためくるめく物語が紡ぎ出されている。

トークセッションで横尾さんは「1番体力があって調子が良かった50代、60代でも1年間30数点しか描けなかった。今86歳ですが、相当スピードを出さないと100点は無理。アーテイストをやめてアスリートになろう、頭ではなく体で考える、肉体を脳にするところからスタートしました。僕自身の多様性をステージに登場させ、その日の気分で描いていく。一主題一様式ではなく一主題百様式。目的も大義名分も捨て、モチーフを変えていく、これはまさに寒山拾得ではないかと。アルセーヌ・ルパンみたいにドン・キホーテやロビンソン・クルーソーに変装させたり、女ルパンにしたり。僕の中で拡張していき、僕の中の寒山拾得を描けばいいと考えました」と説明。

「(横に置かれたポスターに描かれた)この2022-12-01は、寒山拾得がロボットみたいになってしまいました。寒山は子供のような感情を持った人間だと思っていたのに、描いているうちに感情のないロボットのようなものを描いてしまった。僕の絵ではないし、誰の絵かわからないような絵ができてしまいました。次の絵もガラッと変わりますが、1点1点の変化を見ていただく、変化全体が僕であり、いい主題を頂いたと感謝しています。だから、僕の言葉を信用しないで。何を意味するか、はっきり言って、何も意味していません。見る人が思い浮かべるインスピレーション、自分と対峙していただければそれでいいんじゃないかと思います」などと話した。

また、今後については「完成してしまったものは僕の中では旧作。シリーズはもう1点描いて102点にする予定ですが、シリーズはもうイヤです。飽きました。その日の気分で描きたい。寒山拾得で僕の特定の様式を捨ててしまい、何でもありになってしまいました。これからは子供やピーターパンになったつもりでやるしかない。最初は自分がなければ描けなかったのに、今は自分を持ってしまうと描けなくなるんじゃないかと思っています」とするとともに、「今は絵を描くこと自体が生活になり、生活と芸術が1つになってしまいました。ある意味で楽だけどある意味でしんどいんですよね。それが残された人生のテーマになるのかなと思っています。もしかしたら、絵なんかつまらないと思って描かなくなるかもしれない。だけど、飽きてしまって嫌々描く絵を見てみたい、嫌になって描いた絵はどうなるんだろう、それを見てみたいという好奇心もあります」とコメントした。

さらに、展覧会を若い人がどう見ればいいのかを聞かれると「若い人は全てライバル、幼稚園の子供や小学生もみんなライバルです。だって、僕が子供になろうとしているわけですから。子供たちに教えるのではなく、子供がむしろ先生ですね」と答えた。

なお、関連企画として、同館が所蔵する、中国、日本で描かれた「寒山拾得図」を一堂に集めた特集「東京国立博物館の寒山拾得図―伝説の風狂僧への憧れ―」も9月12日から11月5日まで、東京国立博物館 本館特別1室で開催される。

「横尾忠則 寒山百得」展報道発表会

「横尾忠則 寒山百得」展開催概要

■展覧会名:「横尾忠則 寒山百得」展
■会 期:令和5年(2023)9月12日~12月3日
■休館日:月曜休館、ただし9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開館、9月19日、10月10日は休館
■開館時間:午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
■会 場:東京国立博物館 表慶館
■主 催:東京国立博物館、読売新聞社、文化庁
■展覧会公式HP: https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kanzanhyakutoku/

横尾忠則プロフィール

美術家。1936年兵庫県生まれ。72年ニューヨーク近代美術館で個展。その後もパリ、ヴェネツィア、サンパウロなど各国のビエンナーレに出品し、ステデリック美術館(アムステルダム)、カルティエ財団現代美術館(パリ)、ロシア国立東洋美術館(モスクワ)など世界各国の美術館で個展を開催。また、東京都現代美術館、京都国立近代美術館、金沢21世紀美術館、 国立国際美術館など国内でも相次いで個展を開催し、2012年神戸市に兵庫県立横尾忠則現代美術館、13年香川県に豊島横尾館開館。95年毎日芸術賞、11年旭日小綬章、朝日賞、15年高松宮殿下記念世界文化賞、令和2年度東京都名誉都民顕彰、23年日本芸術院会員。小説 『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『言葉を離れる』(講談社エッセイ賞)、小説『原郷の森』ほか著書多数。

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