アシックスは東京オリンピック開幕100日前となる4月14日、東京・江東区のアシックスジャパン本社で、同社が作製、提供する各国代表の競技用ユニフォームを披露する展示会「アシックス ナショナル フェデレーションズ ユニフォーム フォトセッション(ASICS National Federations UNIFORM PHOTO SESSION)」を開催した。東京オリンピックなど、2021年度に日本代表や各国の代表が着用するユニフォームを一堂に集め、展示したもの。日本のトライアスロン、バレーボール(男子)、ハンドボール、レスリング、競泳、陸上競技、野球の7競技を始め、韓国・ブラジル・ブルガリアのバレーボール、インド・ブルガリアのレスリング、イタリア・ウクライナ・オランダ・フランス・ブルガリアの陸上競技の、海外7か国3競技で、代表選手が着用する競技用ユニフォームなどのオフィシャルウエアを発表した。Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)
当日は、ゲストアスリートとしてバレーボール男子日本代表の柳田将洋選手、西田有志選手、高橋藍選手、レスリング男子日本代表の文田健一郎選手、ハンドボール男子日本代表候補の元木博紀選手とハンドボール女子日本代表候補の原希美選手が登場した。また、陸上の桐生祥秀選手はオンラインで出演。桐生選手は「年々機能も進化していると思うし、サンライズレッドをコンセプトに、色やデザインも変わってきているので、撮影していても楽しかった」などと話した。
今回発表された各競技用ウエアのデザインは、繊細さ、ち密さといった日本の伝統的な美意識を取り入れた「アシックスジャポニズムグラフィック」を採用し、アスリートたちの想(おも)いが幾重にも織り込まれ重なる様子を表現していることが特徴。様々な要素を組み合わせて一つの柄を作り出すことで多様性も表している。また、日本のウエアは、今回も朝日が昇る力強さをイメージした鮮やかな「サンライズレッド」をテーマカラーとしている。
機能面では、バレーボールとハンドボールで採用した腕上げや腕振り動作を阻害しにくい独自のマチ構造「ライトニングシェイプ」、陸上競技のマラソンなどで着用されるシングレットのメッシュ部分の粗密を部分ごとに変え、通気性を高めていることなどがポイントとなっている。
バレーボールとハンドボールは、それぞれの競技の動作において多く行われる腕上げや腕振り動作を阻害しにくい独自のマチ構造「ライトニングシェイプ」を採用。シミュレーションによると、バレーボールでは、スパイク時の腕振り動作に対する衣服抵抗を約39パーセント低減できるという。また、サステナブルにも配慮し、素材は、べたつきにくく肌離れがいいリサイクル素材を使用している。
陸上競技では、マラソンや競歩で着るシングレットは、生地を圧着して貼り合わせた、肌当たりのいいシームレス構造。糸を使わず、端材も出にくいサステナブルな製造工程を経て作製した。機能面では、アシックススポーツ工学研究所で立証されたボディサーモマッピングに基づき、メッシュ部分の粗密を部分ごとに変えることによって、走行中の通気性を約25パーセントアップした。また、はっ水加工を施すことで、汗を吸わないため、軽さを維持し、肌へのべたつきを減らすという。一方、陸上短距離などで着用する「2WAYシャツ」は六角形をかたどった背中のカッティングが特徴で、襟とアームホールは肌当たりを軽減するため、縫い目をフラットにし、フィット感を高めた。背中部分は、レーザーで穴をあけ、衣服内の空気の流れを良くし、ムレ感を軽減している。
レスリングは同社従来品に比べ伸縮性に優れた新素材「2WAY STRETCH」を使用。また、激しい動きをしても体にフィットするように、レスリングの基本姿勢である前傾姿勢がとりやすいパターンを採用した。
競泳は、流水抵抗の小さなストリームラインを保つために必要な姿勢をサポートしながら、筋力や身体の柔軟性を生かし、優れたパフォーマンスを発揮できる仕様が特徴。そのため、腰まわりは、部位に応じて生地の剛性を変えるなど着圧分布を調整することで、腰が過度に反(そ)ることを抑え、骨盤が直立した状態を保ちやすくした。太もも部分は、後ろ部に張力が働くエリアを設けることで過度な動きを抑制し、流水抵抗の低減と推進力発揮のバランスの取れた小さく素早いキックを促すようにしている。また、切り替えを減らすことで生地の表面が平滑になるように工夫したほか、パーツ数を減らし素材も軽量化することによって、重量は男性用で約23.5パーセント、女性用で約25.3パーセント減少している。
野球は、神聖と清浄無垢(むく)の心を現す白「真白(ましろ)」を基調としたホーム用、古来、侍が戦に勝ちをもたらすとして甲ちゅうを染め上げた紺「青褐色(あおかちいろ)」を基調にしたビジター用に、新たに日本の象徴でもある日の丸の赤「紅色(くれないいろ)」を基調にしたセカンドビジター用をプラスした。ユニフォームシャツでは伸縮する特殊な加工糸を使用した伸びる素材「ストレッチブライトコード」を採用。パンツは縦横方向にバランスよく伸縮する素材「ハイストレッチニット」を使い、可動性を追求した。デザインは、日本の伝統的な色や模様を取り入れていて、ストライプ部分は、日本の伝統的な縞(しま)模様である、無数につながった「輪つなぎ」を取り入れ、ファンと選手の結束を表現している。
トライアスロンは、トライアスロンにおけるスイム、バイク、ランニングの3種目の動作を分析し、それぞれの動きを妨げにくく、パフォーマンスを最大限に引き出せるように作製。また、各所に最適な生地を配置し、軽量の布はく素材を多く使うなど、負担の少ない着心地も追求したという。