「DESIGN MUSEUM BOX展 集めてつなごう 日本のデザイン」(主催NHK)が4月10日から5月9日まで、東京・銀座のGinza Sony Parkで開催されている。開幕に先立ち、4月9日に内覧会が行われ、概要が公開された。当日はアンリアレイジ(ANREALAGE)の森永邦彦さんとパノラマティクスの齋藤精一さんも出席した。Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)
同展は、NHK Eテレの番組「デザインミュージアムをデザインする」に出演した森永邦彦(ファッションデザイナー)、辻川幸一郎(映像作家)、水口哲也(エクスペリエンスアーキテクト)、田川欣哉(デザインエンジニア)、田根剛(建築家)の5人のクリエイターが日本各地で発掘した“宝物”を一同に集め、「DESIGN MUSEUM BOX」として収集、展示するもの。
森永さんは鹿児島の奄美で祭祀を司(つかさど)った女性であるノロが着用した“ハブラギン”という装束をリサーチ。森永さんの原点であるパッチワークと、ノロという仕事を始めたばかりの少女を守るために、柄と無地、シルクとコットンなど、いろいろな人が着た服の布をつないで縫い合わせて作られた本物の“ハブラギン”、リサーチに触発された森永さんが新しく作った服などを展示。森永さんが出会った「服に、着る人を守るという強い意志が込められているデザイン」を紹介している。
辻川さんは「おもちゃは人間が最初に触れるデザイン」というところから、コマをめぐるリサーチを行い、リサーチ映像やコマからインスピレーションを受けた映像、日本おもちゃ博物館所蔵の様々なコマなどを展示した。
水口さんは、アップライトピアノの響板に電気的な振動装置トランスデューサー(振動装置)を取り付けることでピアノ全体がスピーカーになるトランスアコースティックピアノをリサーチ。映像とピアノを展示し、全身で体感できるいままでにない音の体験を提案している。
田川さんは日本のプロダクトデザインを代表する柳宗理の工房を訪ね、クリエーターがどのようにデザインするのかというプロセスをリサーチ。創作の秘密に触れ、リサーチ映像や柳が1本のスプーンを作り上げるまでの段階を追った試作品などを展示。デッサンではなく、紙や発泡スチロール、木などを使い、人が本当に使いやすいデザインを作るなど、今まで知られていなかったデザインプロセスを紹介している。
「デザインは近代だけのものではない。1万年前、縄文時代からデザインはあった」という田根さんは、リサーチ映像や御所野遺跡から出土した土器などを展示。縄文時代に人が集まり定住を始めた村の暮らしから生まれたデザインをひもといている。
同展は齋藤さんとNHKエデュケーションが展覧会の内容を構成。田根さんが会場デザイン、グラフィックデザイナーの岡本健さんがグラフィックデザインを担当した。
「デザインミュージアムをデザインする」の番組プロデューサーである倉森京子さん(NHKエデュケーション)は「ファッションや建築のデザインは世界から高い評価を受けていますが、19世紀のヨーロッパでも日本の衣服がクリムトやゴッホなどに大きな影響を与えています。縄文土器もすばらしいデザインです。でも、そうしたものを集めたミュージアムは日本にはありません。もし、あるとしたらどんなものなのか、ということを15本の番組の中でクリエーターの方たちに考えていただきました。それを発展させ、周辺の物語とともに展示したらどうなるのか、やってみよう、ということで新しい5本の映像を作り、リサーチしたものを展示しました。ふだん見落としてしまうようなものにも物語がある、こんなに素敵なものがある、ということをみなさんに感じていただければ」と挨拶。
齋藤さんは「日本にデザインミュージアムがないということに疑問に思いますが、今の時代、1か所に集めるのではなく、ネットワークを通して各地に分散しているものを、何が、どこに、どういう状態で保存されているのかを踏まえ、日本全体をデザインミュージアムとしてまとめていけないかと考えました。最終的には場所を作り、アーカイブを持つことなども検討していますが、今回の試みがデザインについてアーカイブすること、地方に分散しているデザインをたくさんの人が見ることにつながれば。これからどのような展開があるのか我々も考えているところ」とコメント。その上で、「今、日本に眠っている知られていないもの、検索しても出てこないものを会場に来たみなさんにも投稿してもらいたい。それが日本各地に点在するデザインのデータベースを作るためのデータにしていければ」とアピールした。
森永さんは「アンリアレイジは日常と非日常をテーマに服作りをしています。ファッションデザインは目に見えるもの、形のあるものだと思われがちですが、“ハブラギン”は、今ない存在や目に見えないものをどのように服にできるか、着る人を目に見えない力から守るということをデザインに持ち込んだものです。服として、人に寄り添う、あるべき姿を追求したものだと思いました。私たちもこの先に何ができるか、どういう服を作るべきか、ファッションデザインに何ができるのかということを突き付けられるものでした。是非見てほしいと思っています」などと話した。
■「DESIGN MUSEUM BOX 展 集めてつなごう 日本のデザイン」開催概要
会 期:2021 年 4 月 10 日(土)~5 月 9 日(日)11:00~19:00
会 場:Ginza Sony Park(東京都中央区銀座 5-3-1)
入場料:無料
主 催:NHK/ 協力:一般社団法人 Design-DESIGN MUSEUM
問い合わせ:ハローダイヤル 050-5541-8600