2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は7月19日、都内でフィールドキャスト(大会スタッフ)とシティキャスト(都市ボランティア)が着用するユニフォームを発表した。約8万人の大会スタッフと3万人以上の都市ボランティアあわせて11万人以上が着用するもの。デザイナー、スタイリスト、クリエーターなどのアドバイスなどを元に作られたデザインの中から、昨年11月から約半年をかけて選考委員会で議論を重ね、デザインを決定。東京2020オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナー契約に基づき、アシックスがポロシャツ、パンツ、シューズ、ハット、ジャケット、ソックス、バッグ、持ち帰りはバッグの計8アイテムを作製した。発表会にはユニフォーム選考委員の香取慎吾さんやユニフォーム選考委員会座長の生駒芳子さんらも出席した。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)
様々な年代、性別、国籍の人たちが快適に活動出来るように「暑さ対策」「持続可能性」「多様性」の3つの観点から開発された今回のユニフォーム。機能面では、暑さ対策を重視しながら、可動性を高めたパターン設計や通気性を考慮したシルエットを採用することで動きやすさや着心地の良さも追求している。また、再生ポリエステルや植物由来素材を多く取り入れ製品の包装材には焼却時にCO2を吸収する素材を採用するなど、環境に配慮していることも特徴になっている。
デザインについては、大会スタッフのユニフォームは東京2020大会のコアグラフィックスである「かさねの色目」をモチーフにしたグラデーションを清涼感のある大会カラーの藍色で表現。その上からエンブレムを重ねることで東京2020大会らしい品格を持たせた。
都市ボランティアのユニフォームは、大会エンブレムの市松模様を大胆に配置することで、東京らしさを表現するとともに、濃紺と白のコントラストによって、街の中ですぐに認識できるようにした。また、大会スタッフと同じ藍の大会カラーを採用することで、大会スタッフと都市ボランティアの一体感を表現した。
主要アイテムでは、ポロシャツは、暑さ対策として通気性に着目。オリンピック・パラリンピックが開催される時期と同じ条件下での試作品テストを重ね、裾の両サイドにスリットを大きく入れることで衣服内に対流を生む構造にし、生地にも再生ポリエステルを使い、更に肌側に撥水糸を使用することで表側に拡散した汗や水分を肌側に戻りにくくするなど、吸汗速乾性や通気性を実現した。様々な年代や性別、国籍の人が着られるようにユニセックスシルエットを採用し、幅広いサイズを展開。ボタンもスナップボタンにすることで、外しやすさを追求するなど、障がいのある人もない人も着やすいものになっている。
また、大会スタッフ、都市ボランティア共通のパンツは、再生ポリエステルのストレッチ素材を使い、熱がこもりやすい腰部分をメッシュにするなど、暑さに配慮するとともに、膝から下のパーツを切り離してハーフパンツとしても使用出来るようにすることで、天候などに合わせてスタイルを選べるようにした。
さらに、大会スタッフ、都市ボランティア共通のシューズも、東京オリンピック・パラリンピック大会のために新たに開発。暑さ対策のために中敷きと靴底に通気孔を持つ構造にし、安定性やクッション性、フィット感なども追求した。また、中敷きと靴底に、次世代高機能素材である植物由来の「セルロースナノファイバー」を使用するとともに、アッパーと中敷きの表面材には「ソリューションダイ」という技術を採用し、糸を製造するときに原料自体に染色することで、水の使用量を削減している、という。
生駒さんは「東京らしい、日本らしいものが出来たし、猛暑の中でも涼しさを感じてもらえるデザインになったと思います」と挨拶。
香取さんは「自分がユニフォームを着て登場するとは思っていませんでしたが、着心地がいい。選考過程はすごく白熱していて、一人一人の意見を聞いてもらえたし、決まりかけたものが1人の意見で覆り、また1からスタートしたこともありましたが、着心地はもちろん、気温が高いことなど、さまざまなことを考えた、すごくいい選考会だったと思います。僕自身今からわくわくしていますし、ボランティアの皆さんのことを考えて作ったユニフォームなので、みなさんの活躍で、オリンピック・パラリンピックが盛り上がり、すばらしい大会になることを期待していますし、新しい日本、新しい東京が始まる2020年になればと思っています」などと話した。