「宮本亞門さんから話が来たのは昨年の9月。実は、8月にバカンスでギリシャに行ったときに、ヴァレンティノさんとお目にかかったのですが、彼は『これから日本でオペラの衣装をやるんだ』とうれしそうに話していました。蝶々夫人は僕にとってもオペラの原点ですし、やってみたいという気持ちになりました」と語る髙田賢三さん。
東京二期会オペラ劇場ザクセン州立歌劇場(ゼンパーオーパー・ドレスデン)とデンマーク王立歌劇場との共同制作公演ジャコモ・プッチーニ作曲「蝶々夫人」の制作発表会が6月12日、都内で行われ、宮本亞門さんと髙田賢三さんが登場した。Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)
東京二期会はこれまでも各国の歌劇場と共同制作によって、世界水準のオペラ公演を日本で行ってきたが、今回は世界に先駆けて10月3日から6日、東京文化会館大ホールでワールド・プレミエを行い、10月13日よこすか芸術劇場でも開催。来年4月にはドイツのザクセン州立歌劇場、冬にはデンマーク王立歌劇場でも上演する。また、アメリカのサンフランシスコでの上演も決まっている。
演出には宮本亞門さん、衣装デザインに髙田賢三さんを迎え、日本のオペラを世界に発信する今回。指揮は2012年に史上最年少で、ミラノスカラ座でデビューしたイタリアのアンドレア・バッティストーニさん。蝶々夫人は大村博美さんと森谷真理さんのダブル主演となる。
宮本さんは「昔から演出したいと思っていた作品。各国で上演し、ドレスデンでもできると聞いたときには体が震えました。オペラというのは歴史的なものですが、演出や指揮者、出演者や歌手たちによって様変わりします。こんな視点があったのか、こんなふうにしたら面白くなるんだと思っていただきたい。今回は愛に集中しようと思っています。蝶々夫人とピンカートンの一途な愛や蝶々夫人と息子の親子愛。お客様が見て感動してもらえるもの、何て美しいのだろうと思ってもらえるものにしたいし、国を超えた愛を世界中に広げたい。私はずっと賢三さんの服を着ていたので、賢三さんには引き受けてもらえるのかな、もらえないかな、とドキドキしながら『もうデザインしてくれないんですか、できれば衣装を』とお願いしました」と挨拶。
髙田さんは「いろいろ考えると大変な仕事なので、迷いもありましたが、あこがれていた作品ですし、この機会を逃してはいけないと思い、やらせてもらいました。まだ完全には終わっていないので亞門さんと話しながら作っていますが、見方によってシチュエーションが変わってくるので、すごく難しいですが、面白いです。日本人が見ても美しい着物姿だけでなく、アメリカに憧れ、アメリカで流行している洋服を着たいという願望もあったと思うので、自分の着物で作った洋服というイメージで、表現できればと思っています」と説明。
また、デザインについては「こだわったのは蝶々夫人の着物のモチーフ。伝統的でありながらモダンでなければいけないと思っているので、今回は染めではなくすべて織りだけでやってもらっています。すごく大変な仕事になりましたが、織りによって少しでも新しいもの、ファンタジーなものになれればと思っています。素材も透ける素材や金らんどんすのようなものにするなど、伝統は守りながらファンタジーなものにもっていけるようにしています」などと話した。
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