「あるアートギャラリーでキム・ホノさんの作品を見た瞬間に、これは織部焼きだと思いました。キム・ホノさんの自由な器は織部焼きが持っていた遊び心あふれるスピリットと通じ合うもの、人を楽しませる心を持っています。織部からインスパイアされた2010年春夏コレクション『織部Ⅱ』のアーカイブを展開することを決めたときにキム・ホノさんの作品と一緒に見てもらいたいと思いました」と語る堀畑裕之さん。matohu ゲストアーティストシリーズ Vol.11 KIM HONO「現代の織部スピリット」展が5月12日まで、東京・渋谷のmatohu 表参道本店で開催されている。
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金魚などで知られる美術作家・深堀隆介さんやロンドンを拠点に活動するアーティスト播安芸子さんなど、様々な作家が参加してきたゲストアーティストシリーズ。11回目を迎えた今回は、まとふのデザイナーの堀畑裕之さんと関口真希子さんが、今年4月に陶芸家KIM HONO(キム・ホノ)さんの工房を訪ね、まとふ好みの作品を厳選したという、皿や器などの作品を展示、販売している。
また、今回は「織部Ⅱ」コレクション・クローズアップイベントも同時開催。慶長期(桃山から江戸初期)に流行した、デザイン豊かな陶器「織部」からインスパイアされた2010年春夏コレクション「織部Ⅱ」の希少なアーカイブコレクションを始め、当時のデザインを今のバランスで復刻させたものや当時の生地やパターンで作られた新しいアイテムなども販売している。
初日の4月26日に行われたオープニングレセプションにはキム・ホノさんも出席。「ふだんとは違う人たちや若い人たちに見てもらえるので、見た人がどう反応するのか楽しみ」とキム・ホノさん。
また、「織部Ⅱ」コレクション・クローズアップイベントについて、堀畑さんは「コレクションは毎日ファッション大賞表新人賞を受賞した2009年に発表したものですが、10年近くたっても古さを感じない、今までのコレクションも過去のものとして埋没させるのはもったいないと思いました」、関口さんは「当時は今とは違うアプローチで作っていましたし、まだこのお店もなかったので、今よりももっと自由に作っていました。それを今のお客様にも見てもらいたい、着てもらいたいと思いました」と話した。
昨年から「慶長の美」「日本の眼」に続く、新しいシリーズ「手のひらの旅」をスタートし、
デザイナーが説明しながら見せるモデルを使ったプレゼンテーションや旅の映像、インスタレーションなどを組み合わせた、新しい見せ方で発表。また、「日本の眼」の展覧会を2020年1月に表参道のスパイラルで開催することも決まっているまとふ。過去のコレクションのアーカイブや復刻版というアプローチは、トレンドに左右されない独自のもの作りに取り組んできたまとふらしいものでありながら、同時に、80年代のアーカイブが新しいものとして定着し、ヴィンテージ(古着)やフリマアプリ、レンタルが抵抗なく受け入れられるようになるなど、新しいデザインとは何かが問われ、服の買い方や服を持つという形が変わってしまった時代性も映し出しているようにも見える。コレクションの見せ方や時期なども含めて、今後の展開も注目される。
Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)
matohu表参道本店
東京都渋谷区神宮前5の9の25
11:00~20:00