アンリアレイジ(ANREALAGE)がパリコレクションに参加してから発表したコレクションの中から「光」をテーマにしたコレクションにフォーカスした展覧会「A LIGHT UN LIGHT」。11月9日から11月26日まで、東京・池袋の池袋PARCO本館7階パルコミュージアムで行われた展覧会の詳細をレポートする。2012年12月、渋谷パルコパート1・3階のパルコミュージアムで開催された、デザイナー森永邦彦のデビューから10年を解き明かす、アンリアレイジ初の展覧会「A REAL UN REAL AGE」以来の単独展覧会となった「A LIGHT UN LIGHT」とは?コレクション写真はパリコレクションから。Text & Photo : Shinichi Higuchi(樋口真一)
デビュー以来、「服を通じて、日常(A REAL) と非日常(UN REAL)への気づきを同時に喚起する」というテーマに取り組んできたアンリアレイジ。2014年にコレクション発表の場を東京からパリに移し、光と影の一対を手がかりに、ファッション史のストーリーを根源から刷新するため、挑戦を続けている。
今回の展覧会はパリコレクション以降のコレクションを日本でもたくさんの人に見てもらいたい、ということから行ったもの。パリコレクション初参加となった2015年春夏コレクション「シャドー(SHADOW)」から、2015/2016年秋冬コレクション「ライト(LIGHT)」、2016年春夏コレクション「リフレクト(REFLECT)」までの3シーズンに、最新の2018年春夏コレクション「パワー(POWER)を加えた4シーズンのコレクションを展示した。インタラクションデザインとしてアーティスト、デザイナー、エンジニアからなる集団「ライゾマティクスリサーチ」、サウンドディレクションにサカナクションの山口一郎とNFの青山翔太郎を迎え、 コラボレーションした作品も紹介した。
展覧会は2015年春夏コレクションの代表作である、光に反応して発色するフォトクロミック色素を使って染めたフォトクロミックコートとフォトクロミックドレスからスタート。プログラムされた紫外光のレーザープロジェクターが服に光を照射することで、白い服に少しの間、柄を描く演出は、パリコレクションデビューとなったコレクションのラストシーンでも見せたものだが、今回展示しているコートはそれを更に進化させたものだという。
ドレスは一見同じに見える2体の白のドレスを並べ光を当て、片方だけにブランドロゴが影のように残ることなどによって、通常のドレスとフォトクロミックドレス違いを表現している。
その先では、壁面に沿って2015年春夏コレクションのその他の作品や、2015/2016年秋冬コレクション、2016年春夏コレクションが並ぶ。会場に流れる音楽は「音時計」をコンセプトにサカナクションのの山口一郎とNFの青山翔太郎が制作。時計の針が遡るように会場中を音が旋回し、一時間たつと楽曲も変化するという。
印象的なのが2016年春夏コレクションで発表した、再帰性反射を衣服に採用したリフレクタードレス。カメラとフラッシュが制御されたたくさんのiPhoneを並べ、フラッシュの光を当てることで、画面と肉眼で見る服との違いを見ることができる。
奥に進むと、人間の目で見ることができる光の領域を超えて、不可視光の波長でプリントした衣服「インビジブルライトドレス(INVISIBLE LIGHT DRESS)が展示されている。黒いドレスに紫外光を当てると花柄やブロックチェック柄、パッチワークのプリントなどが現れる。
最後は、モデルが体を動かし、服に負荷がかかることで、光を放つ2018年春夏コレクションで登場したメカノクロミックドレス(MECHANOCHROMIC DRESS)。力を光に変える「応用発光」を取り入れたドレスで、今回の展覧会ではもともと蓄光性のある服を、定期的に自動制御のエアシリンダーで収縮させ、力を加えることで、グリーンの光を放つ様子を紹介した。コレクションのインビテーションにも入れられていた服型の紙を拡大したような、壁面に展示された服に触って力を加えることによって、実際に体験することもできる。
また、光の服のイメージ映像と、実際にコレクション会場と同じようにヘッドフォンを装着し、サカナクションの山口一郎とNFの青山翔太郎によるバイノーラルサウンドを聞くことで2016年春夏コレクションのイメージを再解釈した部屋やアンリアレイジの4シーズンのコレクションを特集した番組など、映像やイメージ、音楽なども加えて、アンリアレイジの世界観を表現した。
今から 6年前の2011年には、湾岸戦争の中で行われたコムデギャルソンとヨウジヤマモトの「6・11THE MEN」から20年として、ミントデザインズ(mintdesigns)との合同ショー「10・22THE SHOW」を開催したアンリアレイジ。再帰性反射を使ったコレクションなどは、直接服を見るのではなく、携帯端末を通して服を見ると揶揄(やゆ)され、Instagramで映えることがよしとされる時代性にも対応しているようにも見えた。また、ファッションとは全く違う分野や角度からもアイデアを取り入れ、服を変えていくとともに、そのアイデアを1シーズンで終わらせず、発展させており、コラボレーションなどによってスニーカーやウエア、車の内装など様々な分野にも応用されている。
現在進行形ともいうべき今回の展覧会で見せたコレクションが今後どう発展するのか。そして、運動時の動きを計測するテープや運動量を色で可視化したデータなどを思わせるメカノクロミックドレスなどのアイデアが東京オリンピックなどにもつながるのか。更にパリコレクションの後で東京でもコレクションをする日が来るのか。いろいろなことを考えさせられた展覧会だった。展覧会は海外でも行われると言うが、今後の展開も楽しみだ。