突起とスリットを組み合わせて作られた、クローバーなど植物の葉を思わせる形。たくさんの細胞が集まり、生き物になり、たくさんの葉が集まって植物や森になるように、着物や家具、プチプチが集まり、服や家具、オブジェなどを創り出す。また、アーティストの絵画は葉のように切られることで、再構築され、立体的になり、別の作品に生まれ変わる。Text & Photo:Shinichi Higuchi / Chief Editor & Fashion Journalist(樋口真一)
細胞分裂からインスパイアされたパズルウエアーを通して、「クリエーションはデザイナーやアーティストなど特別な人だけのものではなく、誰でもできることを伝えたい」という津村耕佑の思いを込めた展覧会RECOMBINATIONがスパイラルガーデンで開催されている。
1982年、第52回装苑賞を受賞した後、三宅デザイン事務所でパリコレクションなどのデザインを担当。1994年にはコウスケツムラ、ファイナルホームを立ち上げ、パリコレクションに参加し、1997年にはロンドンファッションウィークでコレクションを発表。現在もハプニングのメンバーとしてゲリラショーに参加し、TRANS ARTS TOKYO 2016 UP TOKYOではオリジナルの山車を発表するなど様々な活動を続けている津村。
会場では服に使う素材はもちろんインテリア用素材や工業資材、段ボールといった様々な素材や国旗などの柄のパズルウエアーを組み合わせた作品などを紹介。パズルウエアーはパターンや縫製の技術を必要としないため誰でもパズルやブロック、合体変身ロボットで遊ぶように形を作ることができる。柄や色、素材を組み合わせれば様々なバリエーションを作り、飽きればまた別のものを作ることもできる。
また、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもとに提供されていて、誰でもデータをダウンロードし、型紙として使用することも可能だ。
「将来、誰でも15分間は世界的な有名人になれるだろう」と予言したのはアンディ・ウォーホル。イエローマジックオーケストラがコンピューター(コンポーザー)を使ったテクノポップで世界に衝撃を与えた当時、坂本龍一や細野晴臣は「これからは感性さえあれば訓練は不要」と発言していた。現在では、インターネットとSNS、デジカメなどによって誰もがカメラマンや発信者、インフルエンサーになれる可能性のある時代になっている。
「80年代と比べると、ファッションもデザインもインテリアも、実験や失敗ができなくなった。完璧が求められている。今、山本耀司さんや川久保玲さんが評価されているのも、それまでなかったものを作り、誤解を受けてもチャレンジした姿勢を若い人が求めているからだと思う。僕も守るのではなく壁を壊したい」と津村。
インターネットを中心に盗作や著作権が話題となる一方で、80年代、90年代が再評価され、更に3DプリンタやARを使ったデザインや、日本最大級のファッションFAB サービス施設アンドメイド(andMade)のようにプロ仕様の機器を使い、着たい服を自分で作る流れが加速する中で、津村は次に進もうとしているようだ。