「高畑勲展―日本のアニメーションに遺したもの」が10月6日まで、東京国立近代美術館で開催

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「高畑勲展―日本のアニメーションに遺したもの Takahata Isao: A Legend in Japanese Animation」が7月2日から10月6日まで、東京国立近代美術館で開催されている。

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今回の展覧会は2018年4月に亡くなった、日本を代表するアニメーション映画監督である高畑の半世紀を超える創作活動を、1000点を超える作品や資料で総覧する初めての回顧展となるもの。

1960年代の「太陽の王子 ホルスの大冒険」から、1970年代の「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」、1980年代の「火垂るの墓」、1990年代の「平成狸合戦ぽんぽこ」、遺作となった「かぐや姫の物語」まで、常に今日的なテーマを模索し、それにふさわしい新しい表現方法を徹底して追求。アニメーションの可能性を切り開き、アニメーションの構造やスタイルを創り上げた革新者として、戦後の日本のアニメーションの礎を築き、他の制作者にも大きな影響を与えた高畑。

安寿と厨子王丸©東映

今回の展覧会では、高畑の代表作を時代順に紹介しながら、絵を描かない高畑の「演出」というポイントに注目し、数多くの制作ノートや絵コンテなど未公開資料を含む作品や資料によって、制作のプロセスを辿り、その革新性と創造の秘密を紹介している。

アルプスの少女ハイジ©ZUIYO「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://www.heidi.ne.jp/

展覧会は最初期から最晩年まで、時代順に全4章で構成。第1章「出発点 アニメーション映画への情熱」では、1960年代東映動画時代の高畑がアニメーション演出家としてキャリアを積んでいく時期にフォーカスを当て、「太陽の王子 ホルスの大冒険」に関する膨大な資料や作画担当表などの共同作業のプロセスがわかる資料、竹取物語のマンガ映画化のプロジェクトに際して書きためていたメモなどを展示している。

第2章「日常生活のよろこび アニメーションの新たな表現領域を開拓」では、1970年代のテレビの名作シリーズを中心に紹介。「パンダコパンダ」や「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「赤毛のアン」などのテレビシリーズで、子供を主人公にした作品で、子供たちの日常に寄り添い、子供自身が想像力を駆使して、日常生活を創り上げていくプロセスを描いた演出スタイルなどを紹介している。宮崎駿による「パンダコパンダ」のレイアウトや「アルプスの少女ハイジ」の絵コンテ、「アルプスの少女ハイジ」に登場するアルプスの山岳風景をリアルに感じることが出来るジオラマ、「アルプスの少女ハイジ」のオープニング映像の原画なども見所になっている。

第3章「日本文化への眼差し 過去と現在との対話」では、1980年代以降、高畑が日本を舞台にした物語に専念していく時期の作品を紹介。海外の児童文学をベースにしたアニメーション作品から、日本人や日本文化、日本の自然を描くように変わっていくきっかけとなった「じゃりン子チエ」や「セロ弾きのゴーシュ」、1985年に設立に参画したスタジオジブリにおける「火垂るの墓」「おもひでぼろぼろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」など、日本人の戦中・戦後の経験を現代に続くものとして語り直す話法や「里山」というテーマの展開に注目し、作品のレイアウトや背景画、指示書、セル画、メモなどを展示している。

第4章「スケッチの躍動 新たなアニメーションへの挑戦」では、アニメーションの絵、水彩画風の描法によるスタイルの革新にフォーカス。「かぐや姫の物語」に到達したスケッチ風線画によるアニメーションの魅力と制作のプロセスを多数の原画と解説映像によって紹介している。

開催に先駆けて行われた記者会見で、東京国立近代美術館の加藤敬館長は「高畑監督のアニメーションの特徴は、アクションやファンタジーとは一線を画した、日常生活の丹念な描写に支えられた豊かな人間ドラマにある。人間と自然に対する深い理解と愛情に裏付けられた高畑アニメーションの意義を改めて考える機会になれば」と挨拶。

また、同展のキュレーターである東京国立近代美術館の鈴木勝雄主任研究員は「東京国立近代美術館におけるマンガ・アニメ展は1990年の手塚治虫展以来2回目となるものだが、文学、美術、映画、音楽、様々なジャンルを超えた、総合芸術としてのアニメーションを創り上げようとした業績を戦後の文化史の中に位置付けていくということや、高畑さんのアニメーション自体が近代美術・モダンアートに対する批評性も持っていることから、当美術館でやるべきだと考えた」と説明。

その上で、「高畑さんと対話を重ねながら、無理難題、過剰な要求に応えながら、高畑監督のために作品世界を創り上げてきた制作者、描き手たちの絵の力に注目する展覧会になっている。アニメーションの最終形を参考としてお見せしているが、その前段階にある原画の力や背景画の力に気づき、驚き、考える力を提供したいと考えた。また、遺品から見つかった、初期から晩年までの18箱分のメモやノートなどの資料から、カテゴリーを作り、わかりやすい形で組み込んだ。これらを丁寧に見ていくことで、高畑さんの息づかいや作品世界を創り上げていく集中力が伝わってくると思う。高畑さんの贈り物を我々の世代がどうやって次の世代、若い人たちにバトンタッチできるかという意識を持って作ってきた。高畑さんの仕事の魅力は子供のときだけでなく大人になってからも自分の成長とともに見返し、繰り返して見ることができること。代々語り継がれていく高畑作品の力を再認識してほしい」などと話した。

Text & Photo:Shinichi Higuchi(樋口真一)

安寿と厨子王丸©東映

パンダコパンダ©TMC

パンダコパンダ©TMC

アルプスの少女ハイジ©ZUIYO「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://www.heidi.ne.jp/

アルプスの少女ハイジ©ZUIYO「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://www.heidi.ne.jp/

アルプスの少女ハイジのジオラマ©ZUIYO「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://www.heidi.ne.jp/

アルプスの少女ハイジのアルムの山小屋(会場外)©ZUIYO「アルプスの少女ハイジ」公式ホームページ http://www.heidi.ne.jp/

赤毛のアン©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.”Anne of Green Gables”AGGLA

火垂るの墓©野坂昭如/新潮社,1988

火垂るの墓©野坂昭如/新潮社,1988

かぐや姫の物語©2013 畑事務所・Studio Ghibli ・NDHDMTK

アニメーターの机 東映アニメーション所蔵

【展覧会概要】
展覧会名:高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの Takahata Isao: A Legend in Japanese Animation
会場:東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー(〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1)
会期:2019年7月2日(火)~10月6日(日)
休館日:月曜日(8月12日、9月16日、9月23日は開館)8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)
開館時間:10:00-17:00(金、土曜日は21:00まで) ※入館は閉館30分前まで
主催:東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション
企画協力:スタジオジブリ
協力:(公財)徳間記念アニメーション文化財団
協賛:凸版印刷、西武造園
お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
公式サイト:http://clk.nxlk.jp/J72Y2L3H
巡回情報:今後、岡山での開催を予定

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